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序章
第2話 あの日から変わった光景
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突然の出来事に動きが止まり、火柱の方へ振り向いてしまう。
『マズイッ! やられる!』
と思ったら目の前の魔物も驚いた様子で火柱の方を見ている。
あ、アタックチャンスだ。
とりあえず狼の首を目掛けて剣を振り下ろす。
そのまま横なぎにもう1匹にも切りつけ仕留めた。
火柱の方では剣を振るう2つ人影が見えた。
そしていつの間にか、目の前に黒髪で背の小さい少女が立っていた。
「援軍に来ましたクラン”ブルータクティクス”のマスター、セラーナです! 皆さん無事ですか!?」
「えっ……あぁ、大丈夫だ。援軍? もう来てくれたのか!?」
「ゲイルさんからお話を聞いて急いできました。もう大丈夫です!」
黒髪の少女はにっこりとほほ笑む。
女神のようだ。
援軍に来てくれたのは少女を入れて4人だったが、あっという間に魔物の殲滅が終わっていた。
つえぇ……。なんじゃこりゃぁ……。
不意打ちの魔法があったとはいえ、アッと今に残りのブラッドウルフたちを片付けていった。
部下たち3人も無事なようだが、あまりの展開に放心状態だった。
ブラッドウルフを片付けた3人が近づいてくる。
1人はガタイのいいヒト族の男、もう1人もヒト族で、黒髪に細身の男だ。
この2人が剣を振るっていたのだろう。
残るはダークエルフの女で、おそらく魔法を放ったのはこの人だ。
皆まだ若く、成人になったばかりに見える。
3人ともセラーナさんの前で止まり、細身の男が話した。
「セラーナ、この辺りにはもう魔物はいないみたいだ。ワームホールは向こうの方だね。封じに行こう」
細男は3㎞ほど離れた位置にあるワームホールの方向を正確に指さした。
「うん、わかった」
セラーナさんは返事をした後、こちらに振り向いて言った。
「この辺りはもう安全です。私たちはこれからワームホールの処理に向かいますので、後の事は皆さんにお任せしてよろしいですか?」
「あ、あぁ、もちろんだ! 任せてくれ! とにかくありがとう! あなたたちが来なかったら今頃全滅していただろう。本当にありがとう!」
部下たちも口々にお礼を言う。
何度言っても足りないくらいだ。
あと1分、いや、30秒でも来てくれるのが遅かったら、俺たちは死んでいた。
もしかしたら村人たちにも被害が出ていたかもしれない。
そして、勝手な行動をし、自分たちも助けられる側となってしまったことを反省した。
「それから……、余計な真似をしてすまない……。出過ぎた真似だったかもしれないが、村が襲われるのを黙ってみていたくはなかったんだ……」
俺は頭を下げてセラーナさんに謝罪する。部下たちも揃って頭を下げる。
「いえ、頭を上げてください。むしろ胸を張ってください。皆さんはゲイルさんを連絡に出した後、村人には適切な避難指示を出し、更には身を挺して村人の皆さんを守ってくれました。その的確な判断があったからこそ、私たちは間に合ったんです。あなたたちの行動が無ければ、それこそ村が全滅していたかもしれません」
「そういってくれるとありがたいが……」
自分だけならまだしも、部下も危険に曝してしまったことは事実だ。
俺たちが死んでしまえば、その後の魔物の情報が負えなくなってしまう。
その時、倉庫から村人たちが出てきた。
声が聞こえてバリケードを取り除いていたようだ。
「ウェイクさんたちがいなかったら俺たちは絶対に死んでいた! あなたたちみんなのおかげだ! ありがとう!!」
1人の村人がそういうと、他の村人たちも同意していた。
「ほら、村人の皆さんも仰ってます。ギルドには『ウェイク隊長率いる巡回部隊の的確な判断と、身命を賭して他者を守るという正義の行動により、死者負傷者ゼロで魔物の討伐完了という結果に至った』と報告しておきますね」
セラーナさんは微笑みながらそう言ってくれた。
あかん、惚れてまうやろ!
「ではそろそろ行きますね。村の皆さんも無事でよかったです! 後始末、申し訳ないですがお願いします!」
見惚れてボケーっとしていると、セラーナさんは仲間たちと共にワームホールの方へ走っていった。
「「「いってらっしゃ……早っ!!」」」
あっという間に見なくなった。
魔法だろうか? そりゃ街からここまであの短時間で間に合うわけだ。
「「ありがと~! 御馳走するから今度遊びに来てね~!!」」
村人たちが声を届けようと叫んでいた。
それは良い事だ。
お礼は大事なことだ。
俺も今度会ったら今日のお礼に食事でも御馳走しようと思う。
命を救ってもらった恩は返さねばならない。
命なんだから1回御馳走したくらいじゃ足りない。
俺の命はそんなに安くはないはずだ。
だから何度でも御馳走しよう。
決してお近づきになりたいとか、少しでも話がしたいとか思っているわけではない。
心からお礼がしたいだけなのだ。
生き延びたこと、そしてあなたに出会えたことへの感謝を伝えたい。
俺は義理堅い漢なのだ。
うむ。
その後、村人たちと一緒にブラッドウルフの死骸を片付けていく。
魔法で燃えた分もあったが、ギルドに持っていくと買い取ってもらえる。
未だ不明な点が多い魔物の生態や、素材の活用法の研究のために使われるのだ。
中には剥製にして飾ろうとする金持ちもいるらしい。
討伐した魔物の権利は基本的に討伐者にある。
この場合はもちろんブルータクティクスの面々に権利があるが、彼女らはもう一仕事あるようなので代わりにギルドに運んでおこう。
偶然また会うきっかけが出来ちゃったが、これもお礼の一つなのだ。
後始末が終わると、地面に血のシミや焼け焦げた跡などが若干あるが、人や家屋などに被害はなく、穏やかな日常が戻ってきた。
人々は自宅に帰ってゆく。
静けさに包まれるが、先ほどまでの重くのしかかるような静けさまるで違う。
やはり、平和である事を何よりも喜びを感じる。
しかし、数か月前まではこれが日常だった。
物足りなくなるくらいの平和な日々は、魔物の出現とともに終わった。
その当たり前だったものを取り戻すために、現在人々が力を合わせている。
全てはあの時から始まった。
そう、5か月前、人々に神様から啓示があったあの時から――
『マズイッ! やられる!』
と思ったら目の前の魔物も驚いた様子で火柱の方を見ている。
あ、アタックチャンスだ。
とりあえず狼の首を目掛けて剣を振り下ろす。
そのまま横なぎにもう1匹にも切りつけ仕留めた。
火柱の方では剣を振るう2つ人影が見えた。
そしていつの間にか、目の前に黒髪で背の小さい少女が立っていた。
「援軍に来ましたクラン”ブルータクティクス”のマスター、セラーナです! 皆さん無事ですか!?」
「えっ……あぁ、大丈夫だ。援軍? もう来てくれたのか!?」
「ゲイルさんからお話を聞いて急いできました。もう大丈夫です!」
黒髪の少女はにっこりとほほ笑む。
女神のようだ。
援軍に来てくれたのは少女を入れて4人だったが、あっという間に魔物の殲滅が終わっていた。
つえぇ……。なんじゃこりゃぁ……。
不意打ちの魔法があったとはいえ、アッと今に残りのブラッドウルフたちを片付けていった。
部下たち3人も無事なようだが、あまりの展開に放心状態だった。
ブラッドウルフを片付けた3人が近づいてくる。
1人はガタイのいいヒト族の男、もう1人もヒト族で、黒髪に細身の男だ。
この2人が剣を振るっていたのだろう。
残るはダークエルフの女で、おそらく魔法を放ったのはこの人だ。
皆まだ若く、成人になったばかりに見える。
3人ともセラーナさんの前で止まり、細身の男が話した。
「セラーナ、この辺りにはもう魔物はいないみたいだ。ワームホールは向こうの方だね。封じに行こう」
細男は3㎞ほど離れた位置にあるワームホールの方向を正確に指さした。
「うん、わかった」
セラーナさんは返事をした後、こちらに振り向いて言った。
「この辺りはもう安全です。私たちはこれからワームホールの処理に向かいますので、後の事は皆さんにお任せしてよろしいですか?」
「あ、あぁ、もちろんだ! 任せてくれ! とにかくありがとう! あなたたちが来なかったら今頃全滅していただろう。本当にありがとう!」
部下たちも口々にお礼を言う。
何度言っても足りないくらいだ。
あと1分、いや、30秒でも来てくれるのが遅かったら、俺たちは死んでいた。
もしかしたら村人たちにも被害が出ていたかもしれない。
そして、勝手な行動をし、自分たちも助けられる側となってしまったことを反省した。
「それから……、余計な真似をしてすまない……。出過ぎた真似だったかもしれないが、村が襲われるのを黙ってみていたくはなかったんだ……」
俺は頭を下げてセラーナさんに謝罪する。部下たちも揃って頭を下げる。
「いえ、頭を上げてください。むしろ胸を張ってください。皆さんはゲイルさんを連絡に出した後、村人には適切な避難指示を出し、更には身を挺して村人の皆さんを守ってくれました。その的確な判断があったからこそ、私たちは間に合ったんです。あなたたちの行動が無ければ、それこそ村が全滅していたかもしれません」
「そういってくれるとありがたいが……」
自分だけならまだしも、部下も危険に曝してしまったことは事実だ。
俺たちが死んでしまえば、その後の魔物の情報が負えなくなってしまう。
その時、倉庫から村人たちが出てきた。
声が聞こえてバリケードを取り除いていたようだ。
「ウェイクさんたちがいなかったら俺たちは絶対に死んでいた! あなたたちみんなのおかげだ! ありがとう!!」
1人の村人がそういうと、他の村人たちも同意していた。
「ほら、村人の皆さんも仰ってます。ギルドには『ウェイク隊長率いる巡回部隊の的確な判断と、身命を賭して他者を守るという正義の行動により、死者負傷者ゼロで魔物の討伐完了という結果に至った』と報告しておきますね」
セラーナさんは微笑みながらそう言ってくれた。
あかん、惚れてまうやろ!
「ではそろそろ行きますね。村の皆さんも無事でよかったです! 後始末、申し訳ないですがお願いします!」
見惚れてボケーっとしていると、セラーナさんは仲間たちと共にワームホールの方へ走っていった。
「「「いってらっしゃ……早っ!!」」」
あっという間に見なくなった。
魔法だろうか? そりゃ街からここまであの短時間で間に合うわけだ。
「「ありがと~! 御馳走するから今度遊びに来てね~!!」」
村人たちが声を届けようと叫んでいた。
それは良い事だ。
お礼は大事なことだ。
俺も今度会ったら今日のお礼に食事でも御馳走しようと思う。
命を救ってもらった恩は返さねばならない。
命なんだから1回御馳走したくらいじゃ足りない。
俺の命はそんなに安くはないはずだ。
だから何度でも御馳走しよう。
決してお近づきになりたいとか、少しでも話がしたいとか思っているわけではない。
心からお礼がしたいだけなのだ。
生き延びたこと、そしてあなたに出会えたことへの感謝を伝えたい。
俺は義理堅い漢なのだ。
うむ。
その後、村人たちと一緒にブラッドウルフの死骸を片付けていく。
魔法で燃えた分もあったが、ギルドに持っていくと買い取ってもらえる。
未だ不明な点が多い魔物の生態や、素材の活用法の研究のために使われるのだ。
中には剥製にして飾ろうとする金持ちもいるらしい。
討伐した魔物の権利は基本的に討伐者にある。
この場合はもちろんブルータクティクスの面々に権利があるが、彼女らはもう一仕事あるようなので代わりにギルドに運んでおこう。
偶然また会うきっかけが出来ちゃったが、これもお礼の一つなのだ。
後始末が終わると、地面に血のシミや焼け焦げた跡などが若干あるが、人や家屋などに被害はなく、穏やかな日常が戻ってきた。
人々は自宅に帰ってゆく。
静けさに包まれるが、先ほどまでの重くのしかかるような静けさまるで違う。
やはり、平和である事を何よりも喜びを感じる。
しかし、数か月前まではこれが日常だった。
物足りなくなるくらいの平和な日々は、魔物の出現とともに終わった。
その当たり前だったものを取り戻すために、現在人々が力を合わせている。
全てはあの時から始まった。
そう、5か月前、人々に神様から啓示があったあの時から――
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