多趣味なおっさんが異世界に飛ばされる

koh

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第一章 

第二話

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「ようこそ!」
白い空間に似合わない、黒いローブを被った若造が声をかけてきた。

「死神か?」
俺はその風貌から死神しか浮かばなかった。

「いや、死神じゃないよ?
ただの神様。」
若造はヘラヘラ笑ってる。

「神様ってのは白い物を着るんじゃないのか?
黒は死神だろ?」
「それ、偏見!
黒いローブはファッションだよ!
人間て皆おんなじイメージで決めつけるよね…
何でそんなイメージが定着しちゃうのかな?
神様だって個性は有るよ?」
若造はスティールと名乗った。
人間が好きで四六時中、地球を見ていたらしい。

「で、貴方を呼んだのはお願いがあるからなんだけどさぁ。」
スティールは人にお願いする態度には到底見えない言葉遣いだ。

「その前に、何で俺なんだ?」
「理由?
異世界に転移したかったんでしょ?」
スティールは相変わらずヘラヘラしてる。

「冗談はともかく、ちゃんとした理由もあるよ。」
スティールはスマホを出して何かアプリを開いてる。

「何で神様がスマホ弄ってんだよ?
電波とか通信料とかどうしてんだ?」
「これは俺のカスタマイズだから。
電波は要らないし、どこのキャリアでも無いからお金はかかんないよ。」
スティールは画面から目を離すことなく答えた。
そして、画面を俺に見せてニヤッと笑った。

「これ、貴方が書いてるラノベだよね?
ペンネームkuonさん。
歳が今年はAKBだって青い鳥で呟いてたね。
奥さんと子供が三人。
一番上の子は成人かぁ。
俺、貴方のラノベの世界観が凄く気に入ってるから、貴方の事を色々調べたんだよ。
しかし、あのラノベを書いてる中の人がおっさんって詐欺っぽくね?」
「調べたのは良いけど、最後はディスったよな?
それが人に物を頼む態度か?」
「でさ、遊んでばかりいないで新しい世界を作れって言われちゃってピンときたんだよ!
貴方の世界観で新しく世界を作ろって。
ベースは出来てるんだけど、何かワクワクが無いんだよ。
だから、貴方を呼んだんだ。」
スティールは悪びれずヘラヘラしてる。

「要はパクったけどしっくりこないからどうにかしろと?」
「パクったとは人聞き悪いなぁ。
貴方の事をリスペクトしてるんだよ、オマージュだよ。
それにどうにかしろって言わないよ?
ただその世界で好きな事をしててくれればいいよ。
貴方が居るだけで水の波紋のように世界は動くから。
やりたい事が一杯あるんでしょ?
何でも出来るよ?
それに貴方の世界観だよ?
絶対に貴方は気に入るよ。」
スティールは使命も何も無いしラノベの世界に立てるんだから良いでしょと同意を促した。

「転移したら現実の俺は死ぬのか?
それと断れば帰れるのか?」
「現実に未練があるの?
仕事は歳に見合わない肉体労働で家には居場所が無い。
やりたい事も思う様に出来ないし、我慢ばっかじゃん?
…毎年の初詣の願い事も知ってるよ。
なのに帰る事を考えてる?
…ちょっと理解に苦しむな。
取り敢えず、質問の答えは断る事も出来るし、転移したら死ぬよ。」
スティールは彼は現実の世界が嫌いで異世界に行きたがっていたと思っていただけに断る事は考えて無かった。

「未練とは違うな。
この歳になると、俺が居なくなったら仕事場が…とか
残された妻や子供の生活とか考える事が沢山あるんだ。」
「じゃ、それをクリア出来たら転移してくれるの?」
「あぁ、構わない。
喜んで行ってやるよ。」
その言葉を聞いてスティールは少し考えた。

「じゃあさ、仕事場は次の新入社員に有能な奴を送り込んであげるよ。
家族の方は毎週ロトを買ってるよね?
一等を当ててあげるよ。
これでどう?
更に今即決してくれたら凄いものを貴方にもあげるよ。」
スティールはドヤっとばかりに好条件を出してきた。

「それは本当に出来るのか?
転移してから、やっぱ無理だったとか言い出さないだろうな?」
「いや、言わないし。
俺、神様だよ?
騙したり、嘘つかないし。」
「なら良いが。
その条件なら喜んで新しい世界に行く。」
俺は人に迷惑があまりかからないなら、自由に生きたかった。

『柵から開放される…』
今までは死ぬまで付き纏ってくると思っていた柵が。
それだけで新しい世界に行く価値があった。

「転移に同意してくれたから、貴方にこれをあげるよ。」
スティールはスマホを仕舞うと代わりに一本の鎌を出して俺に渡した。

「死神の鎌にしては随分と小さいな。
向こうで雑草刈りから始めるのか?」
「だ~か~ら~!
死神じゃ無いって言ってるじゃん。
別に面白くないからこのくだりはもうイイよ。
それは影切りの鎌って名前の道具だよ。」
スティールはうんざりした顔で鎌の説明を始めた。

「本来はその鎌で影を切るとその人の分身が出来る物なんだけど、ちょっと手を加えて影を切った人の分身が新しい世界に飛ぶようにしておいた。
新しい世界で一人は寂しいだろ?
友達でもいいし、アイドルでも良いよ。
望むなら過去に遡って、付き合っていた昔の彼女でも良いよ。
でも、ひとつだけ言っとくよ。
連れていけるのは一人だけだからね。
アイドルをグループ丸ごと連れてってハーレムとか無理だから。」
「いや、アイドル要らないし。
それに鎌持ってアイドルに近付いたら警備員に捕まるだろ。
ニュースになっちまうわ。」
「いや、その鎌を持ってる時は人から姿は見えないから問題無いんだけどね。」
スティールは誰にするか決まったらその場所まで飛ばしてやると言った。

「即決出来るか!
これからずっと一緒に居る事になるんだろ?
即決を求めるなら、面倒くさいから要らん。」
「要らんの?
いくらベースはラノベの世界でもいきなりボッチはツラくない?
決まんないなら、よく観る動画のあの子とかにしとけば?
毎日、目の前で踊ってもらえばいいじゃん。」
「何処まで俺のプライベートに踏み込んでるんだよ!」
「…歴代の彼女の名前を時系列ごとに言おうか?」
「…もういい。
分かった、いいよもう。」
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