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人属編-33

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「では、皆さん気を取り直してぜひミレイの演奏をお聞きくださいませんか?」

ナターシャ様が両手をパチンと胸の前でたたき、さ!お祝いの席ですし!と笑顔でとりしきってくれた

「ぜひ聞きたいですわ」
「まぁミレイ様!どれほど上達したのでしょう!」

あちこちで拍手があがる

とことことミレイ様が歩いてきて、みんなの前でペコリと頭を下げる

「お兄様、ケリー様、この度はご結婚おめでとうございます。お祝いに一曲お聞きください」

ガラガラガラと中庭に大きなグランドピアノが運ばれてくる

すげ!!あれはいいやつだ!!
何人もの人が運び調節し準備をし、椅子の高さを合わせてミレイ様がスタンバイする



聞いたことのない曲だが、上手い!

だいぶ練習したんだろう、難しいところも難なくこなしている

少し間違えるたびに、ナターシャ様の指がピクピクと動く
ピアノを理解して弾いている人しかわからないミスに気付いているということはナターシャ様もかなり弾くんだろう

それでも数分の演奏も疲れずに余裕をもって最後まで弾ききるミレイ様

13歳っていったよね。すごい!

さすが王族
たしなみとしてなんでもこなすんだろうか

大きな拍手が沸き上がる
くそ親父の空気がかわっただけでありがたい


「すばらしい!上達したなミレイ!」
シドニー王が大きなおなかを揺らしながら、拍手をして登場した

「おとう・・・陛下!もったいないお言葉、ありがとうございます」
ミレイ様がスカートの端を持ち、淑女の礼をする

「たくさん練習したんだな、よくわかるぞ」
頭に大きな手をのせてよく頑張ったなとなでている


そうそう・・ああいう親が理想だよね
ミレイ様すんごいうれしそうだし

あたしもジアンと一緒に拍手を送る
素敵だったな~
兄妹に送る曲とか・・・最高だわ



「そういえば、マキア様もお上手だとお聞きしましたが?」


え・・・


周りの視線が集まる

ナターシャ様がにっこりと微笑まれている

なんだろうこのざわざわした感じ
笑顔から何の感情も読めない

興味?というよりは、挑戦的な・・?

ナターシャ様とはほとんど接点はないけど・・なにかした?あたし

「そうなのか?ぜひ聞きたいものだな!!」
シドニー王が屈託なく笑っている

え、なになにこの感じ
もしかして弾くの?!ここで?!

「いえ、あの・・・お聞かせするほどのものでもございませんので」
丁重にお断りする

「ご謙遜を。獣人地区ではかなり人気だとか」
ナターシャ様の追い打ち


何情報?


どこからそんな話を・・・


「まぁまぁ!あまり気負いせず何か王子のために祝いの一曲弾いてはくれんかね!」

シドニー王にそこまで言われたら・・・
ジアンが手を握ってくれる

見上げると眉毛を下げて困った顔をしているが、弾けるか??と言っているようだ

はぁ・・まてまて
王族の前で弾くとか、マジでそんな腕前してないんだけど

パニクルな・・・どうしよう

祝いの曲?愛の喜びとか・・ブランデンブルクとか・・
難しいの弾いて失敗したら

「アイネクライネナハトムジーク・・・」
これなら弾ける
比較的簡単だし


「ミスしたらごめんね」
ジアンにこしょっと耳打ちした

「問題ない。気楽にひいてこい」
笑って送り出してくれた


ピアノの前に立ってペコリと頭を下げてから挨拶を言う

「この度はご結婚おめでとうございます。お耳汚しいかもしれませんが、お祝いの曲を贈らせていただきます」
ふーっと息を吸ってはく

アイネクライネナハトムジークは、中級くらいからの楽譜がアレンジ曲としてたくさん出ている

さすがにレベルの低いものは・・・曲として見栄えもないし

早めのテンポで和音をたくさん使ってやってみるか

鍵盤に指を置く
深呼吸をして緊張を和らげる

ふぅ・・・



~~!~~!~~~~~!!♪

~~!~~!~~~~~!!♪


最初は前世の人ならだれでも聞いたことがあるようなあのフレーズ
両手でオクターブ音階を弾いて、強調を高くする



で、こっから・・・


~~~~~~~~♪

~~~~~~~~♪


高速の左手の指の動き
右手はさほど難しくないんだけどね

早めの動きでちょっとカッコよく「え!?」って感じに聞こえるというw

トリルを使いまくって、音を響かせる

~~~~~~~~♪

~~~~~~~~♪

中盤はあまり楽しくないリピートも多いし
ちょっとアレンジもいれて難しくしちゃおう

~~~~~~~~♪

~~~~~~~~♪

速弾きは得意

この自由に動く指の動きが
適確に音階をなぞって、正確な音楽を奏でる

それを自分が作っていると思うと高揚感が否めない
気分がいい

~~~~~~~~♪

~~~~~~~~♪

和音の連打はこの小さい手にはきついけど
気合で乗り切る



最後は超高速で左指を動かして・・・・しめ!



~~~~!!!!




「はぁはぁ・・・」
息するの忘れてたww

ああ~めっちゃ気持ちい!!
ミスなかったよね~

暗譜だぜ?!(アレンジしまくったけどww)



「・・・!!」
はっと我に返る


やばい・・王様の前だ・・

ギギギ・・・と首を動かして周りを見渡すとみんな固まっている


すぐに立ち上がって「あ、あの、お聞きいただきましてありがとうございます!!」
ペコリと頭を深く下げた

「すばらしい!!!」
シドニー王が大きな声でほめてくれて拍手してくれた

周りもなぞって拍手をくれた

大丈夫なやつかな・・・
なんか失敗した??

レベル的にはミレイ様と同じくらいだと思うんだけど・・

すぐにジアンの元へ戻る
「素晴らしかったマキア。また上達したんじゃないか?」

「え!そんなことないよ。変わらない。毎日弾かせてもらっているから指が動いただけだよ」
大丈夫みたいだ・・・


弾くのは好きだけど、緊張するからこういう重圧が大きいのは勘弁してほしい


汗が・・・
ピアノを弾くって体力使うんだよね意外と

あぁ・・ドキドキした
でも雰囲気がよくなれば・・何よりだわ
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