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秘密

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 今日も一日学校生活が終わると、各々に仲の良い生徒同士が集まり、帰路に向かう。
 穏花は日直のため、自分の席に座って日誌をつけていた。

 珍しく、美汪がいない。
 いつもは時間が合わなくとも、どこからか睨みつけるような目つきで穏花を見ながらも待っているのだが。
 
 ――どこ行っちゃったのかな。私が日誌書くの遅いから、帰っちゃったのかな……。

 穏花は忙しなく顔を左右に動かしていた。
 あの難攻不落な城のように、常に安定した冷静さを誇る美男子を視界に入れようと必死だった。
 しかし、穏花に自覚はない。
 美汪が側にいないと、陽が落ちたように胸が暗く、寒々しくなることも――。

「穏花、手伝おうか?」

 そう声をかけてくれたのは、みちるだった。
 もう教室には、穏花とみちるの二人しかいない。
 
「ううん、大丈夫、もう終わるから」
「そう……ねえ、穏花、今日は黒川君について行かなくてよかったの?」

 みちるの棘のある台詞に、穏花は肌がひりつくのを感じた。

「……うん、今日は、必要ないみたい……」

 少し俯きながらそんな言い方をする穏花を見て、みちるの頭に血が上ってゆく。
 みちるは立ったまま穏花の机に両手をつくと身を乗り出した。

「おかしいわよね、どう考えても……私たちが黒川君をつけたあの日から、穏花は黒川君としかいないようになったわ、休憩時間も、帰る時だって……黒川君が強制的に穏花を引き連れてるようにしか見えない、まるで奴隷みたいに冷たくあしらって……やっぱりあの日尾行したことがバレて、弱味を握られてしたくもないことをさせられているんでしょう……!?」

 みちるの気迫に、穏花は椅子に座ったままたじろいだ。
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