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初カレ。②
しおりを挟む冬は小さな頃から水泳をやっていて、小中とバスケの選手だったらしい。
今は帰宅部だけど、体育の授業があるたびに女子たちからキャーキャー言われている。
スポーツ万能。
水泳はジュニア大会で入賞したこともあるらしい。
すごい!と興奮した僕に対して、スポーツにはもう飽きた、と彼は興味がなさそうに言った。
僕は小柄で高校生になった今も時々中学生に間違われるくらいの体格。
顔も童顔で、いつまで経っても子どもっぽさが抜けない。
肌はツルツルだし、体毛も薄い。
海外ドラマを見ていると、あんなに男らしくて筋肉ムキムキだったらなぁなんて毎回憧れるけど、ベビーフェイスの僕にはきっと似合わない。
2人ともバイトが休みの日に、冬は僕の部屋に遊びに来るようになった。
お姉ちゃんは彼に興味津々で、僕の部屋までジュースやお菓子を運んできてくれる。
女の人はみんな、冬に夢中だ。
「あんたの友達めちゃくちゃイケメンじゃん。紹介してよ。」
友達、じゃないんだな。僕のカレシ。
言いたいけど、言えるわけがない。
冬と付き合っていることは誰にも内緒だった。
ファンクラブができるほどのイケメンモテモテ男の恋人。
僕と恋人同士だなんて知られたら、色々と面倒なことになるのは目に見えていたから。
「夏生。キスして。」
二人きりの時、冬はいつもキスをせがむ。
普段は淡々としていて無表情な彼が、少し照れた顔を見せる瞬間。
「えっと・・・・」
僕はファーストキスを彼に捧げたばかりで、自分からキスするなんてハードルが高すぎてクラクラしてしまう。
「目、泳いでる。夏生、可愛い。」
イケメンすぎる冬の顔が僕に迫ってくると、心臓が破裂するかもしれないっていうくらい、ドキドキする。
僕がなかなかキスしないから、痺れを切らした彼が待ちきれないと唇を重ねる。
この瞬間。まるでドラマを見ているみたいな気分になる。
彼はドラマの中の俳優さんみたいにカッコ良くて、作り物みたいに美しい。
「もっと、キスしたい。」
啄むように唇を重ねる。
ちゅっ、ちゅっ、とキスする音が、妙に艶かしく部屋に響いた。
冬が僕にしか見せない顔を見つけるたびに、僕は嬉しくて胸が苦しくなる。
嬉しいと苦しいを一緒に感じる瞬間があることを、僕は恋をして初めて知った。
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