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8.波乱の建国式典
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「……そ、そうだね、ぼ、ボクも、そう思うよ」
「アリストのいいところはわたくしが知っています、もちろんロッドベリルのみなさんもね。だから、堂々としていてくださいな」
ナターシャが微笑む度、アリストはふわふわと身体が宙に浮く心地がする。
――こ、これって、やっぱりボク、な、ナターシャのこと……い、いいのかな、ぼ、ボクなんかに好かれて、な、ナターシャは、ほ、本当に嫌じゃないのかな……な、ナターシャは、ぼ、ボクのこと、どう思ってるんだろう……。
じわじわと湧き上がるナターシャへの想い。
しかし、アリストの恋の悩みは、訪れた一つの気配に掻き消される。
「やあ、初めまして」
声をかけられ、先に振り向いたのはナターシャだった。
そこには深緑の貴族服に身を包んだ背の高い男性が立っている。年齢はハタチそこそこといったところだろうか。栗色の長めの髪を後ろに流した彼は、穏やかな目つきでアリストを見ている。
「ロッドベリルの魔術団長殿、なんですよね? お会いできて光栄です」
片手を胸にあて、挨拶をする青年……彼の姿を見たナターシャは、ふと違和感を覚える。
以前にも同じ光景を目にしたような、胸が騒つくような奇妙な感覚。
それは、かつてナターシャが前世の記憶を取り戻した時と同じものだった。
「自分はアラン・ミラ・マクレガーと申します」
そう言って、アランがナターシャを見た時だった。
そのエメラルドグリーンの瞳と目が合った瞬間、ナターシャの脳はキイィ……という高い音に支配される。
耳を劈く高音に、ナターシャは頭を抱えて窓に倒れるように体重を預けた。
目を閉じたナターシャの瞼の裏、どんどん浮かび上がるイメージの数々。
そこにいるのは……縦ロールの黒髪に、貴族のドレスを着たナタリー、そしてその隣に寄り添うのは、今、ナターシャの目の前にいるアランだった。
町に出かけたり、食事をしたり、互いに騎士の格好で戦に出ていたり……果てには手を繋いだり抱き合ったりしている場面まで流れてくる。
そして最後に浮かんだのは……アラン……いや、アレンがナターシャを裏切る場面だった。
その刹那、ナターシャは急速に理解する。
――そうですわ、この男は『アレン』……前世でわたくしを裏切った人間の一人……!
「……ぶ……いじょう、ぶ……」
記憶の渦に呑み込まれそうになっていたナターシャに、暗闇をノックする声が聞こえる。
「だ、大丈夫? ナターシャ?」
パッと目を開けると、ナターシャの視界いっぱいにアリストの顔。
彼は心配そうな瞳でナターシャを覗き込んでいた。
「アリストのいいところはわたくしが知っています、もちろんロッドベリルのみなさんもね。だから、堂々としていてくださいな」
ナターシャが微笑む度、アリストはふわふわと身体が宙に浮く心地がする。
――こ、これって、やっぱりボク、な、ナターシャのこと……い、いいのかな、ぼ、ボクなんかに好かれて、な、ナターシャは、ほ、本当に嫌じゃないのかな……な、ナターシャは、ぼ、ボクのこと、どう思ってるんだろう……。
じわじわと湧き上がるナターシャへの想い。
しかし、アリストの恋の悩みは、訪れた一つの気配に掻き消される。
「やあ、初めまして」
声をかけられ、先に振り向いたのはナターシャだった。
そこには深緑の貴族服に身を包んだ背の高い男性が立っている。年齢はハタチそこそこといったところだろうか。栗色の長めの髪を後ろに流した彼は、穏やかな目つきでアリストを見ている。
「ロッドベリルの魔術団長殿、なんですよね? お会いできて光栄です」
片手を胸にあて、挨拶をする青年……彼の姿を見たナターシャは、ふと違和感を覚える。
以前にも同じ光景を目にしたような、胸が騒つくような奇妙な感覚。
それは、かつてナターシャが前世の記憶を取り戻した時と同じものだった。
「自分はアラン・ミラ・マクレガーと申します」
そう言って、アランがナターシャを見た時だった。
そのエメラルドグリーンの瞳と目が合った瞬間、ナターシャの脳はキイィ……という高い音に支配される。
耳を劈く高音に、ナターシャは頭を抱えて窓に倒れるように体重を預けた。
目を閉じたナターシャの瞼の裏、どんどん浮かび上がるイメージの数々。
そこにいるのは……縦ロールの黒髪に、貴族のドレスを着たナタリー、そしてその隣に寄り添うのは、今、ナターシャの目の前にいるアランだった。
町に出かけたり、食事をしたり、互いに騎士の格好で戦に出ていたり……果てには手を繋いだり抱き合ったりしている場面まで流れてくる。
そして最後に浮かんだのは……アラン……いや、アレンがナターシャを裏切る場面だった。
その刹那、ナターシャは急速に理解する。
――そうですわ、この男は『アレン』……前世でわたくしを裏切った人間の一人……!
「……ぶ……いじょう、ぶ……」
記憶の渦に呑み込まれそうになっていたナターシャに、暗闇をノックする声が聞こえる。
「だ、大丈夫? ナターシャ?」
パッと目を開けると、ナターシャの視界いっぱいにアリストの顔。
彼は心配そうな瞳でナターシャを覗き込んでいた。
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