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10.アリストの覚悟
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三日ぶりのアリストとの再会に、ナターシャは喜びと驚きが混じって忙しい表情を繰り返している。
それもそのはず、アリストはまるで大雨の中を歩いてきたかのようにビショ濡れだったのだから。
「び、ビシャビシャではありませんか!! なぜこんなことに!? すぐに乾かしますからじっとしていてくださいませ!!」
なぜ室内にいたのにこんなことになるのか!? という質問を後回しにして、とりあえずアリストを乾かしにかかるナターシャ。
誰にも口を挟ませないほどのスピードで両手のひらを翳すと、浄化の力で『余分なもの』と判断した水を温かな光で消滅させてゆく。
するとアリストを濡らしていた水分がみるみるうちに消え去り、フードごとずぶ濡れになっていた白髪も、ふわふわの綿飴ヘッドに戻った。
「とりあえず乾いてよかったですが、早くお風呂に入った方がいいですわ、風邪をひくかもしれませんし……あっ、ですが、先に飲み物でもお出ししましょうか!? 三日もこもっておいでだったので喉がカラカラでは!?」
久しぶりにアリストと会えたナターシャは、お節介なオカンモードを発揮している。
が、ふとナターシャは気づいた。
先ほどからなにも発さないアリストが、しゃんと背筋を伸ばして立っていること、そして、普段の穏やかな目が鋭さを保っていることに。
……全体的にキリッとしている。これは、間違いなくドSモードのアリストだ。
「……ヘルユングに行く」
アリストはしっかりとした口調と低音で告げる。訓練室で魔術を多用していたせいか、まだ余韻が残っているようだ。
ヘルユング……ナターシャはその言葉に聞き覚えがあった。記憶が確かならば、そこは、ソリスティリア国民なら誰もが知っている超有名な――。
「王都を越えた先にある魔術学校です。団長を含め、ここにいる魔術師全員の母校ですよ」
いつの間にかそばに来ていたパトリックが、ナターシャの記憶の続きを代弁してくれた。
やはり間違いなかった。魔術師の登竜門、ヘルユング魔術学校に。
しかし、なぜ今そんなことを言い出したのか? アリストの思考が読めないナターシャは、彼に疑問を投げかけようとする。が、突然アリストにじっと見つめられ、なにも言えなくなってしまった。
「ナターシャ、オレと一緒に来てくれ」
「……あ、は、はい……」
凛々しい攻め顔でビシッと言われたナターシャは、思わず頬を染めて頷く。
追放者なのでティルバイトから出たら処刑なのだが、そんなことはすっかり抜け落ちている。
それもそのはず、アリストはまるで大雨の中を歩いてきたかのようにビショ濡れだったのだから。
「び、ビシャビシャではありませんか!! なぜこんなことに!? すぐに乾かしますからじっとしていてくださいませ!!」
なぜ室内にいたのにこんなことになるのか!? という質問を後回しにして、とりあえずアリストを乾かしにかかるナターシャ。
誰にも口を挟ませないほどのスピードで両手のひらを翳すと、浄化の力で『余分なもの』と判断した水を温かな光で消滅させてゆく。
するとアリストを濡らしていた水分がみるみるうちに消え去り、フードごとずぶ濡れになっていた白髪も、ふわふわの綿飴ヘッドに戻った。
「とりあえず乾いてよかったですが、早くお風呂に入った方がいいですわ、風邪をひくかもしれませんし……あっ、ですが、先に飲み物でもお出ししましょうか!? 三日もこもっておいでだったので喉がカラカラでは!?」
久しぶりにアリストと会えたナターシャは、お節介なオカンモードを発揮している。
が、ふとナターシャは気づいた。
先ほどからなにも発さないアリストが、しゃんと背筋を伸ばして立っていること、そして、普段の穏やかな目が鋭さを保っていることに。
……全体的にキリッとしている。これは、間違いなくドSモードのアリストだ。
「……ヘルユングに行く」
アリストはしっかりとした口調と低音で告げる。訓練室で魔術を多用していたせいか、まだ余韻が残っているようだ。
ヘルユング……ナターシャはその言葉に聞き覚えがあった。記憶が確かならば、そこは、ソリスティリア国民なら誰もが知っている超有名な――。
「王都を越えた先にある魔術学校です。団長を含め、ここにいる魔術師全員の母校ですよ」
いつの間にかそばに来ていたパトリックが、ナターシャの記憶の続きを代弁してくれた。
やはり間違いなかった。魔術師の登竜門、ヘルユング魔術学校に。
しかし、なぜ今そんなことを言い出したのか? アリストの思考が読めないナターシャは、彼に疑問を投げかけようとする。が、突然アリストにじっと見つめられ、なにも言えなくなってしまった。
「ナターシャ、オレと一緒に来てくれ」
「……あ、は、はい……」
凛々しい攻め顔でビシッと言われたナターシャは、思わず頬を染めて頷く。
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