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奇妙な仲間たち

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「わかりました、私から先方に連絡しても?」
「もちろん、なるべく早く、と言っていたよ」 

 ということは、早急に対処しろということだ。
 大事な案件。優先順位を間違えないように、的確に行動しなければ。

「なら急いで日時を調整します」
「ああ、よかったらわしも」
「けっこうです」

 途中で言葉をバッサリ切ると、部長は「まだなにも言ってないんだが」と残念そうに肩を落とした。
 利益が大きな取り引きの時だけ、やたら私に同行したがる。そんなことは今に始まったことではないので、皆まで聞かずともわかるのだ。
 部長は私より二十も歳上だ。しかもプログラマーを経験せずシステムエンジニアから入社している。プログラミングとエンジニアを兼業している私からすれば、基本設計……いわゆる上流工程しかできない人間は邪魔なだけ。
 下流工程と呼ばれるシステム構築にも精通することで、システムそのものを細部まで理解することができ、クライアントにわかりやすく勧められるのだ。
 仕事に集中している時は気持ちがいい。
 余計なことを考えずに済むから。
 それなのに、やっぱり外野は平穏を乱したがる。

 遠巻きに生じるざわめき、重なる囁き声は明確には聞き取れないけれど、大体なにを言っているのか把握できる。
 私と部長が立っている廊下の奥、突き当たった場所に集まる男性社員たち。
 部長も異変を感じ取ったようで、後方を確認するとまた私に向き合った。
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