蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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試練

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「……演技の割には、ずいぶん熱を上げていたようでしたねぇ」

 不意に百恋の背後に現れた学法がそんなことを口にした。
 それを聞いた百恋は、やや頬を染めながら少し拗ねたようにそっぽを向いた。

「さあね。……っていうか学法さあ、なんでそんなことが言えるわけ!? 一体何をどこまで知ってるのさ!?」
「年の功、でしょうかねぇ、ほっほ」
「何その意味深な笑い!? 超怖いんですけどぉ!!」

 神、最年長記録更新中の学法は、なんと仙界や神の事情を聞かずともあらかた把握できるようになっていた。
 自身でもいつからそのような状態になったかは明確ではないが、瞼が開かなくなった時期からこの心の目が覚醒したと思われる。これは天獄ですら知らない驚愕の事実であった。

「ここで一つ、神が生まれ変わる、などという夢を見られてみてはいかがでしょう?」
「何それ、そんな話聞いたことないし、根拠もないでしょ」
「何、ただの退屈しのぎ、戯れですよ」
「……そんなこと、信じる意味もないと思うけど」

 百恋は爽やかな面持ちで、真っ直ぐに先を見据えていた。

「いつかあいつが生まれ変わるなんてことがあって、その時まだ僕も生きていたら……今度はちゃんと、話がしたいな」
「ではそれまで、小生と宇治茶でも飲みながら勉学に励み時を費やしましょうか」
「やだやだ勉強嫌いーっ!」
「ほっほ、精進精進」

 他愛もない会話を弾ませながら、二人はいろりたちと反対の道を進んで行った。
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