2 / 6
第2話
しおりを挟む
「ミラ、君がここに呼び出された理由、もう分かっているな?」
「……」
ルーザは非常に険しい表情を浮かべながら、自室を訪れたミラに向けてそう言葉を発する。
ミラはこれから自分にかけられるであろう言葉を察しているのか、ややその顔を伏せたまま何も言葉を返さない。
「マーアリアが僕に涙を見せてきたよ。自分は将来家族になるもの同士として仲良くしたいと思っているのに、君の方がいつまでたっても自分の事を受け入れてくれないと言ってね」
それは完全にマーアリアの作り上げた偽りのストーリーだというのに、そのことに全く気付いていないルーザ。
「僕は本当に悲しくてたまらないとも。ミラ、君は本当に僕とマーアリアの事を愛しているのか?家族になる気があるのか?あんなにも性格に優れるマーアリアが君の事を想い続けているというのに、君はどうしてその思いを無下にできるんだ?」
「……」
ミラとて、その言葉を無条件に受け入れられるものではない。
しかし、ここで言葉を返すことの方がかえって状況を悪化させるということを、彼女はこれまでの経験から良くわかっていた。
「僕は完全に君の事を見誤ってしまったようだ。だからこそ、今日こうして君と話をすることに決めた。ほかでもない、婚約破棄の事についてね」
「…!?」
婚約破棄、その言葉を聞かされた途端、ミラはそれまでこらえていた感情を少し表にした。
「…なんだ?何か言いたいことでもあるのか?僕の愛する妹の思いを裏切った君の事を考えれば、相応しい罰であると思っているが?」
「…そうですか。それでは少し、私にも言わせていただいてよろしいですか?」
その言葉がミラを縛っていた我慢から少し解放させたのか、彼女は低い口調でルーザに対しこう言葉を続けた。
「ルーザ様、あなたは私がマーアリアの思いに気づいていなかった、その思いを無下にしたとおっしゃられましたが、それならルーザ様は私の思いに気づいていたのですか?私の事を信じてくださったことがありましたか?」
「…なんだと?」
それまでただ黙って我慢を続けていたミラの心。
一度その糸がほつれたなら、もはやそれを止める術はない。
「私が今までどれだけマーアリアに騙され続けてきたのかを、あなたは分かっているのですか?彼女はことあるごとに私に嫌がらせをしてきては、自らを一方的に悲劇のヒロインに仕立て上げて私の事を悪者にし続けてきました。私がその事で彼女に何か言おうものなら、彼女はすぐにルーザ様に泣きついてすべての非が私にあるかのような言葉を並べ始めました。…そしてルーザ様、あなたはそんなマーアリアの言葉をすべて一方的に信じて、私の言葉はなにひとつ聞き入れては下さらなかった…。私から見ればそれこそ、お二人からの裏切りであるように思えてなりません」
「……」
それまで黙っていた者の立場が逆転し、今度はルーザの方が言葉に詰まる。
「ルーザ様、婚約破棄されるということをあなたがお決めになったのでしたら、私には反論する余地もございません。私はただ黙って、その決定を受け入れる事しかできません。でも、その決定の裏にマーアリアの存在があるというのなら、それはよくよくお考え直しくださった方がいいかもしれません。だってそれは結局あなたの思いではなく、彼女の思いをすべて一方的に受けいれているに過ぎないのではありませんか?ただの言いなりなのではありませんか?」
ミラの言っていることはすべて真実をそのまま述べていて、ルーザは今この場で考えを改めてミラの思いを受け入れれば、まだ取り返しのつく段階であった。
…しかし、妹の事を盲目的に溺愛してしまっている彼にそんなことができるはずもなく…。
「お前の言いたいことはよくわかったよ。結局は、自分の犯した罪を棚に上げたいだけなんだろう?すべてをマーアリアのせいにすることで、自分はこの世界で生き残ることしか考えていないのだろう?」
「……」
「それこそ意味のない話し合いというものだ。誰かの弁明を聞いていることほど時間を浪費することはないからな。ミラ、やはり僕の隣に君は必要ないということが良く分かった。今日をもって正式に君の事は婚約破棄させてもらうことにする。今後一切、君はこの王宮の敷居を跨がないでくれたまえ。…まぁもっとも、もうそんなことができる立場でもないわけだがな♪」
結局、ルーザは最後の最後までミラの真実の言葉を受け売れることはなく、マーアリアの偽りの言葉ばかりを見続けていた。
ミラはその点をこれまで必死に修正しようと試み続けてきたのだが、結局それもかなわないままに終わってしまうこととなった。
「そうですか…。私はルーザ第一王子様により優れた君主となっていただきたくこのような出すぎたお言葉を言わせていただいたのですが、残念です」
「残念でもどうとでも思ってくれればいいさ。僕にとって最も大事なのはマーアリアなのだ。それは誰に何を言われようとも変わらない」
自信をもって自分の方が正しいと言い張るルーザ。
…この婚約破棄こそ、後に自分の事を追い落とすこととなることなど、この時はかけらも理解していないのだった…。
「……」
ルーザは非常に険しい表情を浮かべながら、自室を訪れたミラに向けてそう言葉を発する。
ミラはこれから自分にかけられるであろう言葉を察しているのか、ややその顔を伏せたまま何も言葉を返さない。
「マーアリアが僕に涙を見せてきたよ。自分は将来家族になるもの同士として仲良くしたいと思っているのに、君の方がいつまでたっても自分の事を受け入れてくれないと言ってね」
それは完全にマーアリアの作り上げた偽りのストーリーだというのに、そのことに全く気付いていないルーザ。
「僕は本当に悲しくてたまらないとも。ミラ、君は本当に僕とマーアリアの事を愛しているのか?家族になる気があるのか?あんなにも性格に優れるマーアリアが君の事を想い続けているというのに、君はどうしてその思いを無下にできるんだ?」
「……」
ミラとて、その言葉を無条件に受け入れられるものではない。
しかし、ここで言葉を返すことの方がかえって状況を悪化させるということを、彼女はこれまでの経験から良くわかっていた。
「僕は完全に君の事を見誤ってしまったようだ。だからこそ、今日こうして君と話をすることに決めた。ほかでもない、婚約破棄の事についてね」
「…!?」
婚約破棄、その言葉を聞かされた途端、ミラはそれまでこらえていた感情を少し表にした。
「…なんだ?何か言いたいことでもあるのか?僕の愛する妹の思いを裏切った君の事を考えれば、相応しい罰であると思っているが?」
「…そうですか。それでは少し、私にも言わせていただいてよろしいですか?」
その言葉がミラを縛っていた我慢から少し解放させたのか、彼女は低い口調でルーザに対しこう言葉を続けた。
「ルーザ様、あなたは私がマーアリアの思いに気づいていなかった、その思いを無下にしたとおっしゃられましたが、それならルーザ様は私の思いに気づいていたのですか?私の事を信じてくださったことがありましたか?」
「…なんだと?」
それまでただ黙って我慢を続けていたミラの心。
一度その糸がほつれたなら、もはやそれを止める術はない。
「私が今までどれだけマーアリアに騙され続けてきたのかを、あなたは分かっているのですか?彼女はことあるごとに私に嫌がらせをしてきては、自らを一方的に悲劇のヒロインに仕立て上げて私の事を悪者にし続けてきました。私がその事で彼女に何か言おうものなら、彼女はすぐにルーザ様に泣きついてすべての非が私にあるかのような言葉を並べ始めました。…そしてルーザ様、あなたはそんなマーアリアの言葉をすべて一方的に信じて、私の言葉はなにひとつ聞き入れては下さらなかった…。私から見ればそれこそ、お二人からの裏切りであるように思えてなりません」
「……」
それまで黙っていた者の立場が逆転し、今度はルーザの方が言葉に詰まる。
「ルーザ様、婚約破棄されるということをあなたがお決めになったのでしたら、私には反論する余地もございません。私はただ黙って、その決定を受け入れる事しかできません。でも、その決定の裏にマーアリアの存在があるというのなら、それはよくよくお考え直しくださった方がいいかもしれません。だってそれは結局あなたの思いではなく、彼女の思いをすべて一方的に受けいれているに過ぎないのではありませんか?ただの言いなりなのではありませんか?」
ミラの言っていることはすべて真実をそのまま述べていて、ルーザは今この場で考えを改めてミラの思いを受け入れれば、まだ取り返しのつく段階であった。
…しかし、妹の事を盲目的に溺愛してしまっている彼にそんなことができるはずもなく…。
「お前の言いたいことはよくわかったよ。結局は、自分の犯した罪を棚に上げたいだけなんだろう?すべてをマーアリアのせいにすることで、自分はこの世界で生き残ることしか考えていないのだろう?」
「……」
「それこそ意味のない話し合いというものだ。誰かの弁明を聞いていることほど時間を浪費することはないからな。ミラ、やはり僕の隣に君は必要ないということが良く分かった。今日をもって正式に君の事は婚約破棄させてもらうことにする。今後一切、君はこの王宮の敷居を跨がないでくれたまえ。…まぁもっとも、もうそんなことができる立場でもないわけだがな♪」
結局、ルーザは最後の最後までミラの真実の言葉を受け売れることはなく、マーアリアの偽りの言葉ばかりを見続けていた。
ミラはその点をこれまで必死に修正しようと試み続けてきたのだが、結局それもかなわないままに終わってしまうこととなった。
「そうですか…。私はルーザ第一王子様により優れた君主となっていただきたくこのような出すぎたお言葉を言わせていただいたのですが、残念です」
「残念でもどうとでも思ってくれればいいさ。僕にとって最も大事なのはマーアリアなのだ。それは誰に何を言われようとも変わらない」
自信をもって自分の方が正しいと言い張るルーザ。
…この婚約破棄こそ、後に自分の事を追い落とすこととなることなど、この時はかけらも理解していないのだった…。
79
あなたにおすすめの小説
今さら救いの手とかいらないのですが……
カレイ
恋愛
侯爵令嬢オデットは学園の嫌われ者である。
それもこれも、子爵令嬢シェリーシアに罪をなすりつけられ、公衆の面前で婚約破棄を突きつけられたせい。
オデットは信じてくれる友人のお陰で、揶揄されながらもそれなりに楽しい生活を送っていたが……
「そろそろ許してあげても良いですっ」
「あ、結構です」
伸ばされた手をオデットは払い除ける。
許さなくて良いので金輪際関わってこないで下さいと付け加えて。
※全19話の短編です。
病弱な幼馴染を守る彼との婚約を解消、十年の恋を捨てて結婚します
佐藤 美奈
恋愛
セフィーナ・グラディウスという貴族の娘が、婚約者であるアルディン・オルステリア伯爵令息との関係に苦悩し、彼の優しさが他の女性に向けられることに心を痛める。
セフィーナは、アルディンが幼馴染のリーシャ・ランスロット男爵令嬢に特別な優しさを注ぐ姿を見て、自らの立場に苦しみながらも、理想的な婚約者を演じ続ける日々を送っていた。
婚約して十年間、心の中で自分を演じ続けてきたが、それももう耐えられなくなっていた。
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
私の婚約者とキスする妹を見た時、婚約破棄されるのだと分かっていました
あねもね
恋愛
妹は私と違って美貌の持ち主で、親の愛情をふんだんに受けて育った結果、傲慢になりました。
自分には手に入らないものは何もないくせに、私のものを欲しがり、果てには私の婚約者まで奪いました。
その時分かりました。婚約破棄されるのだと……。
【完結】わたしの欲しい言葉
彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。
双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。
はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。
わたしは・・・。
数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。
*ドロッとしています。
念のためティッシュをご用意ください。
妹が約束を破ったので、もう借金の肩代わりはやめます
なかの豹吏
恋愛
「わたしも好きだけど……いいよ、姉さんに譲ってあげる」
双子の妹のステラリアはそう言った。
幼なじみのリオネル、わたしはずっと好きだった。 妹もそうだと思ってたから、この時は本当に嬉しかった。
なのに、王子と婚約したステラリアは、王子妃教育に耐えきれずに家に帰ってきた。 そして、
「やっぱり女は初恋を追うものよね、姉さんはこんな身体だし、わたし、リオネルの妻になるわっ!」
なんて、身勝手な事を言ってきたのだった。
※この作品は他サイトにも掲載されています。
聞き分けよくしていたら婚約者が妹にばかり構うので、困らせてみることにした
今川幸乃
恋愛
カレン・ブライスとクライン・ガスターはどちらも公爵家の生まれで政略結婚のために婚約したが、お互い愛し合っていた……はずだった。
二人は貴族が通う学園の同級生で、クラスメイトたちにもその仲の良さは知られていた。
しかし、昨年クラインの妹、レイラが貴族が学園に入学してから状況が変わった。
元々人のいいところがあるクラインは、甘えがちな妹にばかり構う。
そのたびにカレンは聞き分けよく我慢せざるをえなかった。
が、ある日クラインがレイラのためにデートをすっぽかしてからカレンは決心する。
このまま聞き分けのいい婚約者をしていたところで状況は悪くなるだけだ、と。
※ざまぁというよりは改心系です。
※4/5【レイラ視点】【リーアム視点】の間に、入れ忘れていた【女友達視点】の話を追加しました。申し訳ありません。
知らぬはヒロインだけ
ネコフク
恋愛
「クエス様好きです!」婚約者が隣にいるのに告白する令嬢に唖然とするシスティアとクエスフィール。
告白してきた令嬢アリサは見目の良い高位貴族の子息ばかり粉をかけて回っていると有名な人物だった。
しかも「イベント」「システム」など訳が分からない事を言っているらしい。
そう、アリサは転生者。ここが乙女ゲームの世界で自分はヒロインだと思っている。
しかし彼女は知らない。他にも転生者がいることを。
※不定期連載です。毎日投稿する時もあれば日が開く事もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる