上 下
94 / 206
奇妙な仲間たち

57

しおりを挟む
「……え? 未國ってあの、例の取引先の」
「そうですよ、私が今日行った四井住川銀行の社長です」
「え……ええーーっ!? そ、そうだったのか」

 部長が仰天するのも無理はない。
 馴染みのある大手銀行のトップが、私たちと同じ人間ではなかったのだから。 

「私がこの店と繋がりがあることに気づいて、興味を持たれたようで」
「そうなのか、ならわしとも話してくれるだろうか!?」

 やけに乗り気の部長を「さあ、どうでしょう」と受け流す。
 社会的地位は別として、奔放に見える十二支たちがなにを考えているかは予測不能だ。
 ちなみに受付嬢はたぶん酉年でした、と伝えると、部長は驚きと羨ましさを混ぜたような奇妙な顔をした。
 昨夜、ここに来たばかりの私が、部長より多くの十二支に会っていることが不思議だったらしい。
 なにかの縁か、偶然か、彼らを知るのはそう易いことではないようだ。

「すごいねちづちゃん、短期間でそんなに十二支に出会うなんて、いつかコンプリートできるかも!」
「ううむ、白鳥にまで会うとは……」

 楽しそうに声を高くする猫宮さんに対して、牛坐さんは眉間に皺を寄せなにか考えているようだった。
 
「白鳥さんがどうかしたんですか?」
「いずれわかるか、知る必要もないか――」
「んじゃあ俺はそろそろ帰るぜ!」

 牛坐さんの言葉は、大きな声と椅子を立つ音にかき消された。
 いちいち驚きながら振り向いた後方には、テーブル席の前に立つ繁寅さんがいた。
しおりを挟む

処理中です...