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第一章 追放と仲間探し
13話「領主の娘は敗北し、尚も諦めない」
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本来ならば顔合わせだけで済ませるはずだったのだが、なにをどう間違えたのかアリスに決闘を挑まれると今現在では言わずもがな俺が圧倒的に優勢である。
「くっ……なぜですの!? なぜわたくしの剣が掠りもしないんですの!」
レイピアを上下に振り回したり時には突くような一撃必殺の技を繰り出しては、その尽くを俺に避けられて動揺を隠せないアリス。
「そりゃあ当然だろ。そんなに力任せで剣を振るっていては、当たるものも当たりはしないだろうな」
だがそれも至極当たり前のことであり今の彼女は初めて屋敷の者以外と剣を交えていて、その無敗を誇っていた圧倒的な自信が今まさに音を立てて崩れている最中だろう。
それを頷けるような証拠としては剣を交えて既に五分は経過しているが、最初の頃のアリスは余裕の笑みを浮かべてレイピアを振りかざしていたのだが、今となっては最早その面影すらもなく下唇を噛み締めて只管に雑な攻撃を仕掛けてきている始末だ。
「だがまあ……そうだな。やはり鍛え方次第ではお前は今よりも更に強くなれるかもな。さて、この茶番劇もそろそろ仕舞いとさせてもらおう」
剣を交えていた時間としては短いがその間に彼女の特性や苦手な箇所を大凡把握すると、この戦闘に関しての豊富な知識や慧眼の力は全てギフトに含まれていた能力に由来するものだろう。
じゃないとこんな仙人にみたいな思想や言葉は自然と出てこない。
なんせ俺はアマチュアニートを18年間も続けていた引きこもりだ。戦いなんぞずぶの素人よ。
「くっ……! わたくしは誰にも負けませんわぁぁあ!」
そう叫び声を上げながらアリスは単調にも真っ直ぐにレイピアを振りかざしてくる。
だが見るに彼女の体力は限界を迎えているようで、恐らくこれが最後の攻撃なのだろう。
「ふっ、一つだけアドバイスしてやる。感情を全て表に出すと人は最も力を発揮出来るが、同時に動きが脆くなるということをなァ!」
目先に迫り来るレイピアの動きを捉えると瞬時に右手の剣で攻撃を弾くと共にレイピアを空中に放り出し、そのまま川のように悠々と流れるような動作で左手の剣をアリスの首元へと刃先を押し付けた。これで茶番劇のような決闘は俺の勝利と言えよう。
「まっ……参りましたの」
「ふむ、そうだろうな」
彼女が自ら敗北を宣言したことで押し付けていた刃先を退けると二本の剣をゆっくりと鞘に収める。その際にアリスは全身の力が抜けたかのように地面に尻をつかせて表情が項垂れていた。
「それじゃ、俺はこのまま帰るから。ちゃんと王都から剣聖でも呼んで強くれなれよ」
そう軽く言うと右手を振りながらアリスから離れるように花畑を後にする。
最早この場所に要はなく残すはモーセルから印鑑を拝借してダイヤモンド級の冒険者に昇格するだけだ。ちゃんと手合わせもして正式にお断りしたのだから何も問題はないはず。
「これで漸く本題に移れ――――ぐぇっぁ!?」
突然として背骨辺りから迸る激痛。
何者からか体当たりを受けたような痛みを感じると共に顔面から地面へと突っ込む。
「ま、待ちなさいですわ!」
すると俺の背中からは先程敗北を喫したアリスの声が聞こえてきた。
一体どういう状況なのかと首を無理やり後ろに向けて様子を確認すると、
「なんだよ? まだ俺に何か用でもあるのか?」
彼女が頬を赤く染め上げて唇を尖らせたまま背中に跨っている光景が視界に映り込んだ。
それは見るからに勝負の有無に納得していない様子のものであるが……他にも何か別の意味がある気がしてならない。
「ええ、ありますわ。ありまくりですの! 貴方わたくしのお尻を泥だけの地面につけさせましたわね? これは立派に罪に問われますのよ」
そう言いながらアリスは何故か潤んだ瞳で俺を睨みつけてくる。
恐らく悔し涙というものを堪えているのだろう。プライドが高いお嬢様あるあるの一つだな。
「な、なんだよそれ……」
罪に問われるというのは絶対に嘘だと分かるのだが、取り敢えず泣いている女子を放置するのは心に響くものがあるので返事だけはしておく。
「よって今ここで貴方の処遇を決めます。アマデウスさん、貴方をわたくしの剣の師匠として認めますの!」
人差し指を威圧的に向けながらアリスは目尻を尖らせて言うと、それはとどのつまり俺から剣を教わるという意思表明のようなものであった。
しかしそれを聞いて当然だが俺はこの令嬢は一体何をおっしゃり申しているのかと反論する。
「は? いやいや、待ってくれ。俺はしっかりと断りを……」
「父様ーーっ! アマデウスさんに服を脱がされそうにーーっ!」
そうするとアリスは即座に助けを求めるようにして声を張り上げると、演技力を増すためにか少しだけ服を脱いで肩を露出させていた。
この令嬢、意外と策士かも知れないと思うが今はそれどころではない。
「ちょちょ待て待て! それは洒落にならない! 本当にまじで!」
池の方から般若顔で猪突猛進して来るモーセルの存在に気が付くと、このままでは別の罪に問われて今この場で首を跳ね飛ばされることになりかねないのだ。
「なら、お受けして頂けますの?」
妙に爽やかな笑みを浮かべて首を傾げているアリスだが……この女実はかなりの腹黒なのではと思えて仕方ない。
だがそうこうしている間に何処から取り出したのか槍の様な武器を手にしてモーセルは更に距離を縮めて来ると、
「ぐっ……わ、分かった。お前に剣を教える! だから今すぐに訂正しろ!」
これは俺が先に折れないと命を失い兼ねない事態に発展すると察して白旗を上げた。
「ふふっ、承知致しましたわ」
全てが計画通りと言わんばかりに彼女は怪し気な表情を一瞬だけ見せる。
「ふーっ! ふーっ! 貴様よくも僕の娘に手を出したなぁぁあ! 処刑だ! 処してやる!」
「ひぃぃやぁぁぁあ! 冤罪で死にとうないぃぃぃ!」
目の前に槍を構えたモーセルが姿を現すと息を鬼人の如く荒げていて、このままでは心臓を穿たれるのではと考えてしまい俺は自分でも分かるほどに情けない声を喉から出していた。
「父様、落ち着いて下さいまし。あれは嘘ですのよ」
アリスが落ち着きのある声色を出して彼に声を掛けると、自身が脱いで露出させていた肩を隠すように服を着直していた。
「嘘……それは本当なのかい?」
彼女の言葉を聞いて般若顔から人の顔へと徐々に戻り始めるモーセル。
「ええ、もちろんですの。それにただの冒険者如きがわたくしに触れる何て想像したくもありませんわ!」
そう強気に主張するアリスは自身を抱き締めるような仕草をしながら表情を引き気味にさせていたが、彼女は冒険者というものを下に見ているのだろうか?
確かに身分は怪しいものであり稼ぎも安定しないことから、世間一般的に見れば充分に俺達の存在は最下層の人間なのかも知れないが。
「そ、そうか。ならまあ別にいいんだが……」
モーセルは取り敢えず人の顔へと戻り冷静な思考を取り戻した様子である。
本当にその重厚な槍は何処から取り出した物なのか気になって仕方がない。
「ああ、それと父様? アマデウスさんが剣の扱いを教えて下さるようなので、大至急契約をお願いしますの!」
両手を合わせて一端のお嬢様のような軽やかな声を出すと、俺をこの場から絶対に逃がさないという意識の強さが垣間見れた。よもやアリスに跨られたまま俺は契約を結ばされるのだろうか。
「おお、それは実にいいね! ではアマデウスくん? さっそくだがこの書類に名前をお願いするよ」
満面の笑みで懐から一枚の羊皮紙を取り出すと、やはりこの場で契約させる気でいるらしい。
だがこの契約書にサインしなければ恐らくアリスは退かないだろうし、下手をすればまた何かよからぬことを言い出して今度こそモーセルに殺されかねないだろう。
「は、はい……」
もう色々と考える事が面倒になると渡されたペンで自分の名前を書いていく。
本当に何なんだこの家族は一体。諸々を含めても普通に怖すぎるだろ。
俺はもしかしたら相当な厄介事に片足を入れている状態なのではないだろうか?
「くっ……なぜですの!? なぜわたくしの剣が掠りもしないんですの!」
レイピアを上下に振り回したり時には突くような一撃必殺の技を繰り出しては、その尽くを俺に避けられて動揺を隠せないアリス。
「そりゃあ当然だろ。そんなに力任せで剣を振るっていては、当たるものも当たりはしないだろうな」
だがそれも至極当たり前のことであり今の彼女は初めて屋敷の者以外と剣を交えていて、その無敗を誇っていた圧倒的な自信が今まさに音を立てて崩れている最中だろう。
それを頷けるような証拠としては剣を交えて既に五分は経過しているが、最初の頃のアリスは余裕の笑みを浮かべてレイピアを振りかざしていたのだが、今となっては最早その面影すらもなく下唇を噛み締めて只管に雑な攻撃を仕掛けてきている始末だ。
「だがまあ……そうだな。やはり鍛え方次第ではお前は今よりも更に強くなれるかもな。さて、この茶番劇もそろそろ仕舞いとさせてもらおう」
剣を交えていた時間としては短いがその間に彼女の特性や苦手な箇所を大凡把握すると、この戦闘に関しての豊富な知識や慧眼の力は全てギフトに含まれていた能力に由来するものだろう。
じゃないとこんな仙人にみたいな思想や言葉は自然と出てこない。
なんせ俺はアマチュアニートを18年間も続けていた引きこもりだ。戦いなんぞずぶの素人よ。
「くっ……! わたくしは誰にも負けませんわぁぁあ!」
そう叫び声を上げながらアリスは単調にも真っ直ぐにレイピアを振りかざしてくる。
だが見るに彼女の体力は限界を迎えているようで、恐らくこれが最後の攻撃なのだろう。
「ふっ、一つだけアドバイスしてやる。感情を全て表に出すと人は最も力を発揮出来るが、同時に動きが脆くなるということをなァ!」
目先に迫り来るレイピアの動きを捉えると瞬時に右手の剣で攻撃を弾くと共にレイピアを空中に放り出し、そのまま川のように悠々と流れるような動作で左手の剣をアリスの首元へと刃先を押し付けた。これで茶番劇のような決闘は俺の勝利と言えよう。
「まっ……参りましたの」
「ふむ、そうだろうな」
彼女が自ら敗北を宣言したことで押し付けていた刃先を退けると二本の剣をゆっくりと鞘に収める。その際にアリスは全身の力が抜けたかのように地面に尻をつかせて表情が項垂れていた。
「それじゃ、俺はこのまま帰るから。ちゃんと王都から剣聖でも呼んで強くれなれよ」
そう軽く言うと右手を振りながらアリスから離れるように花畑を後にする。
最早この場所に要はなく残すはモーセルから印鑑を拝借してダイヤモンド級の冒険者に昇格するだけだ。ちゃんと手合わせもして正式にお断りしたのだから何も問題はないはず。
「これで漸く本題に移れ――――ぐぇっぁ!?」
突然として背骨辺りから迸る激痛。
何者からか体当たりを受けたような痛みを感じると共に顔面から地面へと突っ込む。
「ま、待ちなさいですわ!」
すると俺の背中からは先程敗北を喫したアリスの声が聞こえてきた。
一体どういう状況なのかと首を無理やり後ろに向けて様子を確認すると、
「なんだよ? まだ俺に何か用でもあるのか?」
彼女が頬を赤く染め上げて唇を尖らせたまま背中に跨っている光景が視界に映り込んだ。
それは見るからに勝負の有無に納得していない様子のものであるが……他にも何か別の意味がある気がしてならない。
「ええ、ありますわ。ありまくりですの! 貴方わたくしのお尻を泥だけの地面につけさせましたわね? これは立派に罪に問われますのよ」
そう言いながらアリスは何故か潤んだ瞳で俺を睨みつけてくる。
恐らく悔し涙というものを堪えているのだろう。プライドが高いお嬢様あるあるの一つだな。
「な、なんだよそれ……」
罪に問われるというのは絶対に嘘だと分かるのだが、取り敢えず泣いている女子を放置するのは心に響くものがあるので返事だけはしておく。
「よって今ここで貴方の処遇を決めます。アマデウスさん、貴方をわたくしの剣の師匠として認めますの!」
人差し指を威圧的に向けながらアリスは目尻を尖らせて言うと、それはとどのつまり俺から剣を教わるという意思表明のようなものであった。
しかしそれを聞いて当然だが俺はこの令嬢は一体何をおっしゃり申しているのかと反論する。
「は? いやいや、待ってくれ。俺はしっかりと断りを……」
「父様ーーっ! アマデウスさんに服を脱がされそうにーーっ!」
そうするとアリスは即座に助けを求めるようにして声を張り上げると、演技力を増すためにか少しだけ服を脱いで肩を露出させていた。
この令嬢、意外と策士かも知れないと思うが今はそれどころではない。
「ちょちょ待て待て! それは洒落にならない! 本当にまじで!」
池の方から般若顔で猪突猛進して来るモーセルの存在に気が付くと、このままでは別の罪に問われて今この場で首を跳ね飛ばされることになりかねないのだ。
「なら、お受けして頂けますの?」
妙に爽やかな笑みを浮かべて首を傾げているアリスだが……この女実はかなりの腹黒なのではと思えて仕方ない。
だがそうこうしている間に何処から取り出したのか槍の様な武器を手にしてモーセルは更に距離を縮めて来ると、
「ぐっ……わ、分かった。お前に剣を教える! だから今すぐに訂正しろ!」
これは俺が先に折れないと命を失い兼ねない事態に発展すると察して白旗を上げた。
「ふふっ、承知致しましたわ」
全てが計画通りと言わんばかりに彼女は怪し気な表情を一瞬だけ見せる。
「ふーっ! ふーっ! 貴様よくも僕の娘に手を出したなぁぁあ! 処刑だ! 処してやる!」
「ひぃぃやぁぁぁあ! 冤罪で死にとうないぃぃぃ!」
目の前に槍を構えたモーセルが姿を現すと息を鬼人の如く荒げていて、このままでは心臓を穿たれるのではと考えてしまい俺は自分でも分かるほどに情けない声を喉から出していた。
「父様、落ち着いて下さいまし。あれは嘘ですのよ」
アリスが落ち着きのある声色を出して彼に声を掛けると、自身が脱いで露出させていた肩を隠すように服を着直していた。
「嘘……それは本当なのかい?」
彼女の言葉を聞いて般若顔から人の顔へと徐々に戻り始めるモーセル。
「ええ、もちろんですの。それにただの冒険者如きがわたくしに触れる何て想像したくもありませんわ!」
そう強気に主張するアリスは自身を抱き締めるような仕草をしながら表情を引き気味にさせていたが、彼女は冒険者というものを下に見ているのだろうか?
確かに身分は怪しいものであり稼ぎも安定しないことから、世間一般的に見れば充分に俺達の存在は最下層の人間なのかも知れないが。
「そ、そうか。ならまあ別にいいんだが……」
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両手を合わせて一端のお嬢様のような軽やかな声を出すと、俺をこの場から絶対に逃がさないという意識の強さが垣間見れた。よもやアリスに跨られたまま俺は契約を結ばされるのだろうか。
「おお、それは実にいいね! ではアマデウスくん? さっそくだがこの書類に名前をお願いするよ」
満面の笑みで懐から一枚の羊皮紙を取り出すと、やはりこの場で契約させる気でいるらしい。
だがこの契約書にサインしなければ恐らくアリスは退かないだろうし、下手をすればまた何かよからぬことを言い出して今度こそモーセルに殺されかねないだろう。
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