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奇妙な仲間たち

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「あっ、ごめんね、もしかして怒ってる? 君が早く帰りたがるものだから言いそびれちゃって」

 肩の力が抜けて息をついたのを、私が怒っているのと勘違いしたのか、猫宮さんは顔の前で両手を合わせ申し訳なさそうに謝った。
 そんな可愛らしい謝罪をされたら、大抵のことなら許せてしまいそうだ。
 可愛いと言っても女の子っぽいわけではなく、少年のような愛嬌という意味だ。

「……いえ、全然怒ってないんで、大丈夫です」
「ほんと? よかったぁ。営業時間だけは記憶のお土産に書いてあるはずなんだけど」

 記憶のお土産。やっぱりこれが。
 意味を再確認しながら右手を上げ、細い部分に巻かれたお守りを見てみる。
 けれど目を細めてどれだけ凝視しても、点すら認めることができなかった。

「え……えぇ、と?」

 縦横斜めといろんな角度から全体を確かめる私に、猫宮さんは急になにかを思い出したように「ああっ」と声を漏らした。

「そう言えば十二支用の文字で記載したままだった。人の目じゃ見えないね」

 ――ああ、そう、なんですね?
 それももう少し早く言ってほしかったような。
 そうすればお守りを睨みを利かせるヤンキーのようにならずに済んだのに。
 どうやら十二支の視力は、マサイの戦士よりも遥かに発達しているようだ。

「営業時間とか、あるんですね」
「一応ね、夜の七時から朝の四時まで。僕が夜行性だから」

 特にこだわりがあるためではなく、単に自身の習性に従った結果らしい。
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