蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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とこしえの恋路

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「……はい。俺も、いろりには自由に好きなことをしてほしいと思ってます」
「蛇珀様……」
「いろり? あなた自分の恋人を様付けで呼んでるの?」
「え!? あ、ああ、う、うん、なんとなく、癖で……」
「そう? まあいいわ。それよりも式の日取りはいつにしましょうか?」
「ええ!? き、気が早いよお母さん!」
「俺はいろりの白無垢が見てえ……」
「いいわねぇ~~! 角隠し! 私も見たいわあぁ!! やっぱり神前式かしら!?」
「私たちの場合はある意味毎日神前式ですけどね」
「うまい」

 和やかな空気の中、さゆりの目には光るものがあった。

「……本当に、夢みたいだわ。いろりの目が治ったのと、蛇珀君が来てくれたのと、無関係には思えなくって……まるで蛇珀君が神様みたいね」

 何も知らないはずなのに確信を突くさゆりに、蛇珀といろりは不思議な心地であった。

「蛇珀君、いろりのことをどうぞよろしくお願いします」
「あ、いや! お、俺の方こそ、よろしく頼みます!」

 深々と頭を下げるさゆりに、蛇珀も急いで頭を下げた。

「さ、というわけで、新居はどうするの、あなたたち?」
「俺が神社にいるんで、そこに」
「あら、いいわねぇ、じゃあ早速今夜から行かせてもらいなさい」
「エッ!??」

 このさゆりの発言には、蛇珀の声が裏返った。
 
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