旦那様からいらないと言われたので、勝手に幸せになります!

睡蓮

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第5話

「よしよし、よく来てくれたな伯爵。今日は腹を割って話そうじゃないか」
「ひっ!?!?」

たった今、広い広い王室の中には私を含めて3人の人間が座っている。
一人は、この王宮の主であるトリトス様。
そして、そんな彼と古くからの付き合いのある私。
そしてもう一人は、トリトス様から呼び出しを受けてこの場にいるラドン伯爵だった。
伯爵様はこの場に呼び出された時からその体を震え上がらせており、まるで借りてきた猫のような状態になっていた。
お屋敷の中で私に対して向けていた高圧的な態度は、全く鳴りを潜めてしまっている。

「伯爵よ、君はこの僕が所有する城が欲しいらしいな。そのためになにやら強引なやり方を用いてきているらしいが」
「お、お許しくださいトリトス様!!!僕は本当に知らなかったのです!!あのお城がトリトス様のものであったという事を!」
「知らなかった?なるほど、知らなかったのか。じゃあお前は、どうして強引な手段を用いるに至ったのだ?」
「え…」
「あの城の主が侯爵のままであったなら、お前が強引な手段で城を奪う事は許されるのか?それは横暴ではないのか?」
「う……」

トリトス様の言っていることは、至極まっとうな事だった。
それが完全に正論であるために、伯爵様は返す言葉も見つからない様子。

「相手によって態度を変えるなど、貴族家の人間としては印象の悪い行為だな…。お前は相手が侯爵であったなら、今私に見せているような態度は見せていなかったように思われる。ただただ自分の事が可愛いからそんなことを言っているだけなのではないのか?」
「そ、それは…!」

ここでもなにか言い訳にかかろうとするものの、結局それに続く言葉が出てきていない様子。
なら最初からやらなければいいのに…。

「伯爵よ、貴族家としての振る舞いが求められる伯爵の座にある人間がこのような行いをしてしまったこと、その罪は重い。当然、お前と共謀していたセレスも同じだ。お前たちにはこれから先の罰を…」
「お待ちください!!!!!」

…するとその時、この部屋に第四の人物がその姿を現した。
他でもない、たった今トリトス様がその名前を口にした、セレス本人だった。

「私の話を聞いてください、トリトス様!!」
「ほう」
「マ、セレス!?どうしてここに…!?」
「トリトス様が私の事も呼んでくださったのです!伯爵様、自分だけ言い訳をして助かろうなんて、ひどいじゃないですか!」
「い、言い訳など僕はなにも…」
「聞いてくださいトリトス様!私がすべての真実をお話します!」
「ああ、ぜひ聞かせてくれたまえ」

かなり混乱を極めている雰囲気だけれど、トリトス様は極めて冷静な態度だった。
それはまるで、最初からこうなることが分かっていたかのような…。

「伯爵様は、私のために城を用意する必要があったと言われているのですが、それは全くの嘘です!すべて伯爵様が独断的にやった事なのです!」
「お、おいセレス!!それはどういう…!!」
「私はお城が欲しいなんて一言も言っていません!あったらいいなとしか言っていないのです!それを伯爵様が勝手に勘違いされて、私がそうすることを望んでいると勘違いをされたのです!ですから、今回の伯爵様の行動に私は一切かかわっていないのです!まずはそれをご理解ください!」
「ちょ、ちょっとまってくれセレス!一体どうしてそんなことを…!!」
「それに、フィーレアの事を婚約破棄したのだって伯爵様が勝手に行ったことで、私は一切関与していないのです!だって考えても見てください!私はただの伯爵様の知人ですから、権力なんてなにもありません!しかし現実に婚約破棄が起こったというのなら、それはもう完全に伯爵様の意思であり、私の意思ではないのです!」
「マ、セレス…。どうして…。どうして僕の事を…」

…誰の目にも、これが真実の愛だなんて映らない事だろう。
それを一番実感しているのは伯爵様であるはずで、彼はどこか魂の抜けた人間のような状態になりつつあった…。
自分から見て最愛だったはずの人間からそんな言葉を連続的にかけられたのだから、無理のない話なのかもしれないけれど…。

「…君たち二人は、それが真実の愛であると認識していたというわけか…。それは、フィーレアが愛想を尽かしたのにも納得がいく…」
「ト、トリトス様…!!私の事を信じてください…!」
「いいや、信じることはやめだ。すべての真実はすでに、そこにいるフィーレアから聞いている。君たち二人がその通りにはなしをしたのなら、反省している部分もあるとみて罰を軽くしてやってもいいかと思っていたが…。どうやら、そんな期待をかけるだけ無駄だったようだ」
「!?!?」
「!?!?」

…トリトス様から告げられたその言葉を聞き、二人はもう完全に自分たちの運命を悟った様子だった。
それ以降、二人が良い訳の言葉を口にすることは一度もなかった。

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