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第4章 魔術学園奮闘編
第382話 自然界には秩序と法則があるべきだ。
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「俺が得たビジョンの中で、ナーガは宇宙に匹敵する大きさでした」
「うん。君のビジョンはイデア界の本質に近づいているはずだから、本来大きさや時間には意味がない。宇宙は大きいものだというイメージがあるために、ナーガも巨大なものとしてビジョン化したのだろう」
何かがきっかけとなってステファノにとってのイデア界が「蛇」のイメージと結びついたものか?
しかし、それならば、なぜ他人のギフトにまで蛇のイメージがつきまとうのか?
「俺のイメージが先生やドリーさんのギフトに影響するとは思えません。ドリーさんの蛇の目に至っては俺と出会う前に発現したものですから」
ステファノは頭を振った。
「そこは君の言うとおりだね。イデア界が時間の制約を受けないという性質を拡大解釈すれば、過去に遡って影響を与えることもありえなくはないが……」
「そこまで行くと因果の意味がなくなりませんか? 結果が原因に先んじることになります」
過去の対象物に魔術をかけることまでできてしまわないか。さすがのステファノにも想像できない世界観であった。
「たしかにそうだね。自然界には秩序と法則があるべきだ。そうでないと美しくないからね」
ドイルは己の信念にあくまでも忠実であった。
「達成者の要素が影響しているのかもな」
「願望達成能力ですか?」
「君のギフトが数ある選択肢の中から『蛇』にまつわる相手を探し出すのかもしれない」
「それは……一体何のために?」
目標はどこにある? 蛇を集めてどうするのか?
「目標を定めているのは君ではないのだろう」
「俺でないとしたら一体誰が?」
「神の如きもの」
当惑するステファノにドイルは告げた。
「理由も方法も見当がつかん。しかし、ギフトの管理者である神の如きものが、ある属性を有する者たちに『蛇』の称号を与えているのではないか?」
「俺たちは自分の意志ではなく、そいつの意志で出会いを強制されていると?」
「仮説に過ぎないがね」
神の如きものはまだ出会う前からステファノたちの行動に影響を及ぼしていることになる。なぜ彼らを選び、出会わせようとしているのか?
その先において何をさせようとしているのか?
「共通項があるとすれば、やはりルネッサンスでしょうか?」
「可能性はある」
「彼はルネッサンスを求めていると?」
「結論するには時期尚早だ。『ルネッサンスを巡る争い』を求めている可能性もある」
「それは……」
あまりにも悪意に満ちている。ステファノはそう言おうとして言葉を止めた。
「もしそうであれば、我々はルネッサンスの追求をやめたほうが良いのでしょうか?」
ステファノは心の迷いを口にする。
「さて、それはどうだろうな?」
「旦那様……」
「他人の思惑ばかり気にしていては事はなせない。我々の行動は我々自身が決める。それで良い」
ネルソンの言葉には信念が籠もっていた。たとえ何者であろうと、自由意志を奪わせはしない。その決意が体を満たしていた。
「僕の仮説が正しいとすれば、『彼』はそれだけの現実干渉力を持っているということだ。これからはギフトと魔力に関する出来事に十分な注意を向ける必要があるね」
「ステファノはもっと慎重になるべきだろうな」
ドイルの分析に対してネルソンはステファノの名を挙げて注意を促した。
「ギフトの鍛錬や魔道具の開発など、イデアの可能性を広げようと試みる際には信頼できる人間に相談しなさい」
「暴走や悪影響を防ぐためですね」
術式複写の例を経験したばかりであった。
「こちらにいる間は旦那様たちに相談できますが、アカデミーに戻ってからはどうしましょう?」
「基本はドリーという女性を頼らせてもらいなさい。そこで判断がつかない場合は、ドイルのところへ」
「ドイルで大丈夫でしょうか? 一緒になって危険なテーマに飛びつきそうですが」
マルチェルはネルソンほどにはドイルを信用していないようだった。少なくとも研究開発に関する良識の面では。
「仕方あるまい。アカデミー内部にいてステファノの話を聞けるのは、ドイルしかおらんからな」
「この男1人に任せるのは危険です。何かあれば常に我々と連絡がつくようにしておきましょう」
「学園内部にも『鴉』の目はあるのだったな」
「もちろんです。ステファノもギルモアの一員。『ギルモアあるところに鴉あり』」
マルチェルの言によれば、アカデミー内部にもギルモアの諜報網が張り巡らされているらしい。
「ドイル、くれぐれも独断専行を慎むのだぞ?」
「ふん。見張りつきの研究生活などぞっとしないが、ステファノのためと我慢しよう」
ドイルは渋々首を縦に振った。
「半分はお前のためでもあるのだがな」
「つくづく恩着せがましいことだ」
「自分が過去にしてきたことを振り返ってほしいものだ」
マルチェルは呆れたように言った。
「過去を振り返って何になる? 時間とはひとえに現実となった変化によって規定される。起きてしまった変化は元には戻らない。考えるべきは未来だ」
「未来を案ずるからこそ、お前を自由にしておけないのですがね」
「未来とは案ずるものではない。意志を以って創り出すものだ。既存の秩序をひっくり返そうという時は特にな」
ドイルの目は炯々と光を発していた。
――――――――――
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
◆次回「第383話 3月の研究報告会を楽しみにしていよう。」
「ドイルが言うことにも一理はある。だが、ステファノがアカデミーを卒業できるまでは十分な保護を与えてやれない。せめて卒業まで自重しろ」
ネルソンがドイルに引導を渡すように言った。
「まあ良いさ。2学期が終わるまでだな? 3月の研究報告会を楽しみにしていよう」
「それで結構だ。報告会が終われば後の日取りはおまけのようなものだ。堂々とステファノの周囲を警備で固めるさ」
……
◆お楽しみに。
「うん。君のビジョンはイデア界の本質に近づいているはずだから、本来大きさや時間には意味がない。宇宙は大きいものだというイメージがあるために、ナーガも巨大なものとしてビジョン化したのだろう」
何かがきっかけとなってステファノにとってのイデア界が「蛇」のイメージと結びついたものか?
しかし、それならば、なぜ他人のギフトにまで蛇のイメージがつきまとうのか?
「俺のイメージが先生やドリーさんのギフトに影響するとは思えません。ドリーさんの蛇の目に至っては俺と出会う前に発現したものですから」
ステファノは頭を振った。
「そこは君の言うとおりだね。イデア界が時間の制約を受けないという性質を拡大解釈すれば、過去に遡って影響を与えることもありえなくはないが……」
「そこまで行くと因果の意味がなくなりませんか? 結果が原因に先んじることになります」
過去の対象物に魔術をかけることまでできてしまわないか。さすがのステファノにも想像できない世界観であった。
「たしかにそうだね。自然界には秩序と法則があるべきだ。そうでないと美しくないからね」
ドイルは己の信念にあくまでも忠実であった。
「達成者の要素が影響しているのかもな」
「願望達成能力ですか?」
「君のギフトが数ある選択肢の中から『蛇』にまつわる相手を探し出すのかもしれない」
「それは……一体何のために?」
目標はどこにある? 蛇を集めてどうするのか?
「目標を定めているのは君ではないのだろう」
「俺でないとしたら一体誰が?」
「神の如きもの」
当惑するステファノにドイルは告げた。
「理由も方法も見当がつかん。しかし、ギフトの管理者である神の如きものが、ある属性を有する者たちに『蛇』の称号を与えているのではないか?」
「俺たちは自分の意志ではなく、そいつの意志で出会いを強制されていると?」
「仮説に過ぎないがね」
神の如きものはまだ出会う前からステファノたちの行動に影響を及ぼしていることになる。なぜ彼らを選び、出会わせようとしているのか?
その先において何をさせようとしているのか?
「共通項があるとすれば、やはりルネッサンスでしょうか?」
「可能性はある」
「彼はルネッサンスを求めていると?」
「結論するには時期尚早だ。『ルネッサンスを巡る争い』を求めている可能性もある」
「それは……」
あまりにも悪意に満ちている。ステファノはそう言おうとして言葉を止めた。
「もしそうであれば、我々はルネッサンスの追求をやめたほうが良いのでしょうか?」
ステファノは心の迷いを口にする。
「さて、それはどうだろうな?」
「旦那様……」
「他人の思惑ばかり気にしていては事はなせない。我々の行動は我々自身が決める。それで良い」
ネルソンの言葉には信念が籠もっていた。たとえ何者であろうと、自由意志を奪わせはしない。その決意が体を満たしていた。
「僕の仮説が正しいとすれば、『彼』はそれだけの現実干渉力を持っているということだ。これからはギフトと魔力に関する出来事に十分な注意を向ける必要があるね」
「ステファノはもっと慎重になるべきだろうな」
ドイルの分析に対してネルソンはステファノの名を挙げて注意を促した。
「ギフトの鍛錬や魔道具の開発など、イデアの可能性を広げようと試みる際には信頼できる人間に相談しなさい」
「暴走や悪影響を防ぐためですね」
術式複写の例を経験したばかりであった。
「こちらにいる間は旦那様たちに相談できますが、アカデミーに戻ってからはどうしましょう?」
「基本はドリーという女性を頼らせてもらいなさい。そこで判断がつかない場合は、ドイルのところへ」
「ドイルで大丈夫でしょうか? 一緒になって危険なテーマに飛びつきそうですが」
マルチェルはネルソンほどにはドイルを信用していないようだった。少なくとも研究開発に関する良識の面では。
「仕方あるまい。アカデミー内部にいてステファノの話を聞けるのは、ドイルしかおらんからな」
「この男1人に任せるのは危険です。何かあれば常に我々と連絡がつくようにしておきましょう」
「学園内部にも『鴉』の目はあるのだったな」
「もちろんです。ステファノもギルモアの一員。『ギルモアあるところに鴉あり』」
マルチェルの言によれば、アカデミー内部にもギルモアの諜報網が張り巡らされているらしい。
「ドイル、くれぐれも独断専行を慎むのだぞ?」
「ふん。見張りつきの研究生活などぞっとしないが、ステファノのためと我慢しよう」
ドイルは渋々首を縦に振った。
「半分はお前のためでもあるのだがな」
「つくづく恩着せがましいことだ」
「自分が過去にしてきたことを振り返ってほしいものだ」
マルチェルは呆れたように言った。
「過去を振り返って何になる? 時間とはひとえに現実となった変化によって規定される。起きてしまった変化は元には戻らない。考えるべきは未来だ」
「未来を案ずるからこそ、お前を自由にしておけないのですがね」
「未来とは案ずるものではない。意志を以って創り出すものだ。既存の秩序をひっくり返そうという時は特にな」
ドイルの目は炯々と光を発していた。
――――――――――
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
◆次回「第383話 3月の研究報告会を楽しみにしていよう。」
「ドイルが言うことにも一理はある。だが、ステファノがアカデミーを卒業できるまでは十分な保護を与えてやれない。せめて卒業まで自重しろ」
ネルソンがドイルに引導を渡すように言った。
「まあ良いさ。2学期が終わるまでだな? 3月の研究報告会を楽しみにしていよう」
「それで結構だ。報告会が終われば後の日取りはおまけのようなものだ。堂々とステファノの周囲を警備で固めるさ」
……
◆お楽しみに。
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