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棘病

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「え!? な、なんでそうなるの?」
「黒川君て、体育の授業、いつも室内……体育館の時しか出てないのよ。だからさっき圭太がサボりってぼやいてたでしょ」
「そう、なの? 詳しいねみっちゃん」
「こんなに人数が少ないんだから目立つし、第一女の子たちが話してるからみんな知ってるわよ、噂に興味がないのなんて、穏花くらいなんだから」
「そ、そっか」
「日光に当たらないなら当然肌は白くなるし、そういえばお昼ご飯を食べてるところも見たことないかも」

 普段から人のことを観察していない穏花からしたらみちるの話は飛躍しすぎているようにも感じたが、美汪が持つ独特な空気感を思えば“普通”の人間とは違う、という事実があったとしても妙に納得してしまう部分もあった。

「今日の学校帰り、黒川君を尾行してみない?」
「――ええぇ!?」
「彼、謎が多いし……後をつけてみたら、何かわかるかもしれないわよ。もしも違ったとしても、何か損をするわけでもないし」
「で、でもそんな、失礼じゃない、かな?」
「バレなければいいのよ。でも、もし黒川君が本当に吸血鬼なら……穏花を救ってくれる可能性だってあるじゃない」
「ある、のかなぁ……? でも何も今日じゃなくても――うッ……」

 話の途中で、突然息苦しさを感じた穏花は胸を押さえて前屈みになった。

「穏花? 穏花!? 大丈夫!?」

 咽せる穏花の背中をさするみちるが次に目にしたものは……
 咽せる口を押さえていた小さな掌に載った白い花弁だった――。
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