妹だけを溺愛したい旦那様は、いらない婚約者の私には出ていってほしそうなので、本当に出ていってあげます

睡蓮

文字の大きさ
2 / 6

第2話

突然に、私の運命は変わった。
それまで何気ない日常を過ごしていたというのに、それが一変した。
オレフィス第一王子様から、好意を向けられたあの日から。

「……」

それでも私は、示されたその関係を受け入れることにした。
だって、それほどまでに私の事を愛してくださっているという証拠だもの。
それに答えない方が、なんだかよくない事のような気がしてきたのだ。

私が思いを固めたあの日の事、オレフィス様は私に向けてこう言った。

『必ず君の事を幸せにして見せるとも。だから君はいつまでも僕の事を信じて、ただ黙ってついてきてほしい。決して後悔はさせないとも』

私はその言葉を信じることにした。
だって、他でもない第一王子様からの言葉だもの。
それを疑うことのほうがよっぽど不敬なのだから。

「…それが、今…」

そんな日々の事は、もうすっかり忘れられているのかもしれない。
なぜなら私の味方は、第一王子様を含めてここには誰もいないのだから。

「ねぇリアナ様、これは前にも言ったでしょう?第一王子様の婚約者になるくらいなんだからちゃんと理解しておいてもらわないと困るんだけれど?」
「ご、ごめんなさいお母様…」
「あなたはいいわよね。そうやって謝るだけでなんでも解決できるんだから。はぁ、こんな子のどこがいいっていうのかしらね。我が息子ながら全く理解できないわ…」

オレフィス様のお母様であるエミリ―様は、私の事がとにかく気に入らないらしい。
事あるごとに私の事を悪者にして、すべての罪を擦り付けようとしてくる。
私がそれに反論することは当然許されておらず、私にできる事はただただ黙って相手の言葉を受け入れる事のみだった。

そして最近になって、私の周りにおける私の扱いはさらに悪くなっていった…。

「オレフィス様から愛想を尽かされてしまったって話ですよ、彼女」
「まぁ。それって絶対リアナ様の方に問題があるに決まっているわ。だってオレフィス様、あんなにも心の広いお方なんですもの。そんなオレフィス様から愛情を冷まされるなんて…♪」

わざと私の耳に聞こえるように、周囲の人々がこそこそと私の陰口を言い始める。
…そのきっかけは全く分からないけれど、最近になって急に始まったような気がする。
その裏に誰かの存在があることはすぐにわかったけれど、それが誰であるのかまでは私にはわからなかった。

「リアナ様を選んだ事をオレフィス様は後悔しているに決まっているわ。だって、この王宮に来てからというもの自分勝手な振る舞いばかり見せているでしょう?まるでこの王宮の事を自分のものにしたかのような感じだわ」
「自分はただの第一王子様の婚約者だってことが理解できていないのかしらね?あくまで権限はオレフィス様にあって、みんなが従っているのはオレフィス様のほうなのに、自分がすべての権力を手に入れたみたいな気になっているんじゃなくって?」

ここに来て私の願いがかなえられたことなんて一度もない。
それはむしろ私が権力を濫用しているどころか、過去にないほどオレフィス様に縛られていると言ってもいいくらいなのに、周りの人には私が悪役令嬢のような振る舞いをしていると、そう見えているらしい。

「オレフィス様、もう新しい婚約者探しをされていてもおかしくないわね。だってここまで自分の思いを裏切られてしまったんですもの。当然よね」
「それならいっそのこと、オレフィス様の事を思って自分からいなくなるのがせめてものオレフィス様への恩返しなのではないかしら?だってここまで問題を大きくしてしまった張本人なのでしょう?せめて自分で決着をつけてほしいわねぇ」

向こうが本当にそう思っているのなら、私もそれでいいと思っていた。
けれど私の心の中にはどこか、まだオレフィス様の事を信用したいという思いがあった。
今私が陰口を言われているのは、私とオレフィス様の婚約関係に嫉妬した誰かがそう言わせているだけで、本当は全くそんな事を思われているわけじゃないと信じたかった。
…けれどある日の事、そんな私の切ない思いは一瞬のうちに打ち砕かれた。
他でもない、オレフィス様自身の話し声が部屋の外を歩いていた私の耳に届いてきたから…。

「どうだ、調子は。リアナを追い出す準備は順調に進んでいるか?」
「い、今のところは手筈通りに進んでいるかと思います…。リアナ様はいずれ自らの手で決断されることでしょう。どうするのがみんなのためになるのかを…」
「はぁ…。まさかここまで察しの悪い女だとは思っていなかったな…。あんな甘い言葉など、その場限りの嘘に決まっているじゃないか。それをいつまでもひきずって信用して、ここまで来てしまったんだろうな…。まったく、どこまでもおめでたい女だ…。僕の愛情はとうに枯れているというのに…」

私の事を最も愛していなかったのは他でもない、オレフィス様自身だったのだ。
…その言葉を聞いた途端、私はもう自分の心を固めた。
これ以上ここに残ることに、何の意味もないと…。

あなたにおすすめの小説

恩知らずの婚約破棄とその顛末

みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。 それも、婚約披露宴の前日に。 さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという! 家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが…… 好奇にさらされる彼女を助けた人は。 前後編+おまけ、執筆済みです。 【続編開始しました】 執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。 矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。

そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。

木山楽斗
恋愛
アルムナ・メルスードは、レバデイン王国に暮らす公爵令嬢である。 彼女は、王国の第三王子であるスルーガと婚約していた。しかし、彼は自身に仕えているメイドに思いを寄せていた。 スルーガは、ことあるごとにメイドと比較して、アルムナを罵倒してくる。そんな日々に耐えられなくなったアルムナは、彼と婚約破棄することにした。 婚約破棄したアルムナは、義弟達の誰かと婚約することになった。新しい婚約者が見つからなかったため、身内と結ばれることになったのである。 父親の計らいで、選択権はアルムナに与えられた。こうして、アルムナは弟の内誰と婚約するか、悩むことになるのだった。 ※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

氷の令嬢は愛を請わない - 捨て子の『義妹』に愛も家族も奪われたマリーローズの逆襲

恋せよ恋
恋愛
銀髪紫眼の美貌の侯爵令嬢、マリーローズ。 完璧な淑女に育った彼女だったが、母は捨て子ジュリエットを寵愛。 婚約者の公爵家嫡男アレックスも、友人も、次々に奪われる――。 家族に裏切られ、すべてを失った彼女が下した決断は、 家族を見かぎり、国を捨て、自らの人生を取り戻すこと。 理不尽な悲恋を力に変え、運命をひっくり返す令嬢の逆転劇! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

婚約破棄された公爵令嬢は心を閉ざして生きていく

おいどん
恋愛
「アメリアには申し訳ないが…婚約を破棄させてほしい」 私はグランシエール公爵家の令嬢、アメリア・グランシエール。 決して誰かを恨んだり、憎んだりしてはいけない。 苦しみを胸の奥に閉じ込めて生きるアメリアの前に、元婚約者の従兄、レオナールが現れる。 「俺は、アメリアの味方だ」 「では、残された私は何のためにいるのですか!?」

婚約した幼馴染の彼と妹がベッドで寝てた。婚約破棄は嫌だと泣き叫んで復縁をしつこく迫る。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のオリビアは幼馴染と婚約して限りない喜びに満ちていました。相手はアルフィ皇太子殿下です。二人は心から幸福を感じている。 しかし、オリビアが聖女に選ばれてから会える時間が減っていく。それに対してアルフィは不満でした。オリビアも彼といる時間を大切にしたいと言う思いでしたが、心にすれ違いを生じてしまう。 そんな時、オリビアは過密スケジュールで約束していたデートを直前で取り消してしまい、アルフィと喧嘩になる。気を取り直して再びアルフィに謝りに行きますが……

嫌いなところが多すぎるなら婚約を破棄しましょう

天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私ミリスは、婚約者ジノザに蔑まれていた。 侯爵令息のジノザは学園で「嫌いなところが多すぎる」と私を見下してくる。 そして「婚約を破棄したい」と言ったから、私は賛同することにした。 どうやらジノザは公爵令嬢と婚約して、貶めた私を愛人にするつもりでいたらしい。 そのために学園での評判を下げてきたようだけど、私はマルク王子と婚約が決まる。 楽しい日々を過ごしていると、ジノザは「婚約破棄を後悔している」と言い出した。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?

ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。 レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。 アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。 ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。 そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。 上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。 「売女め、婚約は破棄させてもらう!」