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10.アリストの覚悟
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ガネットや他の団員たちも見守る中、パトリックだけはアリストの真意に気づいていた。
――ヘルユング魔術学校に連れていくということは……ついに、ナターシャにすべてを話すんですね、団長……。
いつかナターシャになら、アリスト自ら語るであろうと思っていた、その時が近いと感じたパトリックは胸が震えた。
アリストはナターシャからパトリックに視線を移すと、周りに集まっていた全団員に指示を出す。
「お前たちはここに残れ、後で話がある」
「はいっ!」
「承知しました、団長!」
アリストに続いて団員たちの歯切れのいい返事が聞こえる。
――まあぁ、アリストが……団長っぽいですわぁ……!!
ぽい、ではなく、正真正銘の団長なのだが。
普段とは違った正統派のリーダーらしいアリストに、ナターシャはまた新たな一面を拝めたと感激した……直後。
――クゥーンキュルルルーン
捨て犬が拾ってくださいと瞳を潤ませ訴えているかのような、切なくもファンシーな音が静寂に鳴り響いた。
出どころはアリストのお腹。
三日間も断食状態だったので当然の結果だが、タイミングが絶妙すぎるし、音が可愛すぎる。
せっかくキリッとしていたのに、シュンシュンと威厳と一緒にアリストの肩も縮まっていくのがわかった。
それを見たナターシャはカワッ……! と悶えそうになるも、早くなにか食べさせてやらねばという気持ちに駆られる。
「やっぱりお腹が空いていますわよね!? とりあえず食事にいたしましょう! 確かまだパンやウインナーが……」
急ぎキッチンに向かおうとするナターシャだが、なにかの力に引き留められて動きを止める。
振り向くと、アリストがナターシャの聖女服の裾を摘んでいた。そして恥ずかしそうに言う。
「……な、ナターシャの、り、料理が、食べたい」
繰り返される別人ギャップに、ナターシャの脳がスパークしそうになる。
可愛いアリストも、カッコイイアリストも、うん……どちらもいい……と、ナターシャは改めて思った。
こんなふうにおねだりされたら、断る理由などあるはずがない。
「まあっ、もちろん! もちろんいいですわよ! 三日間の空腹を満たせるよう、エネルギーに溢れた料理にいたしましょうね! せっかくだからたくさん作りますので、ぜひみなさんもお召し上がりくださいませ!」
テンションが上がったナターシャは、合わせた手を頬に寄せ、アリストを筆頭にメンバー全員に愛想を振りまいた。
普通、ヒロインがこんなことを言ってくれたら、みんなヤッター! と盛り上がるところだろうが、誰一人として声を出さない。
団員たちはみんな、真っ青な顔で目を泳がせている。パトリックは視線はナターシャにあるものの、顔色が悪いのは同じだった。
――ヘルユング魔術学校に連れていくということは……ついに、ナターシャにすべてを話すんですね、団長……。
いつかナターシャになら、アリスト自ら語るであろうと思っていた、その時が近いと感じたパトリックは胸が震えた。
アリストはナターシャからパトリックに視線を移すと、周りに集まっていた全団員に指示を出す。
「お前たちはここに残れ、後で話がある」
「はいっ!」
「承知しました、団長!」
アリストに続いて団員たちの歯切れのいい返事が聞こえる。
――まあぁ、アリストが……団長っぽいですわぁ……!!
ぽい、ではなく、正真正銘の団長なのだが。
普段とは違った正統派のリーダーらしいアリストに、ナターシャはまた新たな一面を拝めたと感激した……直後。
――クゥーンキュルルルーン
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出どころはアリストのお腹。
三日間も断食状態だったので当然の結果だが、タイミングが絶妙すぎるし、音が可愛すぎる。
せっかくキリッとしていたのに、シュンシュンと威厳と一緒にアリストの肩も縮まっていくのがわかった。
それを見たナターシャはカワッ……! と悶えそうになるも、早くなにか食べさせてやらねばという気持ちに駆られる。
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急ぎキッチンに向かおうとするナターシャだが、なにかの力に引き留められて動きを止める。
振り向くと、アリストがナターシャの聖女服の裾を摘んでいた。そして恥ずかしそうに言う。
「……な、ナターシャの、り、料理が、食べたい」
繰り返される別人ギャップに、ナターシャの脳がスパークしそうになる。
可愛いアリストも、カッコイイアリストも、うん……どちらもいい……と、ナターシャは改めて思った。
こんなふうにおねだりされたら、断る理由などあるはずがない。
「まあっ、もちろん! もちろんいいですわよ! 三日間の空腹を満たせるよう、エネルギーに溢れた料理にいたしましょうね! せっかくだからたくさん作りますので、ぜひみなさんもお召し上がりくださいませ!」
テンションが上がったナターシャは、合わせた手を頬に寄せ、アリストを筆頭にメンバー全員に愛想を振りまいた。
普通、ヒロインがこんなことを言ってくれたら、みんなヤッター! と盛り上がるところだろうが、誰一人として声を出さない。
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