人類史上もっとも最強で厄災の魔術師~自由気ままに魔法学院にて青春を謳歌する~

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プロローグ「少年はホムンクルス」

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「ああ、今日は雨なのか。……ふっ、これはこれは化物が動くには絶好の日だな。化物の登場は夜か雨の日だと相場が決まっている」

 手足を魔術師専用の枷で拘束されていて自由に動かせず、更に視界は黒色の機械を装着されて封じられているのだが、それでもなんとか幸運なことに聴覚だけは何もされていない状態で無傷なのだ。

 それ故に俺の耳に聞こえるのは雨粒が車体に打ち付ける音と、その他に何十台という数の車が同時に並走している走行音のみである。

 しかしこの護送車は日本国が所有している物であり、魔法探知やありとあらゆる探知機能を阻害する特殊な電波が常時放出されているのだ。
 つまりそれほどまでに、この護送は日本国からみて重要なことなのだろう。
 
 あとこれはおまけ程度のことだとは思うのだが、俺の魔法を封じる為にそれらの電波の他にも、あと二つほどの電波を同時に放出していることも分かる。

 なんせ車に乗せられた時から肌に軽い蕁麻疹を発症させてしまい痒くてしょうがないのだ。
 所謂魔法封じの電波アレルギー反応という感じだな。

 それにこんな電子レンジみたいな車が一般道を走行していたら、限りなく住民の迷惑になることは必須だろう。テレビやネットは無論のこと電話回線すらも全て一時的に使用不可となるだろうからな。

 ……だがこの護送車が何処に向けて走行しているのかは考えずとも分かる。
 それはつまるところ日本国防魔法軍の本拠地が存在する東京都だ。
 そこで俺を収容して国防のかなめにしようとしているのだろう。

 その理由に関しては至極簡単なことであり俺自身が、この日本という国で秘密裏に作られた魔法強化人間で、俗に言う人造人間ホムンクルスと呼ばれる存在なのだ。

 そして人造人間である俺が生まれた主な経緯としては日本の魔導省幹部らが、とある研究団体に多額の報酬金と補助金を継続的に与えるという甘い誘い文句を使い、特殊な人形を作れと命令をしたからだ。

 当時の研究団体は資金面で苦しめられていたこともあり、しかも魔導省からの誘いとあれば断ろう筈もなく二つ返事で承諾すると、その契約を交わしてからが全ての始まりである。

 具体的な契約内容としては、どんな魔法でも扱えて自分達の意のままに操れる軍用の人形を作れというもので、研究団体は人形を作る為の実験を順調に進めていくとクライアントのオーダー通りに、どんな魔法でも扱える人造人間として俺が誕生したのだ。

 だが……その実験過程では多くの同胞達の命が失われたことも同時に理解している。それに俺が生まれて直ぐの記憶は培養液に満たされた大型の試験管内で、白衣を着た人間達に四六時中管理とデータを取られていたことぐらいだ。

 その時の心情はあまり思い出したくはないが、生まれた時から自分がやるべきことは何かを理解していた。

 まあ生まれたあとは本土から約五キロメートル離れた人工島で幼少期を過ごすことになるのだが、研究所の職員は何を考えたのか途中から俺を世界中に留学させて、各国で発展した独自の魔法を覚えるように命令してきたのだ。

 けれどそれに関しては良くも悪くも人生経験……まあ人造人間の俺が言うのも変な話だがな。
 それでも留学というのは結構身になる出来事が多くあり、結果として各国の専門知識や独自の魔法を習得することが出来た。

 ……それから話しは大きく変わるのだが研究所の施設では、今でも姉や同胞達が大勢収容されているのが現状なのだ。しかし不思議なことに人造人間として男性型は俺だけで、他の同胞達は皆軒並み女性型であるのだ。
 
「ああ、今頃は姉さんが研究所の職員に手を上げているかも知れんな」

 同胞達が寝ている間に無理やり護送車に乗せられたことから、俺が居ないという事実に姉さんが気がついて施設内で暴れていることを危惧してしまう。

 普段は冷徹で鉄仮面のように表情が変わらない女性なのだが、それでも弟思いの良い人という事だけは幼い頃からずっと一緒に居たから分かるのだ。まあそれでも怒ると物凄く怖いのだがな。

「ふっ、まあ次期に会え―――っ」
 
 姉さんのことを考えて自然と笑みが零れそうになるのだが、それを遮るようにして突如として護送車が大きく一回だけ揺れると、どうやら目的地に到着したようで漸く降りられるようである。

 そして運転席の方から扉を開ける音と共に周囲から足音が無数に聞こえてくると、雰囲気的には俺を護送車から下ろしてエスコートをしてくれるようで中々に気が利く連中ではないだろうか。

「降りろ。実験体ナンバーズ0001」

 隣から扉を開ける音が聞こえてくると同時に野太い声で男から指示を出される。

「ああ、分かっている」

 そう返事をしつつ鉄板を貼り付けたような長椅子から立ち上がると、目元に装着されていた視界を封じる機械が外れて車の床へと落ちるが、更に足を拘束していた枷すらも自動で解除されたのか足元に転がった。

 恐らく指示を飛ばしてきた男が端末か何かを使用して機械の施錠を外したのだろう。
 だが今はそんな些細なことはどうでもいいのだ。
 
 重要なことは自分が何者かということであり、実験体ナンバーズという言い方は間違いではないのだが、同時に正しくもない表現の仕方であるのだ。
 そう、俺には人造人間としての名前の他にも列記とした名前があるのだ。
 
 それは【御影一輝みかげいつき】という名前だ。普通の人間として換算するのであれば今年で16歳となり、所謂高等学校と呼ばれる教育機関に入学できる年齢であるのだ。それと言い忘れていたが実験体ナンバーズとは、あくまでも人造人間としての認識番号で名前ではない。

「なにをぐずぐずとしている。さっさと指示された通りに動け」

 視界が自由に動かせるとして暫く周囲を眺めていたのだが、そうすると今度は雨のように冷たい女性の声が聞こえてきた。

「はいはい。そう慌てるな……ったく」

 面倒ながらも指示に従う素振りを見せると目の前に立つ二人の人間へと視線を定めてみるが、見たところ連中が着ている制服からして二人は国防軍所属の人間で間違いはないだろう。しかも二人は制服の上に雨具を着ているようだが、当然ながら俺用の雨具は用意されていないようである。
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