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7.悪巧みの二人
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翌日、王宮の書斎では、二人の男性が向き合っていた。
一人は焦茶色の立派な机の椅子に座り、もう一人はその机を挟んだ形で立っている。
「……なんですと?」
胸に騎士団の紋である、白薔薇の記章を携えた、白地に金の刺繍が入った騎士服姿の彼は、精悍な眉を歪めながら聞き返す。
正面に座った彼……国王陛下であるテレス・オットー・ヴァレンタインが、意に沿わぬことを口にしたからだ。
「だから、アリストの付き添いで、ナターシャも建国式典に招くことにしたんだよ」
テレスは優しげな下がり目で、正面に立つジオバールに言った。
クルクルの金髪に、黄金色の瞳、透き通る肌。人形のように整った顔立ちをしたテレスは現在十五歳。十歳で王座についた、あまりにも若い国王である。
長身で筋肉質なジオバールと比べると、背も低く体格も華奢で、どこか頼りない雰囲気を纏っている。
「ですが、あれは追放者ですよ、ロッドベリルには聖女というていで行かせていますが」
「アリストがナターシャが一緒でないと行かないと言ってるんだよ。別に犯罪者を釈放するわけじゃないんだ、一日のほんの数時間くらいかまわないでしょ」
アリストはナターシャと約束した通り、スノークロウを通じてテレスに手紙を送っていた。
内容はもちろん、ナターシャと一緒に参加する許可が欲しいということだ。ついでに、ナターシャが一緒でないと行かない、という駄々っ子のような文言も添えられていた。
スノークロウから手紙を受け取ったテレスは、その内容を読んでジオバールに伝えたのだ。
ジオバールは王都を守るミカエリアス聖騎士団の団長であり、王であるテレスの側近である。
ゆえに、なにか決断をする時は、必ずジオバールに一言告げるようにしていた。
「……ごめんね、ジオバール、君にはいつも世話になっているのに。だけどロッドベリルは国の最も危険な場所を守る重要な役割を果たしている。無視するわけにはいかないんだよ」
苦い表情で沈黙するジオバールに、困った顔で付け加えるテレス。
その様子はまるでご機嫌取りをしているようだ。
「……ですから、あのような輩どもに大事な場所を任せるなと言ったのです、足元を見られますよと」
「そうだね、ごめんよジオバール。だけど王都を守るミカエリアス聖騎士団を、野蛮なティルバイトに行かせたくはなかったんだ。特に君には期待しているから、これからも僕のそばに仕えてほしくてね、わかっておくれ」
つい謝罪の言葉が口をついて出るのは、テレスの気弱な性格を表しているようだ。これではどちらが王なのかわからない。
口調こそテレスはタメ口でジオバールは敬語を使っているが、態度は明らかにジオバールの方が大きい。
「……承知しました」
「ありがとう、アリストには僕から返事を出しておくよ」
ジオバールから了承を得たテレスは、弱々しくもホッとした笑顔で答えた。
それからジオバールは会釈程度に軽く頭を下げると、踵を返して書斎を後にした。
ジオバールがいなくなると、テレスはふーと細い息を吐き、机の引き出しを開けると、アリストからの手紙を改めて見る。
テレスはアリストの暗号じみた汚い文字を、簡単に解読することができた。
それは……幼い頃に関わった記憶があったからだ。
「……来てくださる気になってよかった……早くお会いしたいです」
アリストが自分のために綴ってくれた文に指先を触れ、テレスは嬉しそうに微笑んだ。
一人は焦茶色の立派な机の椅子に座り、もう一人はその机を挟んだ形で立っている。
「……なんですと?」
胸に騎士団の紋である、白薔薇の記章を携えた、白地に金の刺繍が入った騎士服姿の彼は、精悍な眉を歪めながら聞き返す。
正面に座った彼……国王陛下であるテレス・オットー・ヴァレンタインが、意に沿わぬことを口にしたからだ。
「だから、アリストの付き添いで、ナターシャも建国式典に招くことにしたんだよ」
テレスは優しげな下がり目で、正面に立つジオバールに言った。
クルクルの金髪に、黄金色の瞳、透き通る肌。人形のように整った顔立ちをしたテレスは現在十五歳。十歳で王座についた、あまりにも若い国王である。
長身で筋肉質なジオバールと比べると、背も低く体格も華奢で、どこか頼りない雰囲気を纏っている。
「ですが、あれは追放者ですよ、ロッドベリルには聖女というていで行かせていますが」
「アリストがナターシャが一緒でないと行かないと言ってるんだよ。別に犯罪者を釈放するわけじゃないんだ、一日のほんの数時間くらいかまわないでしょ」
アリストはナターシャと約束した通り、スノークロウを通じてテレスに手紙を送っていた。
内容はもちろん、ナターシャと一緒に参加する許可が欲しいということだ。ついでに、ナターシャが一緒でないと行かない、という駄々っ子のような文言も添えられていた。
スノークロウから手紙を受け取ったテレスは、その内容を読んでジオバールに伝えたのだ。
ジオバールは王都を守るミカエリアス聖騎士団の団長であり、王であるテレスの側近である。
ゆえに、なにか決断をする時は、必ずジオバールに一言告げるようにしていた。
「……ごめんね、ジオバール、君にはいつも世話になっているのに。だけどロッドベリルは国の最も危険な場所を守る重要な役割を果たしている。無視するわけにはいかないんだよ」
苦い表情で沈黙するジオバールに、困った顔で付け加えるテレス。
その様子はまるでご機嫌取りをしているようだ。
「……ですから、あのような輩どもに大事な場所を任せるなと言ったのです、足元を見られますよと」
「そうだね、ごめんよジオバール。だけど王都を守るミカエリアス聖騎士団を、野蛮なティルバイトに行かせたくはなかったんだ。特に君には期待しているから、これからも僕のそばに仕えてほしくてね、わかっておくれ」
つい謝罪の言葉が口をついて出るのは、テレスの気弱な性格を表しているようだ。これではどちらが王なのかわからない。
口調こそテレスはタメ口でジオバールは敬語を使っているが、態度は明らかにジオバールの方が大きい。
「……承知しました」
「ありがとう、アリストには僕から返事を出しておくよ」
ジオバールから了承を得たテレスは、弱々しくもホッとした笑顔で答えた。
それからジオバールは会釈程度に軽く頭を下げると、踵を返して書斎を後にした。
ジオバールがいなくなると、テレスはふーと細い息を吐き、机の引き出しを開けると、アリストからの手紙を改めて見る。
テレスはアリストの暗号じみた汚い文字を、簡単に解読することができた。
それは……幼い頃に関わった記憶があったからだ。
「……来てくださる気になってよかった……早くお会いしたいです」
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