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同級生の秘密
神様たちの事情
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私の話を聞いた日吉さんは「ふむ」と唸り声を上げた。
「あのう……本当にごめんなさい。私が鳴神くんを……」
「ふーむ、これは不幸な行き違いだなあ」
「ええ……?」
「おそらくは、その雷神の先祖返りは、三葉さんを心配して守りたかっただけだと思うぞ?」
「ええ…………?」
そんなこと言われてもと、私は困惑してしまう。日吉さんは走るスピードを緩めずに、淡々と説明してくれた。
「大昔……それこそ今では平安時代って呼ばれる時代から、妖怪は人間にとって驚異だったし理不尽だった。時の帝が討伐軍を出すまで、都から気に入った人間をさらっていったという話はよくある話だった」
「でも……それって昔の話ですよね? 今じゃないですよね?」
「でもお前さん、神隠しって知らないかい?」
「ええ……?」
唐突に話が変わって、私は裏声を上げてしまうけれど、日吉さんは気にすることなく、それについても説明をくれた。
「神隠し。基本的に鬼が隠せば鬼隠し、天狗が隠せば天狗隠しになるんだが、それは置いておいて。基本的に今でも気に入った人間を妖怪や神がさらっていってしまうということはよくある。それこそ、その雷神の先祖返りの彼だって、それがなかったら生まれてないからなあ」
「え……そういえば鳴神くんは雷神の先祖返りだって、扇さんは教えてくれましたけど……」
「あんまりひとのことを詮索するのはよろしくないが。基本的に雷神は空にいるし、あんまり現世に現れないんだ。でも稀に気に入った人間の元に降りていって、そのまんまさらっていってしまうことがある」
「あれ? でもそれだったら気に入られた人……さらわれっぱなしですよね?」
「そうだな。でも神は人間と同じような愛し方をするとは限らない……子を成した途端に幽世からほっぽり出してしまうことがある。人と神の子は、現世であろうと幽世であろうと、完全などちらにもなれないせいで苦労することが多い。現世に住んで、ひたすら神の血を薄めていったその雷神の子も、先祖返りで能力に目覚めてしまって、相当苦労したんじゃないかい?」
だんだん、どうして鳴神くんがあやかしに関してあたりが厳しいのかがわかってきた気がする。
日吉さんたちまほろば荘に住んでいるようなあやかしは、皆人間に対して寄り添ってくれているけれど、他のあやかしがそうとは限らない。
鳴神くんは日頃から文字通り雷をバンバン落とすから、私もしゃべるだけで静電気を浴びせられて痛い痛いとしていたけれど、もしかして一番気を遣っていたのは彼なのでは。
全部憶測だし、本当のところは鳴神くんに聞かないと駄目だけれど。でも。
「……鳴神くんが私にしんどい思いをして欲しくないって、その気持ちはわかりましたけど、本当になんもしてない妖怪の野平さんはどうすればよかったんですか……?」
彼女はもっと怒っても悲しんでもよかったはずなのに、まるで慣れっこのようだった。ううん。大事なものを燃やされたり壊されたり、野平さん本人だって火傷負ってたのに、そんなの慣れる訳ないじゃない。
ただ、もう痛いのも悲しいのも嫌だから、感覚を麻痺して、もう慣れてますと諦めているだけじゃない。
鳴神くんと野平さんのつらさは、全部別物のはずなのに。
私の言葉に、日吉さんは「ふう」と息を吐いた。
「うん。さすが花子さんたちの孫だ」
「はい?」
「花子さんも、たびたびまほろば荘に難癖を付けてくる連中に対して、似たような啖呵を切って追い返していたからな。『つらい理由をどうか押しつけないで欲しい。あなたのつらさを理解できないけれど、こちらだってつらいことはある。あなたがつらいのはわかるけれど、どうかそれを自分に求めないでくれ』ってな」
「おばあちゃんも……」
「もし彼が自己満足で引き起こしたことだったら、もしかすると俺でも止めることができないかもしれん。だが、もしわずかばかりにでも三葉さんのためが含まれているんだったら、お前さんの声ならば届くだろうさ。そら、まほろば荘が見えてきた」
どういう理屈か、日が傾くにつれ、まほろば荘は霧がかってきた。今まで霧が町にかかっているところなんて見たことがないから、その幻想的な光景を呆気に取られて見てしまう。
「どういうことなんでしょう……?」
「何度か話したと思うが、この辺り一帯は現世と幽世が曖昧になっている。ご近所さんがどれだけ騒音被害を警察に相談しても見つけられないのは、現世の住民はそう簡単に幽世の事件を目撃することができないからだな。それに、ここだったらどれだけ物が壊れても、現世に戻ったら元に戻っているだろうさ」
「あの……だったら野平さんの店……大丈夫ですかね?」
私が見た限り、商品が燃えてしまって、お店も少し燻ってしまっていた。せめて……明日もお店ができるようにって思うんだけれど。
それに日吉さんはなにも答えず、私を降ろした。
「多分野平さんが怪我しているんだから、もうしばらくしたら楠さんが薬を売りに来るだろうさ。それを受け取って彼女を手当てしておあげ」
「……野平さん、やっぱり普通の病院じゃ見てもらえないんですかね」
「妖怪だとばれてもかまわないんだったら診てもらえるとは思うが」
「わっわっ。なら私、頑張って手当てします!」
私はそう言いながら、野平さんの店に戻ろうとする最中、日吉さんが飛んでいった方角を見た。風と雷が吹き荒れて、人間の私ではとてもじゃないけれど太刀打ちできそうもない場所。
私はそれを歯がゆく思いながらも、一旦野平さんの元へと急いだ。
****
生まれたときから、癇癪を起こして泣き出したとき、電化製品を駄目にしてしまうほどの静電気を発生させる癖がついた。家の人間は困惑して、俺を連れてお祓いに行ったらしい。そのとき、お祓いをしてくれた宮司さんが言ったらしい。
「この子は雷神様の加護がついています」と。
なにが加護なもんか。電化製品を壊すような静電気が、加護である訳がない。幸い家族は俺を捨てることはなかったけれど、遠巻きにするようになってしまった。
友達と取っ組み合いの喧嘩になったとき、腹が立って静電気を落としたら、「痛い痛い」と泣かれてしまった。そのときになって、初めて親にものすごく怒られた。
「ワンちゃんだって人に噛み付いたら保健所に連れて行かれてしまうでしょう!? 人が痛いってことをしたら、雷神様であっても駄目よ!?」
俺はその辺りから、少しずつ静電気の使い方を勉強するようになった。
でも。静電気は感情が高ぶったら出てしまう。それが人を傷付けてしまう……正確には人を「痛い痛い」と泣かせてしまう。そんなつもりはなくっても。
その頃から、俺は努めて感情を出さないよう、高ぶらないようとコントロールしなくちゃいけなくなった。ローテンションとかダウナーとか、そういうペルソナを被らなかったら、とてもじゃないけれど感情制御を維持できず、静電気を止めることもできなかった。
でも、俺はある日、この世界はふたつの世界が折り重なっている場所があることに気付いた。たとえば神社の境内。少し歩いたら、全然違う場所に辿り着く。
そこが幽世で、幽世だったら俺が雷を出しても怒られることはなかった。俺は雷を出していたら、そこに住んでいる連中に、様々なことを教えてもらった。
曰く、この世には現世と幽世とあるらしい。
曰く、神や妖怪なんかはあやかしと呼ばれ、現世と幽世を行き来しているらしい。
曰く、今は立地の問題でどんどん神社がなくなってしまって、現世と幽世の境が曖昧になってしまって、その辺りを大妖怪が仕切るようになってしまって、そうじゃない妖怪は居場所を追われるようになっつぃまったらしい。弱い妖怪なんかだとその隙間に挟まっているよりも現世で大人しく暮らしていたほうが楽になったらしい。
曰く、たまにあやかしが人間を気に入って、幽世に連れ帰ってしまうことがあるらしい。そういうのは神隠しと呼ばれ、そのまんま一緒に暮らしていることもあれば、すぐに離婚して現世に捨てられてしまうこともあるらしい。
教えてくれた連中は、俺を気の毒なものを見る目で見てきた。
「兄ちゃんは、多分雷神の先祖返りだなあ……」
「……先祖返りってなんだ? 俺の先祖は……」
「多分だけれど、兄ちゃんの先祖を現世に捨てちまったんだろうなあ……」
イラッとしたのはその辺りからだった。
幽世で大人しく暮らしているあやかしなんかはまだいいけれど、現世で好き勝手に生きている奴はろくなもんじゃない。
その頃から、俺はお土産屋で木刀を買って、夜な夜な妖怪退治を行うようになった。現世にいる妖怪は帰れ。幽世に引っ込んでろ。
そんな生活を続けている中、高校に進学した。
俺は静電気を抑えるために、ひたすらダウナーなペルソナを被っていたところで、変な同級生に出会った。俺が静電気を出しても出さなくっても、態度の変わらない女子だった。
「……どうして態度変わらないの?」
「おばあちゃんはよく言ってるよ。人が変えられないようなものをからかったら駄目だって。鳴神くん、静電気ひどいだけで、なんにも悪いことしてないじゃない」
そうあっさりと言ってのけた女子に、俺は目を瞬かせた。
彼女からは、ときどき本当にときどきあやかしの匂いがするけれど、彼女自身は普通の人間みたいで、俺がひくひく鼻を動かすときだけ嫌がるけれど、それ以外は俺への対応はなんにも変わらなかった。
こういう子もいるんだな。そう落ち着いていたのに。
だんだん彼女のあやかしの気配がきつくなっていくことに気付いた。
俺は自分の先祖のことを考えた。どうして雷神は、俺の先祖をポイ捨てしたのかは知らない。ただ、そいつは勝手だったんだ。
現世をうろうろしているあやかしに、いい奴なんている訳がない。
俺はこっそりと彼女のあとをつけて、彼女の住所を探した。そこで見つけてしまったんだ。
明らかに作り物の顔の妖怪と彼女……小前田が一緒にいるところを。
彼女を守らないと。そう思ったら、握る木刀に力が入った。
あやかしは嫌いだ。勝手だ。好きにさらってきて、最終的にポイ捨てするような奴らに……あの子を傷付けさせない。
「あのう……本当にごめんなさい。私が鳴神くんを……」
「ふーむ、これは不幸な行き違いだなあ」
「ええ……?」
「おそらくは、その雷神の先祖返りは、三葉さんを心配して守りたかっただけだと思うぞ?」
「ええ…………?」
そんなこと言われてもと、私は困惑してしまう。日吉さんは走るスピードを緩めずに、淡々と説明してくれた。
「大昔……それこそ今では平安時代って呼ばれる時代から、妖怪は人間にとって驚異だったし理不尽だった。時の帝が討伐軍を出すまで、都から気に入った人間をさらっていったという話はよくある話だった」
「でも……それって昔の話ですよね? 今じゃないですよね?」
「でもお前さん、神隠しって知らないかい?」
「ええ……?」
唐突に話が変わって、私は裏声を上げてしまうけれど、日吉さんは気にすることなく、それについても説明をくれた。
「神隠し。基本的に鬼が隠せば鬼隠し、天狗が隠せば天狗隠しになるんだが、それは置いておいて。基本的に今でも気に入った人間を妖怪や神がさらっていってしまうということはよくある。それこそ、その雷神の先祖返りの彼だって、それがなかったら生まれてないからなあ」
「え……そういえば鳴神くんは雷神の先祖返りだって、扇さんは教えてくれましたけど……」
「あんまりひとのことを詮索するのはよろしくないが。基本的に雷神は空にいるし、あんまり現世に現れないんだ。でも稀に気に入った人間の元に降りていって、そのまんまさらっていってしまうことがある」
「あれ? でもそれだったら気に入られた人……さらわれっぱなしですよね?」
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だんだん、どうして鳴神くんがあやかしに関してあたりが厳しいのかがわかってきた気がする。
日吉さんたちまほろば荘に住んでいるようなあやかしは、皆人間に対して寄り添ってくれているけれど、他のあやかしがそうとは限らない。
鳴神くんは日頃から文字通り雷をバンバン落とすから、私もしゃべるだけで静電気を浴びせられて痛い痛いとしていたけれど、もしかして一番気を遣っていたのは彼なのでは。
全部憶測だし、本当のところは鳴神くんに聞かないと駄目だけれど。でも。
「……鳴神くんが私にしんどい思いをして欲しくないって、その気持ちはわかりましたけど、本当になんもしてない妖怪の野平さんはどうすればよかったんですか……?」
彼女はもっと怒っても悲しんでもよかったはずなのに、まるで慣れっこのようだった。ううん。大事なものを燃やされたり壊されたり、野平さん本人だって火傷負ってたのに、そんなの慣れる訳ないじゃない。
ただ、もう痛いのも悲しいのも嫌だから、感覚を麻痺して、もう慣れてますと諦めているだけじゃない。
鳴神くんと野平さんのつらさは、全部別物のはずなのに。
私の言葉に、日吉さんは「ふう」と息を吐いた。
「うん。さすが花子さんたちの孫だ」
「はい?」
「花子さんも、たびたびまほろば荘に難癖を付けてくる連中に対して、似たような啖呵を切って追い返していたからな。『つらい理由をどうか押しつけないで欲しい。あなたのつらさを理解できないけれど、こちらだってつらいことはある。あなたがつらいのはわかるけれど、どうかそれを自分に求めないでくれ』ってな」
「おばあちゃんも……」
「もし彼が自己満足で引き起こしたことだったら、もしかすると俺でも止めることができないかもしれん。だが、もしわずかばかりにでも三葉さんのためが含まれているんだったら、お前さんの声ならば届くだろうさ。そら、まほろば荘が見えてきた」
どういう理屈か、日が傾くにつれ、まほろば荘は霧がかってきた。今まで霧が町にかかっているところなんて見たことがないから、その幻想的な光景を呆気に取られて見てしまう。
「どういうことなんでしょう……?」
「何度か話したと思うが、この辺り一帯は現世と幽世が曖昧になっている。ご近所さんがどれだけ騒音被害を警察に相談しても見つけられないのは、現世の住民はそう簡単に幽世の事件を目撃することができないからだな。それに、ここだったらどれだけ物が壊れても、現世に戻ったら元に戻っているだろうさ」
「あの……だったら野平さんの店……大丈夫ですかね?」
私が見た限り、商品が燃えてしまって、お店も少し燻ってしまっていた。せめて……明日もお店ができるようにって思うんだけれど。
それに日吉さんはなにも答えず、私を降ろした。
「多分野平さんが怪我しているんだから、もうしばらくしたら楠さんが薬を売りに来るだろうさ。それを受け取って彼女を手当てしておあげ」
「……野平さん、やっぱり普通の病院じゃ見てもらえないんですかね」
「妖怪だとばれてもかまわないんだったら診てもらえるとは思うが」
「わっわっ。なら私、頑張って手当てします!」
私はそう言いながら、野平さんの店に戻ろうとする最中、日吉さんが飛んでいった方角を見た。風と雷が吹き荒れて、人間の私ではとてもじゃないけれど太刀打ちできそうもない場所。
私はそれを歯がゆく思いながらも、一旦野平さんの元へと急いだ。
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生まれたときから、癇癪を起こして泣き出したとき、電化製品を駄目にしてしまうほどの静電気を発生させる癖がついた。家の人間は困惑して、俺を連れてお祓いに行ったらしい。そのとき、お祓いをしてくれた宮司さんが言ったらしい。
「この子は雷神様の加護がついています」と。
なにが加護なもんか。電化製品を壊すような静電気が、加護である訳がない。幸い家族は俺を捨てることはなかったけれど、遠巻きにするようになってしまった。
友達と取っ組み合いの喧嘩になったとき、腹が立って静電気を落としたら、「痛い痛い」と泣かれてしまった。そのときになって、初めて親にものすごく怒られた。
「ワンちゃんだって人に噛み付いたら保健所に連れて行かれてしまうでしょう!? 人が痛いってことをしたら、雷神様であっても駄目よ!?」
俺はその辺りから、少しずつ静電気の使い方を勉強するようになった。
でも。静電気は感情が高ぶったら出てしまう。それが人を傷付けてしまう……正確には人を「痛い痛い」と泣かせてしまう。そんなつもりはなくっても。
その頃から、俺は努めて感情を出さないよう、高ぶらないようとコントロールしなくちゃいけなくなった。ローテンションとかダウナーとか、そういうペルソナを被らなかったら、とてもじゃないけれど感情制御を維持できず、静電気を止めることもできなかった。
でも、俺はある日、この世界はふたつの世界が折り重なっている場所があることに気付いた。たとえば神社の境内。少し歩いたら、全然違う場所に辿り着く。
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曰く、神や妖怪なんかはあやかしと呼ばれ、現世と幽世を行き来しているらしい。
曰く、今は立地の問題でどんどん神社がなくなってしまって、現世と幽世の境が曖昧になってしまって、その辺りを大妖怪が仕切るようになってしまって、そうじゃない妖怪は居場所を追われるようになっつぃまったらしい。弱い妖怪なんかだとその隙間に挟まっているよりも現世で大人しく暮らしていたほうが楽になったらしい。
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「……先祖返りってなんだ? 俺の先祖は……」
「多分だけれど、兄ちゃんの先祖を現世に捨てちまったんだろうなあ……」
イラッとしたのはその辺りからだった。
幽世で大人しく暮らしているあやかしなんかはまだいいけれど、現世で好き勝手に生きている奴はろくなもんじゃない。
その頃から、俺はお土産屋で木刀を買って、夜な夜な妖怪退治を行うようになった。現世にいる妖怪は帰れ。幽世に引っ込んでろ。
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「……どうして態度変わらないの?」
「おばあちゃんはよく言ってるよ。人が変えられないようなものをからかったら駄目だって。鳴神くん、静電気ひどいだけで、なんにも悪いことしてないじゃない」
そうあっさりと言ってのけた女子に、俺は目を瞬かせた。
彼女からは、ときどき本当にときどきあやかしの匂いがするけれど、彼女自身は普通の人間みたいで、俺がひくひく鼻を動かすときだけ嫌がるけれど、それ以外は俺への対応はなんにも変わらなかった。
こういう子もいるんだな。そう落ち着いていたのに。
だんだん彼女のあやかしの気配がきつくなっていくことに気付いた。
俺は自分の先祖のことを考えた。どうして雷神は、俺の先祖をポイ捨てしたのかは知らない。ただ、そいつは勝手だったんだ。
現世をうろうろしているあやかしに、いい奴なんている訳がない。
俺はこっそりと彼女のあとをつけて、彼女の住所を探した。そこで見つけてしまったんだ。
明らかに作り物の顔の妖怪と彼女……小前田が一緒にいるところを。
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