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秘密

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 圭太が言った“それ”とは、穏花が左首筋に貼り付けた大きな絆創膏だった。
 言うまでもなく、前日美汪に咬まれた痕を隠すために穏花がつけたものだった。
 一番指摘されたくない圭太に気づかれ、穏花は誤魔化すように笑った。

「あ、ああ、これは……ちょっと野良猫に引っかかれちゃって」
「えっ、マジかよ? どうせ何も考えずに触りに行ったんだろ。どれどれ、野良猫に咬まれた間抜けな傷を見てしんぜよう……」

 圭太はそう言って、からかうように穏花の絆創膏を剥がそうと手を伸ばした。
 瞬間、穏花はひやりと冷たい汗を流し、咄嗟にその手を払い除けた。
 
 二人の間に、僅かだが緊張が走った。
 おふざけの気持ちだった圭太は、穏花の行動に面食らっていた。

「あっ! ご、ごめん! 本当に、ちょっと、すごい大きな傷で……圭太には見られたくないかなぁ、って」

 重い空気を変えようと穏花が弁明すると、圭太は少し嬉しそうに顔を緩めた。

「そりゃ悪かったな。……あのさ、穏花、今日学校の帰りにさ、なんか食って帰らねえ?」
「……え?」
「ここから三駅ほど行った先にさ、カフェができたって他の奴らが言ってて。穏花甘いもの好きだって言ってただろ? こんな地方に洒落た店ができるなんて珍しいしさ!」
「ほ、本当……?」

 思いもよらぬ圭太からのデートの誘いに胸が弾む穏花。

「うん、行きたい……!」
「マジで? やった! んじゃあ楽しみにつまんねえ授業がんばるかー!」

 無邪気に笑う圭太を見て、穏花も自然と笑顔になっていた。
 ――のも束の間。
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