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秘密
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「……まあ、君はおしゃべり好きではあっても噂好きではないようだけどね」
「あれ、よく見たらいつもと帰り道が違わない?」
「話を聞いていないだけか。しかもそこに今頃気づくとはね……」
再度歩き出した美汪に、穏花は辺りを見回しながら尋ねた。
普段の下校コースは南側で、少ないながら民家も並んでいるが、今美汪が進んでいる道はその反対側に当たる。
北側の道は広大な田畑に囲まれた土手道が続いているだけで、人気《ひとけ》もない。
穏花は何も考えずに美汪について、いつの間にかここまで来ていたのだ。
「はあ……君はいつか人攫いにでも遭いそうで危なっかしいね」
美汪は土手の隅に足を止めると、穏花に向き直った。
「それはよく言われるよ」
「よく言われてるんじゃないよ」
「でも美汪といたら大丈夫だと思うなぁ」
緩やかな口調で朗《ほが》らかに微笑む穏花に、美汪は一瞬目を見開くと、それを誤魔化すように彼女の柔らかな右頬を左手で引っ張った。
「いひゃいひゃいひゃいほぉ」
「そんな顔でそういうことを言わないでくれる」
一頻り穏花のもち肌の伸びを堪能した後、美汪は離した左手をそのまま自身の目の前に移動させた。
「今日は電車では帰らない。……そろそろ頃合いだからね」
「頃合い……?」
「君を招待する、だよ」
そう口にすると、美汪はしなやかな中指と親指を触れ合わせ、弾いて見せた。
「あれ、よく見たらいつもと帰り道が違わない?」
「話を聞いていないだけか。しかもそこに今頃気づくとはね……」
再度歩き出した美汪に、穏花は辺りを見回しながら尋ねた。
普段の下校コースは南側で、少ないながら民家も並んでいるが、今美汪が進んでいる道はその反対側に当たる。
北側の道は広大な田畑に囲まれた土手道が続いているだけで、人気《ひとけ》もない。
穏花は何も考えずに美汪について、いつの間にかここまで来ていたのだ。
「はあ……君はいつか人攫いにでも遭いそうで危なっかしいね」
美汪は土手の隅に足を止めると、穏花に向き直った。
「それはよく言われるよ」
「よく言われてるんじゃないよ」
「でも美汪といたら大丈夫だと思うなぁ」
緩やかな口調で朗《ほが》らかに微笑む穏花に、美汪は一瞬目を見開くと、それを誤魔化すように彼女の柔らかな右頬を左手で引っ張った。
「いひゃいひゃいひゃいほぉ」
「そんな顔でそういうことを言わないでくれる」
一頻り穏花のもち肌の伸びを堪能した後、美汪は離した左手をそのまま自身の目の前に移動させた。
「今日は電車では帰らない。……そろそろ頃合いだからね」
「頃合い……?」
「君を招待する、だよ」
そう口にすると、美汪はしなやかな中指と親指を触れ合わせ、弾いて見せた。
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