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♡『劣情』(SIDE 相原 拓也)※R-18 上司×部下
しおりを挟む渡里と恋人同士になってから、すでに3ヶ月が過ぎていた。
部下と恋愛関係になるなんて、あり得ない。
渡里と出会うまでは本気でそう思っていた。
大学の同期が部下と恋愛関係になったという話を聞いて、
公私混同、と呆れ返っていたほどだ。
俺にとって渡里 優羽は、例外中の例外だった。
合理主義で何事も効率よく片付けないと気が済まない自分の性格は、融通が効かない。
物腰が柔らかく、おっとりとした渡里のリズムに馴染めるのか、彼の上司になった当初は自信がなかった。
穏やかな口調、男性にしてはトーンの高い優しい声。
彼は患者さんとの信頼関係を根気強く、ゆっくりと構築していった。
部下として渡里を見守っているつもりが、いつの間にか好きになっていた。
綺麗な顔立ちに華奢な身体つき。
同じ生き物とは思えない、キメの細かい白肌。サラサラの髪。ピンク色で繊細な爪、指のつくり。
朗らかでいつも笑顔ではいるけれど、本心をなかなか口にしないガードの固さ。
本人も無自覚なんだろうが、自分をさらけ出そうとせず、自我が極端に弱い。
くるくると面白いくらいに表情が変わる坂口とは対照的に、いつも穏やかさを崩さず、
自分の本心に蓋をして、中は見ないと決意しているような、頑なな印象があった。
以前仕事のことで俺が褒めた時に、嬉しそうに破顔した渡里の顔を見て驚いた。
こんなふうに笑えるんだな、という感想と同時に、俺の一言で渡里の表情が変わったという事実に、
一種の快感を得てしまった。
自分の一言で、いつも穏やかな彼の顔を歪ませてみたい、という、ひどく乱暴な願望が生まれてしまった。
付き合って1ヶ月経った頃、
資料作りを手伝ってくれた渡里と終電に駆け込んだことがあった。
想像していた通り、恋愛に奥手な渡里と親密な関係になるには時間がかかりそうで、覚悟はしていたが、
彼に触れたいという感情が日に日に大きくなっていた。
俺の部屋で二人きりになってしまったら、もう止まらなかった。
彼に触れたい。
キスしたい。
快楽に溺れた顔を、見てみたい。
渡里との関係は急ぐつもりも、無理強いするつもりも、もちろんなかった。
二人きりになった途端、雄としての本能に歯止めが効かなくなってしまって、自分でも驚いた。
同じ職場で毎日彼を見ているうちに、いつの間にか男としての欲望が大きく膨れ上がっていたことに気が付く。
「や・・っ、だめ、、院長・・っ」
初めて聞く、熱を帯びた彼の声。
舌を絡めながら、服を捲し上げると、
華奢な身体があらわになる。
色の白さと、可愛らしく膨れ上がったピンク色の突起に
欲望を煽られ、クラクラと目眩がした。
「僕・・・、こういうの初めてで・・・っ」
懇願するような声に、なんとか自分を抑え慌てて身を引いた。
あの日から、欲望は膨れ上がるばかりで、自制心が試される日常を送っている。
彼の唇を知ってしまった。
快楽に浮かされた彼の表情を知ってしまった。
服に覆われいつもは隠れている彼の身体を知ってしまった。
彼を抱きたいという気持ちを、抑えることができない。
こんなにも激しい劣情が自分の中にあったことに、驚いている。
いい歳をした大人の男が、まるで高校生のように恋愛に振り回されるなんて。
♢♢♢
「院長、新しい白衣を注文するので、試着していただいてもいいですか?」
終業後、PCにデータを打ち込んでいると、ビニールに包まれた白衣のサンプルを持って、渡里が近づいてきた。
映画を観に行くと騒いでいた坂口が、定時と同時に慌ただしく帰って行ったので、院内には二人きり。
あの日以来、必要以上に距離を縮めることは避けていた。
職場でもなるべく二人きりにならないように注意している。
「あぁ、あとで試着しておくから、そこに置いておいてくれ。」
素っ気なく返すと、すぐにPCに視線を戻した。
「どうした?」
渡里がその場から動かず、こちらに視線を送っている。
「あの・・、僕、見たいです。新しい白衣、今着てみてください。・・ダメですか?」
珍しく甘えるような視線を送ってくる彼に、断るなんてことはできるはずもなく、俺は黙って白衣を受け取った。
着ていた白衣を脱いで、新しいものに袖を通す。
今使用している白衣は全体的に余裕のあるサイズ感でごわついて動きにくいと言っていたら、業者が新しいサンプルを持ってきてくれた。
ピタリと体に密着する作りだが、生地の特質なのか、とても動きやすい。
「すごく似合います・・・」
いつの間にかすぐ隣に立っていた渡里が、ジロジロと熱心に見てくるので、なんだか気恥ずかしくなった。
「院長・・かっこ良すぎます・・・」
渡里らしくない率直な感想に、驚いて彼を見た。
目が合うと、彼は顔を赤らめて目を伏せる。
そんな表情を見せられると困る。
恥ずかしそうに目を伏せる彼に、たまらなくキスしたいと思った。
彼の肩を、手で掴んで引き寄せる。
逃げられないように、強い力で。
渡里のことになると、自制心が働かない。
降参、とでも言うように、身体の力を抜いた彼は、ギュッと目を閉じてキスを受け入れた。
止まらなくなりそうだった。
彼の華奢な身体を組み敷いて、強引に暴いてしまいたい。
いつからこんなに物騒な男になったのだろう。
彼に対しては、欲望が抑えられそうにない。
欲望が体中を暴れまわって、理性を簡単に奪い取っていく。
深く口付けると、ハァ、と苦しそうな彼の吐息が妙に官能的に耳にこだました。
「好きだ・・・優羽、」
「あ・・っ、院長・・・っ」
ここが職場だということが、俺の欲望になんとか歯止めをかける。
一度、医師二人の情事に鉢合わせしそうになったことを思い出していた。
「俺の部屋で、続きがしたい、」
耳元でそう言うと、彼の身体がびくりと震えた。
長い沈黙を破って、彼は真っ赤な顔で絞り出すように声を発した。
「・・・はい。」
抱きしめている腕を解くと、顔は真っ赤で、見られたくないと主張するように俯いている。
恥ずかしいことを言わされた、という羞恥に満ちた彼の表情が、
俺の欲望を駆り立てた。
渡里は、可愛い。
俺の言葉にいちいち反応して赤くなる彼が、たまらなく可愛くて、どうにかなってしまいそうだ。
病院を出て電車に乗るまでは、距離をあけて歩いた。
医師や薬剤師とばったり出会すことがあるので、病院周辺では念のためいつもそうしていた。
電車に乗ってしばらくすると、隣に立っていた渡里が、甘えるように俺の手を握ってきた。
見ると、顔は俯いたままで、耳まで真っ赤にしている。
彼のウブなところが好きだ。
たまらなく雄の欲望を駆り立てる。
恥ずかしそうに目を逸らす彼が可愛くて、早く思い切り抱きしめたかった。
渡里と身体の関係を持つことに関して、焦るつもりはまるでなかった。
奥手で、キスもやっとな彼の純粋さが好きだったし、彼の決意が固まるまでは待とうと思っていた。
恋人同士になって三ヶ月。
部屋に着くと、コートを脱ぎソファーに乱暴にかけた。
渡里はコートのボタンを外すのも恥ずかしいと言うように、ゆっくりとボタンに手をかける。
焦らされているようで、興奮してしまう。
これからこの部屋で、彼を抱く。
そう思うと、身体中の血液が沸騰するんじゃないかというほどの興奮が身に迫り、息が上がった。
こんなに余裕のない自分は初めてだった。
渡里が欲しい。
触れたい。
彼と深く身体を重ねたい。
「シャワー・・浴びていいですか・・?」
コートを脱いだ彼が、意を決したようにそう言った。
返事もせずに、口付ける。
深く。
より、深く。
息が乱れる。
はぁ、と肩で息をしながら、涙目で見つめてくる彼の表情は扇情的だった。
手を引っ張り、有無を言わさずベッドへ連れて行く。
彼をベッドに押し倒すと、冷静を装って静かな声で言った。
「悪い、もう待てない、」
首筋に唇を当てる。
身体のラインを確かめるように、両手で全身をまさぐる。
彼の身体に触れたい。
彼の身体のかたちを確かめるように、手のひらでなぞる。
シャツを巻くし上げ、上半身裸になると、彼が熱っぽい視線で誘うようにこちらを見た。
たまらない。
「ん・・・っ、」
指の腹でピンク色の突起を撫でると、快感を押し殺したような声が漏れる。
舌で転がすように舐めると、身体がピクンッと跳ね上がった。
「うぅ・・ん・・っ」
薄い胸にぷくりと膨らんだまあるい突起が、唾液に濡れていやらしい色に染まっていた。
丁寧に舌で何度も弄び、快感に悶える彼の表情を堪能する。
抵抗するように俺の頭を手で抑えて、身を捩る。
抗わず、快感に身を委ねればいい。
もっと、快楽に溺れた姿が見たい。
太腿を探ると、興奮し切った彼の膨らみに手が触れた。
我慢できずに、ベルトに手をかけて、ピンッと勃ち上がった彼自身に、直に触れる。
「あ・・っ、や・・だっ・・・!」
嫌だという彼の声音に、拒絶の色がないことを確認して、指の腹で上下に優しく扱いてやる。
「ふ・・っ、あ、ぁ・・・ん、っ・・・」
快感をなんとかやり過ごそうと、息を逃す彼が可愛い。
自分自身も痛いくらいに下半身が反応してしまっていた。
ヌルヌルとしたものが、先端から次から次に溢れてきて、くちゃくちゃと、淫らな音を立てる。
音に反応した彼が顔を逸らして羞恥に耐えている。
その表情がまた情欲をそそる。
このままでは苦しいだろう。
彼の声にはもはや余裕がない。
足を開かせて顔を埋める。
「や、やだ・・っ、あ、」
彼のものを口に咥えて、舌を上下にねっとりと動かす。
「あっ、あっ、ダメ・・っ、院長ぉ・・あぁっ!!」
彼は苦しそうな声を上げながら、腰を震わせ絶頂に達した。
「ごめんなさ・・っ、」
俺の口内に出したことを謝っている彼が愛おしい。
優しく振る舞いたいけれど、自身の欲望も切羽詰まっている。
早く彼の中に入りたい欲求が、今にも爆発しそうだった。
口に含んだ彼の精液を手のひらに吐き出すと、そのまま彼の窪みに刷り込むように塗りたくる。
「あ、やだ・・っ、怖い・・・っ、、」
達した快感で涙を流している彼が、初めて触れられる内側の感覚に身を縮めた。
「大丈夫。優羽・・・俺を見て。」
熱に溺れた視線を向けられて、困るのは自分自身だった。
早く優羽と繋がりたい。
俺のものだと印をつけて、めちゃくちゃに犯したい。
余裕がないのは、自分の方だ。
指で内側を押し広げる。
内壁にきゅうきゅうと締め付けられる指の感覚が、下半身に刺激を与える。
「あ・・っ、あ・・んぅ、あぁ・・・ッ」
彼の声に快感が混じり始めた。
しつこく内側を慣らす。
ベルトを外し開放してやると、自分の中心が、天井を向いて反り返っていた。
彼の太腿に擦り付けるようにすると、彼の下腹部に熱い芯が蘇った。
クルクルとゴムを被せる刺激だけで、思わず達してしまいそうだ。
充分に慣らした彼の窪みに、反り返った自身の頭をあてがう。
気を抜くと乱暴になってしまいそうな自分を抑え、ゆっくりと腰を進めた。
つつつ、と抵抗なく彼の内側に飲み込まれていく感覚に思わず、あぁ、とため息が漏れる。
あぁ、
気持ちイイ、、、
優羽の中は最高に気持ちよく、ぎゅうぎゅうと痛いほどに締め付けてきて、すぐに達してしまいそうだった。
快感をやり過ごすために、一度腰の動きを止める。
もっと奥に入り込んで、優羽の一番深いところに思い切り、出したい。
「拓也・・っ・・さん・・・っ」
腰を揺らしながら、優羽が誘うように俺の腰を掴んだ。
彼が俺を名前で呼ぶなんて初めてのことで、俺は残りの理性を全て手放してしまった。
我慢の限界だった。
奥までゆっくり腰を進める。
深く腰を引く。
すすめる。
ひく。
引き抜くときの締め付けが、絶頂に達したような深い快感の波を生む。
「あぁ、、あ・・・」
自然と声が漏れる。
「拓也、さ・・んっ、あ、あ、あ・・っ」
優羽の声が甲高くなり、絶頂が近いことを知らせる。
「また・・っ、あ、イ、っちゃう・・・っ」
最奥にぐいぐいと腰を打ち込む。
「優羽・・っ、、好きだ、優羽・・ッ」
「あ~、あ・・ッ、あぁ・・・ッ!!」
二人の声が重なった。
その瞬間、
二人同時に快感を解き放っていた。
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