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31.曇天ライブハウス4
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今表口に犯人か、もしくは火が迫っているのか裏口にも人々が来ている。
裏口に向かって雪崩れ込む様に人々が迫り来る。
心臓がバクバク鳴って、足がまったく動かない。
怖くて、怖くて、声も出せない。
周りの人々が押し合い、煙を見て悲鳴を上げる。
私はごほごほと咳をしながらハンカチを口に当てて床にしゃがみこんでしまった。
膝がガクガク震えて、這うしかない。
地面に落ちているまだ少し燻っている吸い殻が目に止まる。
なんでこんな目に遭っているのだろうか。
手と膝で這いずりながら、なんとか立ち上がろうと必死で体を持ち上げる。
「……あ、あぁ……」
思わず小さな声が漏れる。腕の力も足の力も、全部恐怖に吸い取られたみたいに重い。
煙が目に染みて、痛い。
「小春!」
楓の声が近くで響いた。前を走っていた彼は迷うことなく私の方に背に手を回し、抱き上げた。
彼の温かさに一瞬目を見開いたが、なにも伝えるそんな余裕はない。
楓はそのまま、私を抱き上げて走り出す。
出口の光と、サイレンと大丈夫ですか‼︎と警察だろうか?透明盾を持った人が代わりに入り込んだ。
犯人を目指して、叫び声の間を駆け抜けて、ホースを持った消火しようとしている消防士と共に入っていく。
ライブハウスの中は、何かが焦げたような煙がしている。
タバコの匂いが混ざった独特の煙臭さで充満している。
誰かが誤って、落としたのか。
視界を少し霞んでくる。息をするたびに肺が痛むけれど、それでも楓に抱えられて逃げるしかない。
「……楓……早く……」
私は震える声で呼びかける。彼の力強い腕に支えられながら、出口の光が少しずつ近づいた。
恐怖で足が動かない自分を、楓がそのまま運んでくれる。この安心感と、同時に迫る狂気の恐怖が、胸をぎゅうっと締めつける。
ようやく煙の渦の中から抜け出した。外の冷たい空気が肺に飛び込んでくる。
新鮮な空気に安堵した。
「ふう……ごほっこほ」
咳が止まらない。
ゴホゴホ、ゴホゴホと何度も咳をした。喉が空咳だからか痛い。
視界が揺れて、頭がフラフラと重くなる。
「楓……」
もう大丈夫よ?と声を出そうとしたけれど、喉が上手く動かない。冷たい風が頬に当たるたび、体の力が抜けていった。
「……小春?」
「今すぐ、搬送します!」
楓の優しい声と救急隊だろうか?人の声が耳に届くけれど、遠く、遠く感じる。
手が触れているのはわかる。温かさがわずかに伝わる。でも、体が言うことを聞かない。
ただ、眠かった。
ゴホッ、ゴホッ……さらに咳き込んだ。
目の前の光がぼやけて、世界がゆっくり、ゆっくりと遠ざかる。
なにかを口元に当てられて呼吸が楽になったと思った。
声がもう出ない。
次の瞬間、体の力が抜けて、膝から崩れ落ちるように意識が闇に沈んでいった。
裏口に向かって雪崩れ込む様に人々が迫り来る。
心臓がバクバク鳴って、足がまったく動かない。
怖くて、怖くて、声も出せない。
周りの人々が押し合い、煙を見て悲鳴を上げる。
私はごほごほと咳をしながらハンカチを口に当てて床にしゃがみこんでしまった。
膝がガクガク震えて、這うしかない。
地面に落ちているまだ少し燻っている吸い殻が目に止まる。
なんでこんな目に遭っているのだろうか。
手と膝で這いずりながら、なんとか立ち上がろうと必死で体を持ち上げる。
「……あ、あぁ……」
思わず小さな声が漏れる。腕の力も足の力も、全部恐怖に吸い取られたみたいに重い。
煙が目に染みて、痛い。
「小春!」
楓の声が近くで響いた。前を走っていた彼は迷うことなく私の方に背に手を回し、抱き上げた。
彼の温かさに一瞬目を見開いたが、なにも伝えるそんな余裕はない。
楓はそのまま、私を抱き上げて走り出す。
出口の光と、サイレンと大丈夫ですか‼︎と警察だろうか?透明盾を持った人が代わりに入り込んだ。
犯人を目指して、叫び声の間を駆け抜けて、ホースを持った消火しようとしている消防士と共に入っていく。
ライブハウスの中は、何かが焦げたような煙がしている。
タバコの匂いが混ざった独特の煙臭さで充満している。
誰かが誤って、落としたのか。
視界を少し霞んでくる。息をするたびに肺が痛むけれど、それでも楓に抱えられて逃げるしかない。
「……楓……早く……」
私は震える声で呼びかける。彼の力強い腕に支えられながら、出口の光が少しずつ近づいた。
恐怖で足が動かない自分を、楓がそのまま運んでくれる。この安心感と、同時に迫る狂気の恐怖が、胸をぎゅうっと締めつける。
ようやく煙の渦の中から抜け出した。外の冷たい空気が肺に飛び込んでくる。
新鮮な空気に安堵した。
「ふう……ごほっこほ」
咳が止まらない。
ゴホゴホ、ゴホゴホと何度も咳をした。喉が空咳だからか痛い。
視界が揺れて、頭がフラフラと重くなる。
「楓……」
もう大丈夫よ?と声を出そうとしたけれど、喉が上手く動かない。冷たい風が頬に当たるたび、体の力が抜けていった。
「……小春?」
「今すぐ、搬送します!」
楓の優しい声と救急隊だろうか?人の声が耳に届くけれど、遠く、遠く感じる。
手が触れているのはわかる。温かさがわずかに伝わる。でも、体が言うことを聞かない。
ただ、眠かった。
ゴホッ、ゴホッ……さらに咳き込んだ。
目の前の光がぼやけて、世界がゆっくり、ゆっくりと遠ざかる。
なにかを口元に当てられて呼吸が楽になったと思った。
声がもう出ない。
次の瞬間、体の力が抜けて、膝から崩れ落ちるように意識が闇に沈んでいった。
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