170 / 309
11.ヘルユング魔術学校
3
団長のジオバールに次いで、騎士団内で発言力を持つ彼は、パトリックが今操りたい人間ナンバーワンだった。
しかも一人で行動しているところがまた、パトリックには好都合である。
複数いればまず魔術で黙らせなければいけなかったので、無駄な魔力の消費を抑えられそうだ。
なにも知らないジェレミオは、真っ直ぐ前を向いてただ静かに歩いている。
やがて彼が目前を通過すると、パトリックは即座に術を解き、ジェレミオの後ろに立つなりトンと肩を叩いた。
不審に思う間もなくただ反射的に後ろを振り返るジェレミオ。そこにあったのは、怪しく光るトパーズの瞳。
「すみませんが、従ってもらいますよ」
すでに魔術書も用意していたパトリックは、ジェレミオの肩を叩いた手のひらを、彼の額に移動させた。
そして、ジェレミオが驚きの声を漏らす暇もなく、操作の魔術を発動させる。
紫の焔のような揺らめきが生まれて間もなく、ジェレミオの見開いていた目が次第にトロンと半開きになった。
術をかけ終わったパトリックは、右手を下ろしてジェレミオに指示を出す。
「ミカエリアス聖騎士団長、ジオバール・ハルト・サンタクルスに伝えてください。ロッドベリル魔術団長、アリスト・ノワール・マッドボーンがティルバイトを留守にしていること。遠くに行っていて長時間不在になるであろうこと。それに伴いティルバイトは団員たちだけになり……攻めやすい状態であることを」
「……了解した」
「なぜ留守に気づいたかは、各地区の護衛騎士たちがアリストが出かける姿を見たとか、違和感のないように上手く伝えてください。くれぐれもジオバールに情報を怪しまれないように」
「……了解した」
「では、頼みましたよ」
パトリックがそう言うと、ジェレミオはピッと背筋を伸ばし敬礼した後、再び歩き始めた。
ジェレミオの後ろ姿を見送りながら、パトリックはふぅと短く息を吐く。
「転移魔術を一度使っただけでこうも疲れるとは……私もまだまだですね」
ロッドベリルの中でもアリストとパトリックしか使えない上級魔術、一度使うだけでかなりの精神力と魔力を消費するのは当然だ。
これをどこで◯ドアのように日常的に使用しているアリストはまさに化け物――いや、パトリックにとっては神であった。
――私はあなたの足元にも及びません。ですが、この世であなたに一番近い魔術師は……私でありたいのです。
パトリックはふと顔を上げ、廊下の高い位置にある窓から空を見た。
「泣き言を言っている暇はありません。なるべくたくさんの者たちに術をかけた方がいいでしょう、備えあれば憂いなしですから……ねえ、団長?」
アリストの命令は絶対。ゆえに、なにがあってもこの計画は成功させると誓う。例え自身の命が危ぶまれようとも。
しかも一人で行動しているところがまた、パトリックには好都合である。
複数いればまず魔術で黙らせなければいけなかったので、無駄な魔力の消費を抑えられそうだ。
なにも知らないジェレミオは、真っ直ぐ前を向いてただ静かに歩いている。
やがて彼が目前を通過すると、パトリックは即座に術を解き、ジェレミオの後ろに立つなりトンと肩を叩いた。
不審に思う間もなくただ反射的に後ろを振り返るジェレミオ。そこにあったのは、怪しく光るトパーズの瞳。
「すみませんが、従ってもらいますよ」
すでに魔術書も用意していたパトリックは、ジェレミオの肩を叩いた手のひらを、彼の額に移動させた。
そして、ジェレミオが驚きの声を漏らす暇もなく、操作の魔術を発動させる。
紫の焔のような揺らめきが生まれて間もなく、ジェレミオの見開いていた目が次第にトロンと半開きになった。
術をかけ終わったパトリックは、右手を下ろしてジェレミオに指示を出す。
「ミカエリアス聖騎士団長、ジオバール・ハルト・サンタクルスに伝えてください。ロッドベリル魔術団長、アリスト・ノワール・マッドボーンがティルバイトを留守にしていること。遠くに行っていて長時間不在になるであろうこと。それに伴いティルバイトは団員たちだけになり……攻めやすい状態であることを」
「……了解した」
「なぜ留守に気づいたかは、各地区の護衛騎士たちがアリストが出かける姿を見たとか、違和感のないように上手く伝えてください。くれぐれもジオバールに情報を怪しまれないように」
「……了解した」
「では、頼みましたよ」
パトリックがそう言うと、ジェレミオはピッと背筋を伸ばし敬礼した後、再び歩き始めた。
ジェレミオの後ろ姿を見送りながら、パトリックはふぅと短く息を吐く。
「転移魔術を一度使っただけでこうも疲れるとは……私もまだまだですね」
ロッドベリルの中でもアリストとパトリックしか使えない上級魔術、一度使うだけでかなりの精神力と魔力を消費するのは当然だ。
これをどこで◯ドアのように日常的に使用しているアリストはまさに化け物――いや、パトリックにとっては神であった。
――私はあなたの足元にも及びません。ですが、この世であなたに一番近い魔術師は……私でありたいのです。
パトリックはふと顔を上げ、廊下の高い位置にある窓から空を見た。
「泣き言を言っている暇はありません。なるべくたくさんの者たちに術をかけた方がいいでしょう、備えあれば憂いなしですから……ねえ、団長?」
アリストの命令は絶対。ゆえに、なにがあってもこの計画は成功させると誓う。例え自身の命が危ぶまれようとも。
あなたにおすすめの小説
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
ファンタジー
公爵令嬢として生まれながら、子ども時代からメイドや周囲の陰謀で、次々と濡れ衣を着せられ、「悪女」扱いされてきたミリアム。
第3王子との婚約を聖女に奪われ、聖女への嫌がらせの冤罪で国外追放された後、平民として生き延びる中で、何度も5年前へのロールバック(逆行)を繰り返すことに。
生計をたてる為に、追放後の平民生活で極めた針仕事が、ロールバックが繰り返されることで、針仕事の能力だけは引き継がれ、天才的な実力を手に入れる。
その時女神「アテナ」の加護を得て、2つの力を手にすることに。
「加護縫い」
(縫った布に強力な祝福を込められる)
「嘘のほころびを見抜く力」
(相手の嘘を布のほころびとして視覚的に捉え、引き抜く、または繕うことで、真実を暴いたり修正したりする)
を手にしたミリアムは、5歳の幼女時代まで遡り、2つの力で悪評をぬりかえ、仲違いしていた家族も、加護の力を与えることで協力な味方へと変貌。
さらに、女神から可愛いしもべ「アリアドネ」を授かり、元婚約者と聖女にザマァを狙う中、加護縫いの能力が最も高い人間を王太子妃に迎える決まりのある大国、ルーパート王国の王子が近付いて来て……?
あなたを見送るための
あかね
ファンタジー
私の最初の記憶は、彼の死を喜ぶものだった。私は、好きだった人物が死んだあとの世界に転生した。そして、思いがけず彼の墓守になることになり、化け物が現れると言う場所で生活を始める。推しがいない世界で祈るだけの生活は平穏だったけど、私の知らぬところで問題は発生していたのだった。
悪役女王アウラの休日 ~処刑した女王が名君だったかもなんて、もう遅い~
オレンジ方解石
ファンタジー
恋人に裏切られ、嘘の噂を立てられ、契約も打ち切られた二十七歳の派遣社員、雨井桜子。
世界に絶望した彼女は、むかし読んだ少女漫画『聖なる乙女の祈りの伝説』の悪役女王アウラと魂が入れ替わる。
アウラは二年後に処刑されるキャラ。
桜子は処刑を回避して、今度こそ幸せになろうと奮闘するが、その時は迫りーーーー
徳川家基、不本意!
克全
歴史・時代
幻の11代将軍、徳川家基が生き残っていたらどのような世の中になっていたのか?田沼意次に取立てられて、徳川家基の住む西之丸御納戸役となっていた長谷川平蔵が、田沼意次ではなく徳川家基に取り入って出世しようとしていたらどうなっていたのか?徳川家治が、次々と死んでいく自分の子供の死因に疑念を持っていたらどうなっていたのか、そのような事を考えて創作してみました。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】