姉が殺されたと言い出しまして

FEEL

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 犯人を見つけないと姉の幽霊に憑かれ続ける。
 諦めたりしたら祟られてしまう。
 死ぬのは嫌だし、姿の見えない姉と同居し続けるのも嫌だ。

 全くもって迷惑な話だが、無理矢理でも犯人を見つけないと僕の平穏は手に入らないということだ。
 外を歩いて脳が活性化してきたお陰か、僕はとうとう事の重大さに気付き始めてきた。
 そうしている間にも鈴はチリンチリンとなり続けていた。ここまで大袈裟に音を出し続けると普通に怪しい。
 家に帰るまでの間だけ鈴を取ろうかと腰に手を伸ばした時、「慎ちゃん!」と女性の声が聞こえる。

「はぁはぁ……慎ちゃーん!」

 息を切らして、でたらめに底が分厚いローファーを鳴らしてこちらにやってくる女性は見覚えがあった。
 大庭琉姫おおばるき。家の近所では希少種と言っていい若者であると共に唯一と言っていい姉の友人であり幼馴染だ。
 家から中々出なかった姉と違い琉姫は都会への憧れが強く、少しでも賑やかなところに行こうとよく海側の町で遊んでいた。
 そういう憧れの影響か、『地雷系』だか『量産型』だか言われているファッションを好んで着用している。
 今だって袖口がヒラヒラとしたシャツに短さの割に膨らんだスカートとゴテゴテした服装で身を包んでいた。
 胸元まで伸びた黒髪のツインテールをたなびかせながら僕の近くまでやって来た琉姫は、肩で息をしながら綺麗に切り揃えた前髪を整えていた。

「久しぶりだねぇ。元気だった?」
「まぁ、いつも通りだよ」

 素っ気なく応答すると琉姫はいきなり抱き着いてきた!

「相変わらず塩だね~。ん~~可愛いなぁ!」
「もう18歳なんだから可愛いはやめてくれっ」

 締め付けて頬を擦りつけるように顔を寄せてくる琉姫に僕は全力で抵抗する。

 僕は彼女が大の苦手だ。
 こういうパーソナルスペースを空気のように抵抗なく侵入してくるところや、いつまで経っても子供のように振舞う言動を聞く度に嫌気がさす。
 そんな僕の気持ちなんて知る気もなく、今回も琉姫は馴れ馴れしくコミュニケーションを取ってくる。

「可愛いお姉さんがハグしてるんだよ? なんだかんだいいながら慎ちゃんも嬉しいんじゃろ~?」
「嬉しくないし琉姫姉の体が汗ばんで気持ち悪い」

 汗ばんで感じるのは走ってきたせいだろう。
 指摘してやると琉姫の動きはピタリと止まり、しがみついていた腕をゆっくりと離した。

「やば。もしかして私の身体、汗臭かった?」

 そんなことはない――と言おうとしてから少し考えて僕は何を言わずに頷いた。この様子だとこう言っておけば迂闊に近寄ってこないだろう。
 僕の顔を見ていた琉姫は狼狽して両手で顔を覆い隠す。

「最悪……私の汚い部分見られちゃった……絶対嫌いになられたよぉ……」

 好きか嫌いかで言えば昔から嫌いなので別に感情に変化はなかった。しかし姉と同様に彼女もこうなってしまうと扱いがとても面倒臭くなってしまう。
 とりあえずフォローしとかないとこのまま陰鬱とした空気をぶつけられ続ける事になってしまうだろう。

「気にしてないし嫌いにもなってないよ」
「…………嘘だぁ」
「本当だって。僕は嘘つかないからね」
「……確かに、慎ちゃんが嘘言ったの見たことないかも」
「でしょ。本当に嫌いになってないよ」

 姉と違って単純なところが琉姫の長所だ。
 そもそも元から嫌いなのでこれ以上嫌いようがない。ただ事実を伝えただけだ。
 しかし彼女はこれだけで機嫌を直してくれる。
 両手で口元を隠していた琉姫はこちらの様子を観察するように凝視してから、目蓋を緩ませて目を細める。

「んふふ。良かった~。慎ちゃんに嫌われたら雫ちゃんにも会いにくくなるし、本当どうしようかと思ったよ~!」
「……琉姫姉、知らないの?」
「なんのことぉ?」

 クエスチョンマークを浮かべる琉姫。どうやらとぼけている様子でもなさそうだったので、僕は姉が亡くなった事を伝える。
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