漫才:東京ジャンキー

藍染 迅

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漫才:東京ジャンキー

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 A:「教えてください! 東京のどこがいいんですか?」
 B:「何か始まったな。ちょっと聞いてみましょうか」
 A:「売れ始めた関西芸人とか、頭の悪いOLとか。みんな東京を目指すでしょう!」
 B:「まあ、憧れではありますよね」
 A:「どこがいいんですか? 何が得なんすか?」
 B:「とにかく何でもあって便利じゃないすか?」
 A:「はい、出ました! みんな言うんだよ。東京には何でもある」
 B:「実際そうだっぺ?」
 A:「『何でも』って何すか、『何でも』って? 東京に華厳の滝はねぇっぺ?」
 B:「そりゃそうだけど、ほかにいいとこが一杯あっぺよ?」
 A:「そういうとこ! そういう素直に過ちを認めねぇとこが、東京ジャンキーの悪いとこだっぺよ!」
 B:「何だ、その東京ジャンキーって?」
 A:「東京中毒だっぺ、おめぇなんかはもう。禁断症状が出ちまってんだよ!」
 B:「人を病人みたいに言うなよ」
 A:「わかったよ。そこまで言うんだったら、検査すっぺ」
 B:「何だ、検査って?」
 A:「ここに餃子があります」
 B:「え?」
 A:「皮のない具だけの餃子と、具のない皮だけの餃子。おめぇが食いてぇのはどっちの餃子?」
 B:「何だ、それ?」
 A:「チッ、チッ、チッ、チッ……」
 B:「ええ? えーと、具だけの餃子!」
 A:「わかりました。検査の結果は……」
 B:「結果は?」
 A:「東京ジャンキー陽性です!」
 B:「えっ? 何で?」
 A:「おめぇ、具だけの餃子を選んだっぺ? 皮はなくてもいいつったな?」
 B:「いや、なくてもいいってわけじゃねぇけど……」
 A:「皮はなくてもいい! 買わなくていい!」
 B:「え?」
 A:「何でもあっから、買わなくていい。はいっ! それ東京ジャンキーの考え方だっぺ!」
 B:「どういうことだ?」
 A:「危ねえ。危険だっぺ。おめ、停電になったら死んじまうっぺよ?」
 B:「いきなり極端だな。一問だけで決めつけんのは、強引だっぺ?」
 A:「いいでしょう。泣きの再検査、挑戦すっか?」
 B:「やってくれよ。このままじゃ納得いかねぇっぺ」
 A:「それでは第2問です。カレーだけのカレーライスと、ライスだけのカレーライスがあります」
 B:「どっちもカレーライスとは言えねぇけどな」
 A:「おめぇが食いてぇのはどっちのカレーライス?」
 B:「まあ、カレーだけのカレーライスかな?」
 A:「チッ、チッ、チッ、チッ……」
 B:「カウントする必要ねえべ? もう答えたんだから」
 A:「結果が出ました。東京ジャンキー……陽性です!」
 B:「また陽性かよ! どうして?」
 A:「ライスが要らねぇつって、見捨てられたコメ作り農家の気持ちを考えたことないでしょうが!」
 B:「質問のせいだろうが? 本当は普通のカレーライスが食いてぇんだよ!」
 A:「普通の? そんなこと言いながら、代官山で古代米のライスにチョコミント・カレーを掛けんだろうが!」
 B:「誰が食うんだよ、そんなカレー! 神田うのぐらいじゃねぇのか?」
 A:「はい、『神田』ー。ツッコミに東京が入ってるー。東京ジャンキー確定!」
 B:「もういい。やめさせてもらうわ」

(おわり)
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