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転生編-sideリンク

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お父様が死んだ

お葬式の日も雨
一緒に泣いてくれるかのように、たくさんの雨が降った

その日から世界に色がなくただただ毎日を生きているだけだった


お母様からも笑顔が消えた

どうやって笑っていたかもわからなくなった

ジアンやガロ、シェイクは毎日だれかしら来てくれて
数か月後には仕事にも復帰できるようになった

何かすることで思い出さないというのはよかったのかもしれない


でも毎日同じ
仕事をして帰って寝て

なんで生きているんだっけ?って夜中に思い出しては寝られなくなる






その日はリッタさんのお店にご飯を食べに行った

なんかいい匂いがする・・・

甘い香りがどこか懐かしいような

子供がパタパタと駆け回っている


「マキアと申します。よろしくお願いします」


マキア・・・
あぁ、確かジアン達がいっていたな

あまり他人には興味がないからあんまり聞いてなかったけど

「リッタさん、僕あれ食べたい。ジャムってやつ」

とりあえずうまいからくっとけとガロに言われたけど、本当かな
ガロはなんでもおいしいってしかいわないじゃん


そういえば昔はお父様とお母さまと三人でよくピクニックにいったな

お母様の料理がおいしくて、いつもたくさん食べていた

「リンク、これカップケーキっていってね、新作なのよ」
リッタさんが何やら小さい茶色いものを持ってきた

プランケタがカップにはいったかのような

でも甘いにおいがする
バターのいい香りだ


リッタさんの料理はどれもおいしいからきっとこれも・・・

一口食べて衝撃が走った
なんだこれ・・こんなの初めて食べた

「・・・おいしい」

最近本当に何を食べても味がしなかったけど
・・・おいしい

からだに広がる満足感
鼻から抜けるバターがまた食べたくなる

リッタさんもマキアってこもおいしい~とニコニコしている
親子みたいにハイタッチして楽しそうだな

この子が作ったの?
まさか・・・そんなわけないか


あれ・・・もうない


「リッタさん、もう一個ない?」

何かを食べたいなんて思ったの久しぶりだ

なんだろう
美味しいって・・・こういうことか


モグモグモグ・・・

おいしい

おいしい

「リンクさん、これもどうぞ」

マキアがミルクを持ってきてくれた

なにこれ
フラーグム入りのミルクだ・・・

おいしい

身体に力が入る
違う・・身体に力が戻る感じだ


まだあるのかな?売ってるのかな?全部ほしいと思ったがまだ試作品といわれた

三日後に販売・・・
よしそれに合わせてまたこよう

今日はサンドイッチのテイクアウトで我慢しよう

食べ終わるとすごい満腹になった
久しぶりにこんなに食べた

食も細くなっていたからか・・・

でもカップケーキならいくつでも入りそうだったな



食べ物で回復とか僕もげんきんだな~とか思ったけど
それだけおいしかった


帰り際、横にいたマキアから甘いにおいがした

なんだろう
バターの匂い??

「・・・」

チラチラ見てしまう
ただの小さな10歳くらいの女の子

「なんか君・・・」バターのにおいするよってのは・・女の子にいったら失礼?


言いかけてやめた


でも
この匂いは好き


いい匂い





またこよう




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