王様のシロップ

はりもぐら

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王様のシロップ・2

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いよいよ晩餐会が始まり、来賓がそろうとシロップドリンクが振舞われた。

マロングラッセシロップを使ったオ・レマロングラッセ、チョコレートシロップを使ったチョコミントソーダ、ストロベリーシロップを使ったホワイトストロベリーミルク、オレンジシロップを使ったオレンジモカなどなど。

ピエールさんご自慢のドリンクが次々に登場し、来賓たちは舌つづみを打った。

「王様、わたくしシロップを使った飲み物、大変おいしくいただきましたわ」

隣国から訪れていたお姫様が王様と談笑している。

ピエールさんはその様子を見て、ホッと胸をなでおろした。

もちろんレシピには自信があったけれど、お客さんの笑顔を見るまではやっぱり少し心配だったから。

晩餐会も無事終わり、日常が戻って来た。

しかし、ピエールさんはあいかわらずシロップドリンク作りに追われ一日があっという間に過ぎていく。

ある日の昼食後、アイスパッションフルーツラテを飲んでいた王様がピエールさんに話しかけた。

「実はこの間の晩餐会に来ていた隣国の姫と結婚することになった」

「それはまことにおめでとうございます」

「この結婚はピエールコック長が作ったシロップドリンクのおかげだ」

結婚はおめでたいことだが、それが自分の作ったシロップドリンクのおかげとはどういうことだろう。

「姫はシロップドリンクがいたく気に入り、国に帰ってから城のコックに作らせたそうだ。しかし、どうやっても晩餐会で飲んだような味にはならなかった。それで、姫はいいことを思いついた、つまり私と結婚すれば一生おいしいシロップドリンクが飲めるというわけだ」

「はあ、まことに光栄です」 

そう言ったものの、そんな理由で結婚を決めてもいいのだろうか。

浮世離れした人たちの考えていることはよく分からないけれど、王様もとてもうれしそうだから終わり良ければすべて良しだ。

「ピエールコック長には特別に褒美を取らす」

「ははぁ、ありがたき幸せ」

ピエールさんはたくさんのご褒美をもらい、ますます王様のためにおいしいシロップドリンク作りに励むのだった。
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