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第2話
――エリーナ視点――
お兄様は私だけのものだった。
私はお兄様にお願いすれば私の願いをなんでもかなえてくれるのだから、絶対に手放してはならない存在だった。
なのに、お兄様はつまらない婚約者を連れてきてしまった。
「(もしも、もしもお兄様がこのままお姉様の方にばかり惹かれていったら、私に向けられる愛情がなくなっていってしまう…。それだけは絶対に阻止しないといけない…)」
そう思ったあの日から、お姉様を迫害する私の戦いは始まったのだ。
そして今、ついにその戦いが終わりを迎えようとしている。
お姉様を追い出すべくあの手この手を尽くしてきた私だけれど、ようやくその最善手が思いついたのだ。
お兄様に泣きついて、お姉様との婚約関係を破棄してもらうという最善手を。
「エリーナ、話というのはなんだい?君からそんな言葉をかけてくれるのはなかなか珍しい」
「お兄様…。もうお兄様しか頼れないのです…。本当は私が自分の力で何とかしようと思っていたのですが、それも限界で…」
私は何も嘘を言っていない。
最初は自分の力だけでお姉様を追い出そうとしていたのは本当なのだから。
「どうしたんだ?君がそこまで思い詰めているだなんて…。僕が必ず君の思いを実現してみせるから、話してみるといい」
「で、でも…。これはお兄様に多大な迷惑をおかけしてしまう話でもあって…。そこまでお願いしてしまったら、自分で自分がなんと情けない妹かと…」
「心配いらない、君はどこも情けなくなんかないんだ。僕にとってこの世でたった一人の、最愛の存在なんだ。何も遠慮することはない、思っていることを素直に言うんだ」
計算していた通り、お兄様は完全に私の味方をしてくれている。
なら、言うなら今のタイミングしかない。
「実は…。私、もうお姉様とはやっていける自信がないのです…」
「それはどういうことだ?なにかあったのか…?」
「はい…」
できるだけ神妙そうな表情を浮かべて、お兄様の心をより強く引き付ける。
一度こうなったら私のものだけれど、絶対に失敗しないためにもっともっと気持ちをひきつけないと。
「私、何度も何度もお姉様とお話をしようと誘っているのですが…。お姉様は、あんたなんかと話をすることはなにもないって…。それ以外でも、私はいろいろとお姉様との距離を縮めようと頑張っているのですが、そのどれも拒絶されてしまって…。もう私、お姉様と同じ場所で暮らすのがしんどいのです…。顔を合わせるだけで罵られてしまいそうで…」
「なんだって……」
私の言っていることが嘘だなんて全く思っていない様子のお兄様は、完全に私の言葉を信じてくださっている様子。
それものそのはず、私は自分でしっかり理解しているのだ。
お兄様が私の事を溺愛してくださっていることを。
「だからお兄様、こんなお願いはよくないことは重々理解しているのですが…。私、お姉様とお兄様には結婚してほしくないのです…。お姉様はその本性を隠していて、お兄様の前で良い子ぶってるだけなのです…。私はその本性を知ってしまったので、もう関係を続ける事は…。それに、お兄様とも一緒にいてほしくはないのです…」
「エリーナ……」
「私はお兄様に心から幸せになっていただきたいのです。そしてそのお相手は、お兄様の事を心か思ってくださる方が良いと思うのです。ですが、お姉様は上面だけの感情をお兄様に見せていて、とても性格がいいとは思えないのです…。お姉様を選んだのはお兄様ですから、このような言い方は失礼になってしまうかもしれないのですが…。ごめんなさい、これが私の正直な思いなのです…」
言えるだけの言葉をとりあえずすべて言ってみた。
ここでいきなり婚約破棄を受け入れてくれるほど話はスムーズにはいかないのだろうけど、それでも私のお兄様に対する思いを受け取らせるには十分すぎる時間を過ごせたことと思う。
私は自分で自分の行動に満足していたけれど、その後お兄様から返された言葉は私の想像を大きく超えるものだった。
「そうか…。君がそこまで僕の事を思ってくれていたというのに、僕ときたらいったい今までなにを…。分かったよエリーナ、君からの言葉を僕はすべて受け入れることにしよう。ミーシャとの婚約関係は、今日をもって終わりにしようと思う。これ以上君が苦しんでいるところを見過ごすことはできないからね」
「お、お兄様…!!」
おっと、これは正直予想外だった。
今日のところはお姉様に対する信頼を損ねる程度の結果で十分だと思っていたけれど、まさかこんなスムーズに話がすすめられるとは思ってもいなかった。
「ありがとうございますお兄様!!でも、いいのですか?貴族家が一度結んだ婚約関係をそうやすやすと破棄なんてしましまっても…」
「僕にとっては君が一番大事なんだ。その君が苦しんでいるのなら、貴族のしきたりなどどうでもいい。大丈夫、すべて僕がうまくやってみせるとも。信じてくれ」
「お兄様…!!」
この時、私はもうすでに楽しみだった。
伯爵様から婚約破棄を告げられた時のお姉様のリアクションを見る事が。
お兄様は私だけのものだった。
私はお兄様にお願いすれば私の願いをなんでもかなえてくれるのだから、絶対に手放してはならない存在だった。
なのに、お兄様はつまらない婚約者を連れてきてしまった。
「(もしも、もしもお兄様がこのままお姉様の方にばかり惹かれていったら、私に向けられる愛情がなくなっていってしまう…。それだけは絶対に阻止しないといけない…)」
そう思ったあの日から、お姉様を迫害する私の戦いは始まったのだ。
そして今、ついにその戦いが終わりを迎えようとしている。
お姉様を追い出すべくあの手この手を尽くしてきた私だけれど、ようやくその最善手が思いついたのだ。
お兄様に泣きついて、お姉様との婚約関係を破棄してもらうという最善手を。
「エリーナ、話というのはなんだい?君からそんな言葉をかけてくれるのはなかなか珍しい」
「お兄様…。もうお兄様しか頼れないのです…。本当は私が自分の力で何とかしようと思っていたのですが、それも限界で…」
私は何も嘘を言っていない。
最初は自分の力だけでお姉様を追い出そうとしていたのは本当なのだから。
「どうしたんだ?君がそこまで思い詰めているだなんて…。僕が必ず君の思いを実現してみせるから、話してみるといい」
「で、でも…。これはお兄様に多大な迷惑をおかけしてしまう話でもあって…。そこまでお願いしてしまったら、自分で自分がなんと情けない妹かと…」
「心配いらない、君はどこも情けなくなんかないんだ。僕にとってこの世でたった一人の、最愛の存在なんだ。何も遠慮することはない、思っていることを素直に言うんだ」
計算していた通り、お兄様は完全に私の味方をしてくれている。
なら、言うなら今のタイミングしかない。
「実は…。私、もうお姉様とはやっていける自信がないのです…」
「それはどういうことだ?なにかあったのか…?」
「はい…」
できるだけ神妙そうな表情を浮かべて、お兄様の心をより強く引き付ける。
一度こうなったら私のものだけれど、絶対に失敗しないためにもっともっと気持ちをひきつけないと。
「私、何度も何度もお姉様とお話をしようと誘っているのですが…。お姉様は、あんたなんかと話をすることはなにもないって…。それ以外でも、私はいろいろとお姉様との距離を縮めようと頑張っているのですが、そのどれも拒絶されてしまって…。もう私、お姉様と同じ場所で暮らすのがしんどいのです…。顔を合わせるだけで罵られてしまいそうで…」
「なんだって……」
私の言っていることが嘘だなんて全く思っていない様子のお兄様は、完全に私の言葉を信じてくださっている様子。
それものそのはず、私は自分でしっかり理解しているのだ。
お兄様が私の事を溺愛してくださっていることを。
「だからお兄様、こんなお願いはよくないことは重々理解しているのですが…。私、お姉様とお兄様には結婚してほしくないのです…。お姉様はその本性を隠していて、お兄様の前で良い子ぶってるだけなのです…。私はその本性を知ってしまったので、もう関係を続ける事は…。それに、お兄様とも一緒にいてほしくはないのです…」
「エリーナ……」
「私はお兄様に心から幸せになっていただきたいのです。そしてそのお相手は、お兄様の事を心か思ってくださる方が良いと思うのです。ですが、お姉様は上面だけの感情をお兄様に見せていて、とても性格がいいとは思えないのです…。お姉様を選んだのはお兄様ですから、このような言い方は失礼になってしまうかもしれないのですが…。ごめんなさい、これが私の正直な思いなのです…」
言えるだけの言葉をとりあえずすべて言ってみた。
ここでいきなり婚約破棄を受け入れてくれるほど話はスムーズにはいかないのだろうけど、それでも私のお兄様に対する思いを受け取らせるには十分すぎる時間を過ごせたことと思う。
私は自分で自分の行動に満足していたけれど、その後お兄様から返された言葉は私の想像を大きく超えるものだった。
「そうか…。君がそこまで僕の事を思ってくれていたというのに、僕ときたらいったい今までなにを…。分かったよエリーナ、君からの言葉を僕はすべて受け入れることにしよう。ミーシャとの婚約関係は、今日をもって終わりにしようと思う。これ以上君が苦しんでいるところを見過ごすことはできないからね」
「お、お兄様…!!」
おっと、これは正直予想外だった。
今日のところはお姉様に対する信頼を損ねる程度の結果で十分だと思っていたけれど、まさかこんなスムーズに話がすすめられるとは思ってもいなかった。
「ありがとうございますお兄様!!でも、いいのですか?貴族家が一度結んだ婚約関係をそうやすやすと破棄なんてしましまっても…」
「僕にとっては君が一番大事なんだ。その君が苦しんでいるのなら、貴族のしきたりなどどうでもいい。大丈夫、すべて僕がうまくやってみせるとも。信じてくれ」
「お兄様…!!」
この時、私はもうすでに楽しみだった。
伯爵様から婚約破棄を告げられた時のお姉様のリアクションを見る事が。
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