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あふれる想い

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 まさかそこを疑ったことなどなかった穏花は、寝耳に水であった。
 しかし、間もなくしてヨハンは何か閃いたように「あっ!」と高い声を上げた。

「そういえば、僕の吸血族だったおじいちゃんが、おばあちゃんの血だけはものすごく美味しく感じたって言ってたよ。二人は大恋愛で結婚したって話してた……そっか、そっか、そうなんだ……!」

 ヨハンは一人納得したように、嬉しそうに目を輝かせ笑っていた。
 穏花とアベルはヨハンの様子が理解できず、訝しげな表情をしていた。

「お姉ちゃんの血液自体が、物理的に他の人と違うわけじゃないんだよ。……好きな人の血だから、特段に美味しく感じる、ただ、それだけ。答えって案外とてもシンプルなものなんだね」

 ヨハンの温かな微笑みとともに贈られたその言葉は、穏花の思考を吹き飛ばした。

「――は!? そ、そんなわけ……あの美汪が、人を好きになんて――……いや、ある、のか? ある、よな、そりゃあ……あんなにカッコイイんだから、色恋くらい、い、今までなかったのが、おかしなくらい、だよな……」
「ふふ、アベルは美汪が大好きだもんね、ちょっと妬いちゃう? 大丈夫、僕がいるよ」
「なっ!? べ、別に……確かに美汪は……命の恩人だし、あんな風になれたらなって、憧れではあるけど……」

 あからさまに動揺を見せるアベルに、それを宥める落ち着いたヨハン。
 二人の騒がしいやり取りを前にしても、穏花は未だ状況を把握できていなかった。
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