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第4話
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自分の思惑はうまく行っているものと信じて疑っていないフォルンであったものの、その裏でエミリーはシュバル第一王子に内密に相談に訪れていた。
「フォルン第二王子様からこのような手紙が届けられていて…。当然第二王子様からの直々のお手紙ですから、私としては非常にうれしく思っているのです。でも、少しこれは強引が過ぎるというか、やりすぎだというか…」
「……」
フォルンがエミリーに宛てて書いた手紙に目を通しながら、シュバルは深いため息をついてみせる。
「はぁ…。エミリー、君にも迷惑をかけてしまって本当にすまないな…」
「君にも…?ほかにも誰か同じ思いをされている方がいらっしゃるのですか?」
「あぁ、実は…」
シュバルはやや重い口を開きながら、フォルンとリナレーの間で起こったことをありのままエミリーに対して伝えた。
エミリーは最初こそ驚きの表情を浮かべていたものの、このような手段を取ってくるフォルンの姿を目の当たりにしていたためか、彼の傲慢な態度をとる姿に対して驚愕の思いは時間とともに少なくなっていった。
「そうだったんですね…。フォルン様とリナレー様が婚約関係を維持できなかったというお話は聞いていましたが、まさかそんな理由があっただなんて…。最初こそまさかそんなことを第二王子様がするわけがないと思ってびっくりしてしまいましたけれど、でも今のフォルン様の姿を見るとそれも本当の事だったんだと思わずにはいられませんね…」
「あぁ、そうなんだ…。そしてフォルンの奴、今度は俺の幼馴染だからという理由で次の目標を君に向けたらしいんだ…」
「どうして幼馴染だという理由だけで?」
「さぁね…。ただ、リナレーの時と同じ理由があると考えれば、想像はつく。きっとフォルンの奴は、俺とエミリーが恋仲にあるものと思っているんじゃないだろう。だから君の事を僕から奪うことで、俺の心にダメージを与えられるとでも思っているんだろうさ。…ったく、どこまで俺の足を引っ張れば気が済むのか…」
「そんなことを……」
どこまでも陰湿でできの悪い弟に苦言を呈しながら、やれやれといった表情を浮かべてみせるシュバル。
これまで、シュバルはシュバルでフォルンの事を想ってサポートし続けてはいたのだが、そんな彼のサポートをすべて不意にする行為をそうとは知らずにフォルンは無自覚に続けていた。
当然それは後に自分の首を絞めることとなるのだが、そんなまっとうなことにフォルンが自分から気づけるはずもなく…。
「…これはもう、いよいよ俺もあいつをかばうわけにはいかなくなってきたな。リナレーの事を追い出しただけでも怒りが収まらない思いを感じていたが、今度はエミリーにまで迷惑な話を持ち込んで…」
「…シュバル様、貴族会の方でもフォルン第二王子様の事は問題になっているご様子…。これ以上彼の味方をされるのは、かえって第一王子様にとっても良くないのではありませんか?」
「はぁ……」
シュバルからの情けをことごとく不意にしてきたフォルン。
彼がその事に後悔する感情を抱くことになるのは、それから間もなくのことだった…。
――フォルンの思惑――
「な、なんでこんなことになっているんだ…?おかしいぞ…?」
フォルンは困惑していた。
というのも、たった今自分が手に持っている一通の手紙は、それまでに目にしたことのないようなものだったためだ。
「貴族会からの意見書、だと…?しかもここにはシュバルの印も押されている…。一体どういうことだ…?」
それはつまり、貴族会はシュバルからの賛同を得てこれから先はフォルンには従わなくなるという旨の通告書だった。
しかし、この国に住まう者は何人たりとも王子に付き従うものであるという考えを捨てられないフォルンには、その通告書の意味がまるで分からなかった。
「な、なにを身の程知らずなことを…。なるほど、さてはシュバルのやつ、僕の存在を恐れてこんなことをはじめたんだな…?自分一人の力だけじゃ僕にかなわないと思って、やむなき貴族会の力を借りることにしたというわけか…。それでこんなやり方を…」
頭の中でそう推理を行うフォルンであったものの、現実にはその推理は正反対だった。
シュバルは最後までフォルンの事をかばおうと動いていたのだったが、リナレーを乱暴に婚約破棄したことやエミリーに対して一方的な手紙を送り続けたことがきっかけとなり、いよいよ我慢の限界を迎えさせてしまってこうして切り捨てられる結果となってしまったのだった。
「…シュバル、そっちがその気ならこっちにもやり方があるぞ…。僕には第二王子としての権限が残っているんだ。つまり、僕が本気になれば大小さまざまな貴族家や騎士たちが名乗りを上げてくれることだろう。そうなった時こそ、どちらが本当の王として相応しいのかが明らかになる…!その時を楽しみに待っているんだな…!」
なかなかに自信に満ちた表情でそう言葉を発するフォルン。
しかし、すでに戦いになるような状況でなどないということが彼は全く分かっておらず、しかもその戦いもすでに完結の段階にあるということには、気づいてもいないのだった…。
「フォルン第二王子様からこのような手紙が届けられていて…。当然第二王子様からの直々のお手紙ですから、私としては非常にうれしく思っているのです。でも、少しこれは強引が過ぎるというか、やりすぎだというか…」
「……」
フォルンがエミリーに宛てて書いた手紙に目を通しながら、シュバルは深いため息をついてみせる。
「はぁ…。エミリー、君にも迷惑をかけてしまって本当にすまないな…」
「君にも…?ほかにも誰か同じ思いをされている方がいらっしゃるのですか?」
「あぁ、実は…」
シュバルはやや重い口を開きながら、フォルンとリナレーの間で起こったことをありのままエミリーに対して伝えた。
エミリーは最初こそ驚きの表情を浮かべていたものの、このような手段を取ってくるフォルンの姿を目の当たりにしていたためか、彼の傲慢な態度をとる姿に対して驚愕の思いは時間とともに少なくなっていった。
「そうだったんですね…。フォルン様とリナレー様が婚約関係を維持できなかったというお話は聞いていましたが、まさかそんな理由があっただなんて…。最初こそまさかそんなことを第二王子様がするわけがないと思ってびっくりしてしまいましたけれど、でも今のフォルン様の姿を見るとそれも本当の事だったんだと思わずにはいられませんね…」
「あぁ、そうなんだ…。そしてフォルンの奴、今度は俺の幼馴染だからという理由で次の目標を君に向けたらしいんだ…」
「どうして幼馴染だという理由だけで?」
「さぁね…。ただ、リナレーの時と同じ理由があると考えれば、想像はつく。きっとフォルンの奴は、俺とエミリーが恋仲にあるものと思っているんじゃないだろう。だから君の事を僕から奪うことで、俺の心にダメージを与えられるとでも思っているんだろうさ。…ったく、どこまで俺の足を引っ張れば気が済むのか…」
「そんなことを……」
どこまでも陰湿でできの悪い弟に苦言を呈しながら、やれやれといった表情を浮かべてみせるシュバル。
これまで、シュバルはシュバルでフォルンの事を想ってサポートし続けてはいたのだが、そんな彼のサポートをすべて不意にする行為をそうとは知らずにフォルンは無自覚に続けていた。
当然それは後に自分の首を絞めることとなるのだが、そんなまっとうなことにフォルンが自分から気づけるはずもなく…。
「…これはもう、いよいよ俺もあいつをかばうわけにはいかなくなってきたな。リナレーの事を追い出しただけでも怒りが収まらない思いを感じていたが、今度はエミリーにまで迷惑な話を持ち込んで…」
「…シュバル様、貴族会の方でもフォルン第二王子様の事は問題になっているご様子…。これ以上彼の味方をされるのは、かえって第一王子様にとっても良くないのではありませんか?」
「はぁ……」
シュバルからの情けをことごとく不意にしてきたフォルン。
彼がその事に後悔する感情を抱くことになるのは、それから間もなくのことだった…。
――フォルンの思惑――
「な、なんでこんなことになっているんだ…?おかしいぞ…?」
フォルンは困惑していた。
というのも、たった今自分が手に持っている一通の手紙は、それまでに目にしたことのないようなものだったためだ。
「貴族会からの意見書、だと…?しかもここにはシュバルの印も押されている…。一体どういうことだ…?」
それはつまり、貴族会はシュバルからの賛同を得てこれから先はフォルンには従わなくなるという旨の通告書だった。
しかし、この国に住まう者は何人たりとも王子に付き従うものであるという考えを捨てられないフォルンには、その通告書の意味がまるで分からなかった。
「な、なにを身の程知らずなことを…。なるほど、さてはシュバルのやつ、僕の存在を恐れてこんなことをはじめたんだな…?自分一人の力だけじゃ僕にかなわないと思って、やむなき貴族会の力を借りることにしたというわけか…。それでこんなやり方を…」
頭の中でそう推理を行うフォルンであったものの、現実にはその推理は正反対だった。
シュバルは最後までフォルンの事をかばおうと動いていたのだったが、リナレーを乱暴に婚約破棄したことやエミリーに対して一方的な手紙を送り続けたことがきっかけとなり、いよいよ我慢の限界を迎えさせてしまってこうして切り捨てられる結果となってしまったのだった。
「…シュバル、そっちがその気ならこっちにもやり方があるぞ…。僕には第二王子としての権限が残っているんだ。つまり、僕が本気になれば大小さまざまな貴族家や騎士たちが名乗りを上げてくれることだろう。そうなった時こそ、どちらが本当の王として相応しいのかが明らかになる…!その時を楽しみに待っているんだな…!」
なかなかに自信に満ちた表情でそう言葉を発するフォルン。
しかし、すでに戦いになるような状況でなどないということが彼は全く分かっておらず、しかもその戦いもすでに完結の段階にあるということには、気づいてもいないのだった…。
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