3 / 23
遺跡発掘
しおりを挟む
ひとまずリアとデュークはアルノルドの話を聞く。
アルナルドは第十階層の地図を広げて言う。
「第十層も未だに発掘者が踏破できてないせいで、地図も穴だらけだね」
「それだけ罠が多いんです。俺たちも命は惜しいですから」
「命惜しくない者が発掘者なんてやってられないからね。この魔動具だけれど」
そう言いながら、アルナルドはひとつの魔動具を取り出した。それは以前に第十層に探索に出かけたリアが見つけてきたものだった。修復師では全く歯が立たなかったそれを、復元師であるアルナルドの手により、どうにか完成形が見える形になったが、前に来た時点ではこの魔動具がなんなのかは判明していなかった。
「この魔動具、ただ振動だけするんだよ」
そう言いながらスイッチを入れると、途端にブブブブブと揺れ動く。振動だけではなにをする魔動具なのか特定できない。
「他の魔動具みたいに、これひとつじゃわからないって感じでしょうか」
「おそらくは。ただ、第十層の別の場所に仕掛けていた罠を持ち帰ってもらったけど」
「はい。第十層は他にも増して、罠の数が多いんですよね。それだけ重要拠点ということは、それだけ過去の遺産の中で重要なものが……」
「それだけれど、これはむしろ逆じゃないかなと推測している」
「逆とは……?」
「この遺跡を破壊する装置なんじゃないかと踏んでいるんだよ。罠がこれだけ多かったら、回収なんてできないじゃないか。それにひとつふたつの罠だったらいざ知らず、全部の罠が発動していたら、この遺跡が第十層から崩れてもおかしくない」
そうアルナルドにきっぱりと言われて、リアはぞっとする。
遺跡の浅い場所は、大学に通う学生たちが発掘とは程遠いフィールドワークをしているし、そもそもプロセルピナだって遺跡の上にある街なのだ。遺跡が壊れてしまったら、街だって跡形もなく崩れてしまう。
「私たち、また潜らないといけないのに怖いじゃないですかあ……っ」
思わず涙目になってリアが抗議するが、アルナルドは申し訳なさそうに顔を傾けるだけだった。
一方デュークは考え込むようにして腕を組む。
「だが……やはりこのことは管理者にもう一度直談判したほうがいいのでは。もし遺跡に万が一のことがあったら、金儲けどころじゃなくなるでしょ」
「そ、そうですよぉ!」
デュークの言葉に、リアも必死で言うが、アルナルドは困った顔をするだけだ。
「自分もそう思うから説得してるんだけどね。金の亡者は本当になにを言っても無駄で」
「そこはもうちょっと頑張ってくださいよ」
「うーん……」
そう他愛もない会話を繰り広げている中、ドタドタと廊下を走る足音が響いた。基本的にここには壊れたらまずいものばかりがあるため、よっぽど急いでない限りは大学内を走る人間はまずいない。
「失礼します! アルナルド先生大変です!」
息を切らせて走ってきたのは、どうも大学生らしき女の子であった。全身で息をしている。
「どうかしましたか?」
「……第十層を……遺跡泥棒が侵入しました……!」
「……はあ!?」
それに全員顔を見合わせた。
元々管理者があまりにも金儲けに走り過ぎて、一時期は各地の冒険者を募っていたが、冒険者たちでは知識が足りず、魔動具を暴発させる事故が多発した。学生を事故に巻き込むのかという大学からの苦情、魔動具がどんなものなのか確認してからじゃなかったら下手に触ると壊れて復元もできないという修復師や復元師からの苦言によるものだった。
なによりも現場に向かう発掘師たちが、罠にかかったり事故に巻き込まれたりした冒険者たちを回収に行かなくてはいけないため、本業に集中できない。
しかし儲けを忘れられない冒険者たちが不法侵入して遺跡を脅かすようになってしまった。冒険やロマンを忘れて金儲けに走るのでは、もはや彼らを冒険者としては認められない。遺跡泥棒として揶揄すべきである。
しかもよりによって、第十層の危険性を聞かされた上でこれなのだ。
「行くぞリア」
「は、はい……!」
「……行くんですね」
「俺たちでなければ止めきれないでしょうから」
「……くれぐれも頼みますよ」
アルナルドに見送られ、ふたりは慌てて復元室を飛び出していった。
デュークはちらりとリアを見る。
「大丈夫か? 顔が真っ青だが」
「……真っ青にだってなりますよ。だって、第十層は今危ないって聞いたところじゃないですか。もし……空気を読まない遺跡泥棒がなにかしたら……」
「そのときは、俺たちで殴ってでも止めるべきだな。ほら、急ぐぞ」
「……はいっ!」
正直、いくら仕事だし天職だとは言っても、怖いものは怖かったが。それでもやらなければならないことがあった。
(絶対に、止めるんだから……!)
──お前だけは、どうか
何故かリアの頭に、今朝夢で聞いた声が頭を掠めた。
アルナルドは第十階層の地図を広げて言う。
「第十層も未だに発掘者が踏破できてないせいで、地図も穴だらけだね」
「それだけ罠が多いんです。俺たちも命は惜しいですから」
「命惜しくない者が発掘者なんてやってられないからね。この魔動具だけれど」
そう言いながら、アルナルドはひとつの魔動具を取り出した。それは以前に第十層に探索に出かけたリアが見つけてきたものだった。修復師では全く歯が立たなかったそれを、復元師であるアルナルドの手により、どうにか完成形が見える形になったが、前に来た時点ではこの魔動具がなんなのかは判明していなかった。
「この魔動具、ただ振動だけするんだよ」
そう言いながらスイッチを入れると、途端にブブブブブと揺れ動く。振動だけではなにをする魔動具なのか特定できない。
「他の魔動具みたいに、これひとつじゃわからないって感じでしょうか」
「おそらくは。ただ、第十層の別の場所に仕掛けていた罠を持ち帰ってもらったけど」
「はい。第十層は他にも増して、罠の数が多いんですよね。それだけ重要拠点ということは、それだけ過去の遺産の中で重要なものが……」
「それだけれど、これはむしろ逆じゃないかなと推測している」
「逆とは……?」
「この遺跡を破壊する装置なんじゃないかと踏んでいるんだよ。罠がこれだけ多かったら、回収なんてできないじゃないか。それにひとつふたつの罠だったらいざ知らず、全部の罠が発動していたら、この遺跡が第十層から崩れてもおかしくない」
そうアルナルドにきっぱりと言われて、リアはぞっとする。
遺跡の浅い場所は、大学に通う学生たちが発掘とは程遠いフィールドワークをしているし、そもそもプロセルピナだって遺跡の上にある街なのだ。遺跡が壊れてしまったら、街だって跡形もなく崩れてしまう。
「私たち、また潜らないといけないのに怖いじゃないですかあ……っ」
思わず涙目になってリアが抗議するが、アルナルドは申し訳なさそうに顔を傾けるだけだった。
一方デュークは考え込むようにして腕を組む。
「だが……やはりこのことは管理者にもう一度直談判したほうがいいのでは。もし遺跡に万が一のことがあったら、金儲けどころじゃなくなるでしょ」
「そ、そうですよぉ!」
デュークの言葉に、リアも必死で言うが、アルナルドは困った顔をするだけだ。
「自分もそう思うから説得してるんだけどね。金の亡者は本当になにを言っても無駄で」
「そこはもうちょっと頑張ってくださいよ」
「うーん……」
そう他愛もない会話を繰り広げている中、ドタドタと廊下を走る足音が響いた。基本的にここには壊れたらまずいものばかりがあるため、よっぽど急いでない限りは大学内を走る人間はまずいない。
「失礼します! アルナルド先生大変です!」
息を切らせて走ってきたのは、どうも大学生らしき女の子であった。全身で息をしている。
「どうかしましたか?」
「……第十層を……遺跡泥棒が侵入しました……!」
「……はあ!?」
それに全員顔を見合わせた。
元々管理者があまりにも金儲けに走り過ぎて、一時期は各地の冒険者を募っていたが、冒険者たちでは知識が足りず、魔動具を暴発させる事故が多発した。学生を事故に巻き込むのかという大学からの苦情、魔動具がどんなものなのか確認してからじゃなかったら下手に触ると壊れて復元もできないという修復師や復元師からの苦言によるものだった。
なによりも現場に向かう発掘師たちが、罠にかかったり事故に巻き込まれたりした冒険者たちを回収に行かなくてはいけないため、本業に集中できない。
しかし儲けを忘れられない冒険者たちが不法侵入して遺跡を脅かすようになってしまった。冒険やロマンを忘れて金儲けに走るのでは、もはや彼らを冒険者としては認められない。遺跡泥棒として揶揄すべきである。
しかもよりによって、第十層の危険性を聞かされた上でこれなのだ。
「行くぞリア」
「は、はい……!」
「……行くんですね」
「俺たちでなければ止めきれないでしょうから」
「……くれぐれも頼みますよ」
アルナルドに見送られ、ふたりは慌てて復元室を飛び出していった。
デュークはちらりとリアを見る。
「大丈夫か? 顔が真っ青だが」
「……真っ青にだってなりますよ。だって、第十層は今危ないって聞いたところじゃないですか。もし……空気を読まない遺跡泥棒がなにかしたら……」
「そのときは、俺たちで殴ってでも止めるべきだな。ほら、急ぐぞ」
「……はいっ!」
正直、いくら仕事だし天職だとは言っても、怖いものは怖かったが。それでもやらなければならないことがあった。
(絶対に、止めるんだから……!)
──お前だけは、どうか
何故かリアの頭に、今朝夢で聞いた声が頭を掠めた。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)
スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」
唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。
四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。
絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。
「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」
明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは?
虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる