蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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蛇珀といろり

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「今日は食パンか。レタス、トマトに……おお! 前食ってうまかったウインナーが!!」

 蛇珀はいろりの母が作る食事を楽しみにしていたのだ。
 神は空気さえあれば生きられるわけだが、食そうと思えばそれも可能である。

 生まれて三百年、人間嫌いだった蛇珀は人間が口にしているようなものを決して欲しがらなかった。
 しかし、いろりに好意を持つようになり、人の暮らしというものに興味が出てくると、食事を取る気になった。
 そして一度食べてしまうと、こんなに美味しかったのか、と驚きすっかり夢中になってしまったのだ。

 木造のダイニングテーブルの椅子に座ったいろり。その隣に姿は隠しているが確かに腰を据えた蛇珀が、いろりの朝食をあっという間に平らげてしまう。

「じゃ、蛇珀様、食べすぎでは……?」
「あら? いろり、もう食べちゃったの?」
「え!? あ、う、うん」
「最近よく食べるわね」

 瞬く間に空になった白いお皿を見た母は、驚きながらも嬉しそうにしながら、パンやウインナーを追加する。
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