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奇妙な仲間たち

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 まん丸い白目の中に、まん丸い黒目が浮かび上がる。つぶれたように小さな鼻に、やけにくっきりつり上がった口角。
 私と同じくらい背が高い上、かなり痩せていて髪も短い。女性用の制服を着ているにも関わらず、年齢や性別が不確かに思えた。
 ――鶏ガラみたい。
 さすがにそんなこと、本人に直接言えるはずがない。
 と言うより、言えない。
 恐ろしくて。
 どうしてそんなに、こちらを見つめているのか。
 瞼がないのではと疑うほど見開いた眼光を送ってくる。
 口だけ笑っているが、目が怖いのだ。
 ――私、なにかした?
 受付の仕事なんて若いうちしかできないとか、美人でなくても採用されるんだとか、まさかそんな気持ちが透けたわけがあるまいし。
 出会って数分の彼女に恨みを買う理由を探していると、不意にその唇がカクカクと動いた。
 
「いいもの、つけていますネ」

 ロボットのような片言めいたイントネーションで話す彼女に、隣から待ったの声が飛ぶ。

「ちょっと、お客様に変なこと言わないでくださいよ」

 取り継ぎを終えた受付嬢らしい若い女性が嗜めるように言う。

「鳥目だからって白鳥しらとりさんだけ固定の五時上がりなんですから、時間内はしっかり働いてくださいよ」

 一応音量は下げているが、しっかり聞こえている。 
 注意された彼女は、自分よりずいぶん小柄な相手にペコペコと頭を下げ平謝りしていた。
 その風貌から、白鳥という名前はあまりにミスマッチだ。けれど自分で選べないものにとやかく思いたくない。私だって好きで千鶴をやっているわけではないから。
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