私を捨てた元旦那様へ。私が第一王子様から求婚されたことを知って、今どんな気分ですか??

睡蓮

文字の大きさ
1 / 6

第1話

しおりを挟む
「リナレー、君との婚約関係は今日をもって終わりにすることに決めた」

広く優雅な雰囲気に包まれている第二王室の中で、時の第二王子であるフォルンは悠々とした口調でそう言葉を発した。

「最初はかわいいと思ったからぜひとも君の事を婚約者にしたいと思い、僕はその思いのままに君をここまで連れてきた。…ただ、最近目が覚めたんだ。どうやら僕には君以外に、ふさわしい婚約相手がいるらしい。その人物との思いを断ち切ることはできないとね」

フォルンは最近、リナレー以外のある人物と非常に親しい仲になっていた。
その事は彼に近しい人物ならばだれしも知っていることであり、当のリナレーさえもその事はうすうす察していた。
だからなのか、フォルンの一方体な言葉に対してリナレーはなにも言い返さない。

「もともと無理な話だったんだよ。僕と君とでは婚約者として釣り合わないというか、圧倒的に僕の方が人気なわけだろう?君との関係を選ばなかったとしても、僕はどこからも引く手あまただったわけだ。それに対して君は、僕に捨てられてしまったらいよいよ相手がいなくなってしまうほど婚約相手となる候補がいないわけだろう?そんな二人が婚約を結ぶのは、後々の事を考えれば却ってよくないと思うんだ」

いろいろと適当な言葉を並べるフォルンであるものの、結局のところ彼はただただリナレーの事を見下しているだけであり、どこまでも自分本位な考えを捨てられないという事に尽きる。
リナレーが何も反論をしてこないのを良いことに、言いたい放題好き勝手な言葉を羅列しているその姿こそ、彼の性格をよく表していると言ってもよかった。
…するとその時、それまで静かに言葉を受け入れていたリナレーが初めて言葉を返した。

「婚約破棄、ということでしたら、私たちの関係はもう終わってしまったという事ですか?」
「あぁ、そう言う事になるな。リナレー、君の言いたいことはよくわかっている。僕との婚約を破棄するなど、とても受け入れられないと言いたいんだろう?しかし、これはもう僕が第二王子として決定したことなのだ。だからもう覆すことはできない」
「……」
「君が僕に未練たらたらなのは見ればわかる。そこに婚約破棄を突き付けるのは決して簡単な事ではなかった。だが、もう君では僕は満足できないんだよ…。だからこれは仕方のない事なんだ。あきらめてくれ」
「……」

リナレーはまだ何も自分の思いを口にしていないというのに、彼女の思いを勝手に決めつけて一方的な言葉を繰り返すフォルン。
そんな彼を前にして、リナレーはその心の中でこう言葉をつぶやいた。

「(私としては、婚約破棄は別になんら構わないのだけれど…。だって最初からフォルン様に強引に決められた婚約関係だったし、もともと私はと結ばれることになっていたのに、それに嫉妬したフォルン様が勝手に私たちの関係に割って入っただけで、彼がこの関係に本気じゃない事は最初から分かっていたわけで…。そうなると、この婚約破棄はわたしにとってはむしろありがたいんだし…)」

現実にはリナレーの思っていた事はフォルンの予想とは正反対で、彼女自身この婚約破棄を心から喜んでいた。
しかしそれを口にしたところでフォルンからは「負け惜しみ」だの「苦し紛れ」だのと言い返されるのは目に見えているため、あえて彼女は心を大人にして黙っているだけだった。
そうとは知らないフォルンは、相変わらず自分のペースで言葉を続けていく。

「まぁ後になって君は僕に手放されたことの重みをよくよく理解することだろう。今でこそ冷静な雰囲気を浮かべているようだけれど、それも今だけの話。すぐに僕の存在が恋しくてたまらなくなるとも」
「……」

その自信はどこからくるのか、と言い返したくなるリナレーだが、ここでも彼女は心を大人にしてその言葉を自分の胸の中にしまい込む。
ゆえに二人の婚約破棄は非常にスムーズに行われ、どちらかが異議を唱えることもなかったために関係の破棄はすぐに成立した。

――――

「これで…これでようやく彼女との関係を深めることが出来る…!シュバルのやつ、これで少しは僕の事を意識せざるをえなくなることだろう…!」

リナレーを追い出した直後、フォルンは自身の部屋で一通の手紙を書き上げながら、不気味なほどうれしそうな表情を浮かべながらそう言葉をつぶやいた。
その手紙の送り先は他でもない、たった今彼が心を奪われているある一人の女性のもとである。

「シュバルの奴…。第一王子だからっていつまでも僕の事を下に見やがって…!でも、自分が最も愛する幼馴染の女が僕に引き抜かれ後あっては、きっと穏やかではいられないことだろう…!僕らが正式に関係を結び、その事をお前に伝えた時、一体どんな絶望の表情を見せてくれるのか、今から楽しみだよ…!」

そう、フォルンが関係を噂されている相手と言うのは、シュバル第一王子が慕っていると言われている彼の幼馴染だった。
…シュバルに対して一方的な劣等感を抱き続けているフォルンは、略奪愛を行うためだけにリナレーとの関係を切り捨て、彼女に近づこうと計画したのだった。

「もうすぐだ…!もうすぐお互いの立場を逆転させてやるさ…!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約パーティーで婚約破棄を

あんど もあ
ファンタジー
王太子妃候補たちによる一年間の王太子妃教育を勝ち抜いて、王太子の婚約者となったサフィラ。幸せいっぱいの婚約発表パーティーで、サフィラはライバルのシャノンの本意を知って敗北を感じてしまう。果たして王太子妃の行方は……?

『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?

シエル
恋愛
「彼を解放してください!」 友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。 「どなたかしら?」 なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう? まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ? どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。 「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが? ※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界 ※ ご都合主義です。 ※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。

死んで初めて分かったこと

ルーシャオ
恋愛
ヴィリジアの王女ロザリアは、大国アルデラ王国のエアル王子の婚約者として王城で暮らしていたが、エアル王子には罵倒され遠ざけられ続け、次第に周辺の人々も近づかなくなっていた。 しかし、エアル王子が故郷ヴィリジアを滅ぼしたことをきっかけに、ロザリアは何もかもを諦める。「殿下。あなた様との婚約は、破棄いたします」、そう宣言して、ロザリアは——。

幸せな婚約破棄 ~どうぞ妹と添い遂げて~

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を宣言された私。彼の横には、何故か妹が。 私……あなたと婚約なんてしていませんけど?

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました

Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。 伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。 理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。 これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。

契約結婚の終わりの花が咲きます、旦那様

日室千種・ちぐ
恋愛
エブリスタ新星ファンタジーコンテストで佳作をいただいた作品を、講評を参考に全体的に手直ししました。 春を告げるラクサの花が咲いたら、この契約結婚は終わり。 夫は他の女性を追いかけて家に帰らない。私はそれに傷つきながらも、夫の弱みにつけ込んで結婚した罪悪感から、なかば諦めていた。体を弱らせながらも、寄り添ってくれる老医師に夫への想いを語り聞かせて、前を向こうとしていたのに。繰り返す女の悪夢に少しずつ壊れた私は、ついにある時、ラクサの花を咲かせてしまう――。 真実とは。老医師の決断とは。 愛する人に別れを告げられることを恐れる妻と、妻を愛していたのに契約結婚を申し出てしまった夫。悪しき魔女に掻き回された夫婦が絆を見つめ直すお話。 全十二話。完結しています。

陶器の人形は夢を見る

透明
恋愛
愛人に夢中な王子に愛想をつかして婚約者の侯爵令嬢ソフィアは逃げ出すことを決めた。 王子と愛人はまだ知らない。 自分達に地獄が待っていることを・・・ あなたは私を『陶器の人形』と言うけど陶器の人形にだって感情はあるのよ。

処理中です...