108 / 206
白昼の衝撃
9
しおりを挟む
室内に入り自分の席に向かう最中、突然現れた人影に急ブレーキをかけた。
なんとかぶつからずに済んだけれど、一体今日はなんなのか、衝突厄日……いや、吉日だったりして。
「すすす隅田川課長、おはようございまする!」
「はあ……? おはよう、ございまする……?」
眼前の細長い人物に、疑問を込めながら挨拶を返す。
坊ちゃん刈りに丸メガネと定型スーツ。冴えない風貌が安定している新入社員。
その両手にはA4の用紙が大量に抱えられていた。
「今朝早くから来て、今まで失敗したところ何回もやり直しました! 反省点と今後の抱負もまとめたのでチェックしてくだされ!」
「今朝早くからって……誰が早出しろって言ったの?」
「誰にも言われてません、自主的に。あっ、タイムカードはスキャンしてないんで大丈夫でする!」
嫌な予感がしたけれど、やっぱりだ。
本人は悪気がないどころか、なにか大きなことでも成し遂げたように胸を張っている。
「はあっ? 大丈夫じゃないでしょ、サービス勤務なんて監査で引っかかったらどうするの! ああ、もう、こんなに紙も使って、なるべく節約しなきゃいけないのに」
用紙をひったくるように受け取りながら、ついついいつもの口調で注意を並べる。
けれど今はハッとする隙があった。
勢いで吐いた苦言を冷静に見る、もう一人の自分がいるような、不思議な感覚だった。
山になった書類越しに映る笹原くんは、予想通り……いや、予想以上にしょぼんと肩を落としていた。
なんとかぶつからずに済んだけれど、一体今日はなんなのか、衝突厄日……いや、吉日だったりして。
「すすす隅田川課長、おはようございまする!」
「はあ……? おはよう、ございまする……?」
眼前の細長い人物に、疑問を込めながら挨拶を返す。
坊ちゃん刈りに丸メガネと定型スーツ。冴えない風貌が安定している新入社員。
その両手にはA4の用紙が大量に抱えられていた。
「今朝早くから来て、今まで失敗したところ何回もやり直しました! 反省点と今後の抱負もまとめたのでチェックしてくだされ!」
「今朝早くからって……誰が早出しろって言ったの?」
「誰にも言われてません、自主的に。あっ、タイムカードはスキャンしてないんで大丈夫でする!」
嫌な予感がしたけれど、やっぱりだ。
本人は悪気がないどころか、なにか大きなことでも成し遂げたように胸を張っている。
「はあっ? 大丈夫じゃないでしょ、サービス勤務なんて監査で引っかかったらどうするの! ああ、もう、こんなに紙も使って、なるべく節約しなきゃいけないのに」
用紙をひったくるように受け取りながら、ついついいつもの口調で注意を並べる。
けれど今はハッとする隙があった。
勢いで吐いた苦言を冷静に見る、もう一人の自分がいるような、不思議な感覚だった。
山になった書類越しに映る笹原くんは、予想通り……いや、予想以上にしょぼんと肩を落としていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる