妹ばかりをひいきにする旦那様の前から消えたら、勝手に後悔し始めたそうです

睡蓮

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第5話

――エレーナ視点――

「侯爵様、今度はセクレータの宝石が欲しいです。お姉様が昔から気に入っている宝石なので、本物を見せて差し上げたいのです。きっと喜んでくれると思うのですけど…」
「なるほど、そういうことか。エレーナ、君は優しいのだなぁ。自分の事だけではなく、どこまでも姉であるナーレの事を思っている。その優しさに皆心を打たれているんだ」
「そんなことありませんよ?私はただただ当たり前の事を当たり前にやっているだけですから」

誰が姉の事なんて思っているか、と言ってあげたいけれど、侯爵様の中では姉思いの優しい妹になっているらしいので、修正を行うことなくそのままにしておく。
ずっと気になっている様子だったあの宝石が目の前に現れた時、そしてそれが私のもになったということを知った時、彼女がどんな表情を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方がない。
…まぁ、その後で私にはもう一つだけやるべきことがあるのだけれど♪

「そういえば侯爵様、ケルン様をご存じですか?」
「あぁ、もちろんだとも。あいつは長らくこの侯爵家に仕えてくれている騎士で、その実力は確か。僕もあいつの事だけは心から信頼している」
「(へぇ、そうなんだ…。最近お姉様がケルン様と距離を縮めているって話があるから、次はそっちに行こうかしら…♪)」

お姉様が幸せになることなんてありえない。
なぜならお姉様が運んでくる幸せは、最終的にすべて私のものになるからだ。
今までだってそうだったのだから、これから先が例外であるはずがない。
現に侯爵様との関係だって私にプレゼントしてくれたのだから。

「(ということは、私の次の彼氏は騎士様というわけね…♪これはなかなか、面白いことになりそう!)」

これだからお姉様からの横取りはやめられない。
だって、自分が何もしなくても勝手においしいエサを運んできてくれるんだもの。
それも、とびきり食べ応えのあるエサを…♪

「ねぇ侯爵様、それだけ素晴らしい騎士様というのでしたら、私もお会いして話をしてみたいです。いけませんか?」

やや上目遣いに、侯爵様の事を見つめる。
彼はこれをすると、どんな願いでもかなえてくれる。

「もちろんかまわないとも。ケルンのやつも喜ぶだろう、君のような可愛らしい女性と話ができるのだからな」
「もう、侯爵様ったら♪」
「はっはっは」

――――

「侯爵様、お呼びでしょうか?」
「侯爵様ではありません。私です」
「その声は…エレーナ様?」

やや驚きの表情を浮かべながら、ケルン様が私と侯爵様の部屋に入ってくる。
呼び出したのは侯爵様であるのにここにいるのが私だけだから、何が起こっているのか分からないのでしょう。
…ここに私と二人きりにしたのは、最初から私の計画であるとも知らず…。

「ねけケルン様、私どうしてもかなえていただきたいお願いがあるのです…」
「お願い、と申されますと?」
「このことは侯爵様にもまだ相談できていません…。だって、頼れるのがケルン様しかいないのです…」

弱弱しい口調でそう言葉を放ち、彼の事をすぐにこちら側に引き付ける。
ケルン様とて男なのだから、これで私に惹かれないはずがない。

「ケルン様、侯爵様にも言えない私の願い、聞き届けてくださいますか?」
「それはなんでしょう?」
「実は…。私、本当に好きだったのはケルン様なのです…」

これを言われてときめかないはずがない。
今この場には二人きり、襲っていただいても結構ですよ?
そうすることで再びお姉様のものが私のものになるのですから…♪

「ケルン様、私ずっとケルン様と…」
ガチャン!!
「それはどういうことだい、エレーナ……」
「こ、侯爵様!?!?」

…ありえない。
だって侯爵様は、私の願いをかなえるために宝石の入手にむかってくれているはずで…

「ケルンから話があるからと言われてきてみたんだが…。今の話、一体どういうことなんだ…?」
「え、えっと…。これはですね…その…」

あまりに想定外の事が起きてしまい、頭の中が軽くパニックになってしまう私…。
どう言い訳をするべきかと頭をフル回転させていたら、低い口調でケルン様がこう言葉をつぶやいた…。

「エレーナ様、もう終わりにされたらいかがですか?こんな行いがこれから先も続けられるはずがないでしょう?」
「!?!?!?」
「エレーナ…。僕の事を…だましていたのか…?」
「ち、違います!!これは何かの間違いで…!」
「何かの間違いであるはずがないだろう!!今君が言ったことじゃないか!!」
「!?!?!?!」

…今まで温厚であった侯爵様が、突然豹変したかのような厳しい口調でそう言葉を発する…。
どうしてよ…。どうして私がこんな思いをしなければならないのよ…。

「ケルン、後の事は僕に任せてくれ…。もう十分だ…」
「承知しました」

ケルン様はそう言うと、静かにその場から立ち去り始める。
…騎士のくせに、私の事をかばってくれないなんて、最低な男ね…。

「さて、まだまだ時間はたっぷりあるんだ。エレーナ、きちんと話をしておかないとね」

…そこから先の事は、あまり覚えていない。

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