薔薇の耽血(バラのたんけつ)

碧野葉菜

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吸血族の城

19

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「昔々あるところに生き血を食糧とする人型をした生物と、野菜や肉を食糧とする人型の生物がおりました。前者は吸血族、後者は雑食族と呼ばれ、互いに干渉し合わずそれぞれ平和に暮らしておりました。ところがある日、雑食族の美しい王女が、平凡な吸血族の男に恋をしました。身分違いな上、異種族である恋は許されるはずがなく、二人は掟を破り駆け落ちをしました」

 コーエンは小さな子供に絵本を読み聞かせるように、柔らかく緩やかな口調で進めた。

「辿り着いた小さな町で二人は結婚し、子供にも恵まれ、幸せに暮らしておりましたが……そんな日々は長くは続かず、王族たちに捕まった王女と子供は罰としてその吸血族の夫の前で無惨にも処刑されてしまいました。吸血族の夫は激怒し、その場にいた王族をすべて惨殺しました。それを口火に、雑食族――今“人間”と呼ばれている者たちの吸血族絶滅計画が遂行されました」

 穏花は息をするのも忘れ、コーエンの乾いた唇から紡がれる物語を聞いていた。

「権力者たちは言いました。『奴らは生き血を啜り絶命させる人ならざる危険な存在。やられる前にやらねばならぬ』と。……もちろんデマです、吸血族たちは種族同士で血を与え合っていたため、他の種族に迷惑をかけたことなどありません。しかし、群衆は愚かです。噂に踊らされ、暴動は世界中に広がっていきました。雑食族同士の戦争の中には、純血の吸血族狩りも多く含まれておりました。古代、魔物や鬼と呼ばれていたものは、皆彼らのことです」
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