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第4話
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貴族会で自分たちの事を追い落とすべく動きが始まっていることなど全く察知していないルーザとマーアリアは、これまでにもまして自由気ままな行動を繰り返していた。
「お兄様、私今度はブリック侯爵の令嬢が持っているペンダントが欲しいです。お兄様のお力で、なんとか手に入れていただくことはできませんか?」
「分かったよマーアリア、君が欲しいというのならこの僕がどんな手を使ってでも用意してみせるとも。僕は君の願いを実現するためにここにいるのだから」
「さすが私のお兄様!大好きです!!」
マーアリアは甘い口調でそう言葉を発しながら、ルーザの胸の中に飛び込んでいく。
その体から発せられる心地の良い香りに脳を焼かれながら、ルーザは自身の心をますます熱いものとしていき、それまで以上にマーアリアに対しての思いを強いものとする。
「私たちの絆を壊そうとするお姉様もお兄様が追い出してくださいましたし、もう私たちの間に割って入る者は誰もいませんね?私はずっとこうしてお兄様と一緒にいられることを望んでいたのです。ほかに誰もいりませんもの」
「マーアリア、やっぱり君に言われたとおりにして正解だったよ。ミラを追い出してからというもの、僕の毎日はそれまで以上に光り輝いているように感じられる。もしもあのままミラとの関係を続けていたら、きっとこんな思いはできなかったことだろう。そういう意味では、今こうしてマーアリアと深い関係を築けていることを本当にうれしく思っているよ」
ルーザは第一王子として他では見せないような表情を、このマーアリアに対してのみ見せる。
その胸の内にあるのはやはり、彼女を過剰なまでに溺愛する心そのものであり、ミラが是正しようとしてもまったく聞き入れられなかった邪悪な感情の本性だった。
「そういえばミラお姉様…。いや、元お姉様ですかね。お兄様から婚約破棄されてしまった哀れなあの人は今頃どこで何をしているのでしょう?」
「さぁね。あんなろくでもない女、他に行く当てなんてないんじゃないのか?」
「それもそうですわね。まぁどうでもいいことではあるのですが、なんだか少し気になります」
「…?」
なにやら意味深な言葉を口にするマーアリアに対し、ルーザは不思議そうな表情を浮かべてこう言葉を返した。
「マーアリア、なにか気になることでもあるのかい?遠慮なく言ってくれてかまわないんだよ?」
「…追放だけで終わらせるのは、なんだか虫が良すぎるとは思いませんか、お兄様?」
新たにマーアリアがルーザに望んだ願い、それは彼女の欲の深さをまざまざと知らしめるものだった。
「どういう意味だ?」
「だって…。あの女は私とお兄様の大切な関係にひびを入れようとしたのですよ?なのにここから出ていくだけでその罪が消えてなくなるだなんて、ちょっと釣り合っていないとは思いませんか?」
マーアリアはいまだ、ミラの事を逆恨みして今以上に彼女の事を追い詰めてやろうと考えていた。
しかしそれに対して、さすがにルーザも静止に入る。
「しかしマーアリア、これ以上彼女になにかやろうとすると僕らの方が貴族会からにらまれるかもしれないぞ…。君の願いは全て叶えてあげたいと思っている僕だけれど、貴族会と対立することは巡り巡ってマーアリアの願いをかなえることから遠いところになってしまうかもしれないし…」
もうすでに貴族会からこの上ないほどの敵対視をされているのだが、その点には全く気付いていない様子のルーザ。
しかし、貴族会と対立してもなにもいいことはないということはきちんと理解していた。
「でもお兄様、よく考えてみてください?ミラは立派な貴族令嬢だったのですよ?それが私たちの関係を壊そうとしたということは、これはもうただの婚約破棄で済む話ではなく、立派なお兄様に対する反逆ととれるのではありませんか?」
「うーむ、なるほど……」
ここで自分の意志を強く持つことがルーザにできたなら、この後訪れる最悪の結末を回避することができたのかもしれない。
しかし彼は結局、盲目的に溺愛するマーアリアの言葉を拒否することはできなかった。
「それならいけるかもしれないな…。第一王子であるこの僕の立場を脅かそうとしたその行動は、決して許されるものではない。ミラはもちろんの事、その貴族家をまとめて解散させる理由としては十分すぎるものだろう」
「そうでしょうそうでしょう!!お兄様なら絶対に理解してくださると思っておりましたわ!!」
「すまないマーアリア、僕としたことが…。少し考えが甘かったようだ。僕らの関係を壊そうとするものの事を、こんな単調な罰だけで許していいはずがない。犯した罪に釣り合うほどの罰を、ここで改めてきちんと与えておかなければね」
マーアリアから背中を押されることで自信になったのか、得意げな表情を浮かべてそう言葉を発するルーザ。
…しかし、この判断が後に彼を第一王子としての立場から追い落とす決定打となり、それにつられる形でマーアリアもまたすべてを失うこととなるのだった…。
「お兄様、私今度はブリック侯爵の令嬢が持っているペンダントが欲しいです。お兄様のお力で、なんとか手に入れていただくことはできませんか?」
「分かったよマーアリア、君が欲しいというのならこの僕がどんな手を使ってでも用意してみせるとも。僕は君の願いを実現するためにここにいるのだから」
「さすが私のお兄様!大好きです!!」
マーアリアは甘い口調でそう言葉を発しながら、ルーザの胸の中に飛び込んでいく。
その体から発せられる心地の良い香りに脳を焼かれながら、ルーザは自身の心をますます熱いものとしていき、それまで以上にマーアリアに対しての思いを強いものとする。
「私たちの絆を壊そうとするお姉様もお兄様が追い出してくださいましたし、もう私たちの間に割って入る者は誰もいませんね?私はずっとこうしてお兄様と一緒にいられることを望んでいたのです。ほかに誰もいりませんもの」
「マーアリア、やっぱり君に言われたとおりにして正解だったよ。ミラを追い出してからというもの、僕の毎日はそれまで以上に光り輝いているように感じられる。もしもあのままミラとの関係を続けていたら、きっとこんな思いはできなかったことだろう。そういう意味では、今こうしてマーアリアと深い関係を築けていることを本当にうれしく思っているよ」
ルーザは第一王子として他では見せないような表情を、このマーアリアに対してのみ見せる。
その胸の内にあるのはやはり、彼女を過剰なまでに溺愛する心そのものであり、ミラが是正しようとしてもまったく聞き入れられなかった邪悪な感情の本性だった。
「そういえばミラお姉様…。いや、元お姉様ですかね。お兄様から婚約破棄されてしまった哀れなあの人は今頃どこで何をしているのでしょう?」
「さぁね。あんなろくでもない女、他に行く当てなんてないんじゃないのか?」
「それもそうですわね。まぁどうでもいいことではあるのですが、なんだか少し気になります」
「…?」
なにやら意味深な言葉を口にするマーアリアに対し、ルーザは不思議そうな表情を浮かべてこう言葉を返した。
「マーアリア、なにか気になることでもあるのかい?遠慮なく言ってくれてかまわないんだよ?」
「…追放だけで終わらせるのは、なんだか虫が良すぎるとは思いませんか、お兄様?」
新たにマーアリアがルーザに望んだ願い、それは彼女の欲の深さをまざまざと知らしめるものだった。
「どういう意味だ?」
「だって…。あの女は私とお兄様の大切な関係にひびを入れようとしたのですよ?なのにここから出ていくだけでその罪が消えてなくなるだなんて、ちょっと釣り合っていないとは思いませんか?」
マーアリアはいまだ、ミラの事を逆恨みして今以上に彼女の事を追い詰めてやろうと考えていた。
しかしそれに対して、さすがにルーザも静止に入る。
「しかしマーアリア、これ以上彼女になにかやろうとすると僕らの方が貴族会からにらまれるかもしれないぞ…。君の願いは全て叶えてあげたいと思っている僕だけれど、貴族会と対立することは巡り巡ってマーアリアの願いをかなえることから遠いところになってしまうかもしれないし…」
もうすでに貴族会からこの上ないほどの敵対視をされているのだが、その点には全く気付いていない様子のルーザ。
しかし、貴族会と対立してもなにもいいことはないということはきちんと理解していた。
「でもお兄様、よく考えてみてください?ミラは立派な貴族令嬢だったのですよ?それが私たちの関係を壊そうとしたということは、これはもうただの婚約破棄で済む話ではなく、立派なお兄様に対する反逆ととれるのではありませんか?」
「うーむ、なるほど……」
ここで自分の意志を強く持つことがルーザにできたなら、この後訪れる最悪の結末を回避することができたのかもしれない。
しかし彼は結局、盲目的に溺愛するマーアリアの言葉を拒否することはできなかった。
「それならいけるかもしれないな…。第一王子であるこの僕の立場を脅かそうとしたその行動は、決して許されるものではない。ミラはもちろんの事、その貴族家をまとめて解散させる理由としては十分すぎるものだろう」
「そうでしょうそうでしょう!!お兄様なら絶対に理解してくださると思っておりましたわ!!」
「すまないマーアリア、僕としたことが…。少し考えが甘かったようだ。僕らの関係を壊そうとするものの事を、こんな単調な罰だけで許していいはずがない。犯した罪に釣り合うほどの罰を、ここで改めてきちんと与えておかなければね」
マーアリアから背中を押されることで自信になったのか、得意げな表情を浮かべてそう言葉を発するルーザ。
…しかし、この判断が後に彼を第一王子としての立場から追い落とす決定打となり、それにつられる形でマーアリアもまたすべてを失うこととなるのだった…。
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