蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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 それと同時に恐怖を感じる。
 自身に対する罰が恐ろしいのではない。
 自らの選択の過ちで、いろりに二度と逢えなくなるのが恐ろしいのだ。
 いろりを愛すれば愛するほど、蛇珀の葛藤は膨れ上がる。

 ――俺は、試されているのか……?

 何をすれば、露となるか定かでない。
 神としての立場を考えれば、理性を厳守するが吉か。
 しかし自身を求めるかのように視線を絡ませるいろりを前にしては、蛇珀の理性は舌の上の砂糖菓子のように甘く蕩けていく。

 ――どうすりゃいい? 何が正解なんだ? わかんねえ。わかんねえ、が。――欲しい。欲しい欲しい欲しい欲しい、いろりが欲しくてたまらねえ……!!

 その唇に一度ひとたび触れてしまえば、きっと後戻りできない。
 それでも――。
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