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♤『下級生』(SIDE 宍戸 黒衣)
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♤宍戸 黒衣(ししど こくえ)
黒髪、ツーブロック 、一見怖そうに見えるルックスだが、根は優しく芯のある男。
スケボーが趣味。目つきが悪いので、よく喧嘩を売られる。
喧嘩は強く、肝が座っている。
大学の友人、蛍に告白して振られたばかり。
♤桃山 林太郎(ももやま りんたろう)
黒衣の高校時代の後輩。
金髪、サラサラ。背が高くルックスも良い。
女友達が多く、いつも数人の女の子に囲まれて歩いている。
淡々としていて、口数が少ない。表情が乏しく、何を考えているのか読みにくいタイプ。
テンションが常に低く、感情の波がない。
♤月野 蛍(つきの けい)
ロックバンドSAWのキーボード担当。
顎くらいまでの長さ、センター分け、サラサラの金髪。猫目。
人見知りで、無口。
家庭環境が複雑で、両親は海外暮らし。
バンドメンバーの仁と一緒に暮らしている。
黒衣の大学の友人。
~~~~~~~~~~
♤『下級生』(SIDE 宍戸 黒衣)
「ごめん、黒衣、ごめん・・・・・」
何度も謝る蛍の顔が頭から離れない。
俺は生まれて初めて自分から愛の告白をして、フラれた。
失恋が、こんなにショックを受けるものだとは思わなかった。
舐めていた。
この世界にたくさん人間はいるし、自分に合う他の人を探せば良いだけだ。
失恋したって新しい恋人ができれば、けろっと忘れて出直せる。
たった一人の相手なんて、いるはずがないと思っていた。
蛍に出会うまでは。
気が合うし一緒にいて楽しい。
好きな食べ物の好みも似ているし、笑いのツボもぴったり。
気を使わなくてもいい安心感のある相手なのに、ドキドキするような恋愛感情も
同時に存在する。
そんな相手は今までいなかった。
俺はたった一人の相手ってやつを、知らなかっただけなんだと思い知った。
俺は蛍が好きだ。
蛍がいい。
蛍じゃなきゃ、ダメだ。
一生のうちにそんなふうに思える相手に出会えたこと。
それだけで幸せなのかもしれない。
蛍は同居人の仁さんが好きで、仁さんには他に好きな人がいる。
みんな大切な人への気持ちを成就させたい。それだけだ。
蛍は仁さんへの想いに折り合いをつけなくてはと必死で、辛そうだった。
その辛さや痛みが、こうなってみて初めてわかる。
俺も蛍と同じ状況になったからだ。
辛くて、苦しくて、たまらなくても、
前に進まなきゃならない。
好きでもない相手に言い寄られるのは辛いだろうし、
報われない相手を想い続けるのは、何より自分自身が苦しい。
親友と呼べるような間柄だとしたら、尚更。
あの日から、1週間も蛍に会っていない。
大学の構内に蛍の姿を探す。
居ないと分かっていても探してしまう。
それが恋なんだ、と思った。
蛍の困ったような顔。辛そうな顔。
ごめん、と謝る彼は、苦しそうだった。
蛍には俺の気持ちがわかったんだろう。
蛍は仕事で2週間、北海道へ行くと言っていた。
授業中、心ここにあらずでぼんやり教科書を眺めていたら、
蛍から連絡が来た。
俺はホッと胸を撫で下ろす。
このまま避けられ続けることになったら、と最悪の事態を想定していたから。
出会ってから1日だって連絡を欠かしたことのなかった俺たちの関係に、大きな亀裂が入ってしまったように思えて、俺は告白したこと自体を後悔し始めていた。
バンドメンバー全員で撮った北海道の写真が数枚。
スマホの画面の中の蛍を眺めながら、やっぱり可愛いな、と思った。
「蛍、友達として今まで通りお前のことを守るから、この前俺が言ったことは忘れてくれるか?」
夜、電話でそう告げると、彼はしばらく沈黙してこう言った。
「黒衣、ありがとう。」
言ったはいいが、そんなことが簡単にできるとは思えなかった。
それでも、好きな人に嫌な思いをさせることは耐えられなかったから、俺は心に決めた。
蛍のことは諦めて、前を向く。
決意してしまえば、それだけで少し気持ちが楽になった。
それは傷を癒すというよりは、傷を見ないようにして気づかないフリをするということに他ならなかった。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢
夜の公園。
最近はまたスケボーに夢中になっていた。
報われない恋のエネルギーをスポーツで昇華させようと必死だったからだ。
好きなことに打ち込んでいる時間は、蛍のことを考えずに済む。
「あれ、黒衣さん?」
休憩しようと自販機で買ったコーラを片手に取ったところで、懐かしい声が聞こえてくる。
振り返ると、そこには母校の制服を着た金髪の男が立っていた。
高校時代の後輩、桃山林太郎。
「桃、久しぶりだな。」
「またスケート始めたんだ?」
金髪になっていたので、驚いた。
俺が卒業した時にはまだ黒髪だったから、一瞬誰かわからないほどに印象が違う。
黄色味が強くない透き通るような金髪は、彼の白い肌によく馴染んでいて綺麗だ。
すらりと背が高くルックスが良い彼は、いつも女子生徒を数人引き連れて歩いていた。
彼は女生徒たちに先に帰るように告げて手を振って見送ると、俺の座る横に腰掛けた。
自販機で追加購入したコーラを手渡すと、どうも、と素っ気なく受け取りプルタブを引く。
「お前、その髪似合ってるな。」
「俺もこっちの方がしっくりくる。」
桃は前髪を触りながら、そう呟く。
「黒髪のお前も初々しくて可愛かったけどな。」
「なら、黒に戻す。」
「なんだよそれ。お前、全然変わらねぇな。」
桃はあまり多くを語らない。
テンションが低い位置で安定していて、省エネモードで生きている。
そんな印象の後輩だった。
淡々と喋るので、感情の起伏がないのかと思えばそうでもないし、
扱いにくそうに見えて、素直で率直にものを言う。
彼を知れば知るほど奥が深いと感じる。そんな男だった。
「卒業してから全然連絡くれないし、公園にも来なくなったから心配してた。」
彼の表情から読み取れる情報は少ない。
表情が変わらない分、言葉は真っ直ぐだった。
「悪い。バタバタしてて、数ヶ月あっという間だった。」
「大学生活って楽しいの?」
桃は敬語が下手で、ほとんどいつもタメ口で話す。
それが俺たちの仲を深めた要因だったと思う。
「まぁまぁ、かな。」
数日前までは最高に楽しいと思っていた。
蛍がいつもそばにいたから。
傷ついた心に、懐かしい友人はじわりと温かく染み込むような癒しをくれる。
心がポカポカと温かくなっていく気がした。
久しぶりに会ったのに、共に過ごした日々と変わらず、同じ濃度で同じ楽しさをくれるから。
「黒衣さん、あんたがまた消えないうちに言いたいことがある。」
桃はジロリと恨みがましい目で俺を見た。
「いや、消えてねぇし。」
ハァ、と息を深く吐き出して、呼吸を整えると、彼は俺に向き直った。
「俺の恋人になってよ。」
彼の目は真剣そのものだ。
「はぁ??」
こいつは思ったことを率直に言うけれど、言葉足らずで突然突飛なことを言い出す。
「前にも言ったけど、俺黒衣さんのこと好きだから、恋人になってほしい。」
前に言ったかぁ?そんなこと。
全く身に覚えがない。
桃は顔色一つ変えずに、普段と同じテンション、同じトーンで
俺に求愛した。
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