神様に貰ったスキルで世界を救う? ~8割方プライベートで使ってごめんなさい~

三太丸太

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第三章 異変の始まり

第38話 初討伐の後に

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 先程まで会議をしていた部屋に戻り、一息ついてからオレたちが体験していたことをリッツィ王子が皆に説明した。
 特に、魔物も魔法やスキルを使うことについてだ。
 そして色々と質問が飛んでくる。

「ボス以外の魔物も魔法やスキルを使っていたんですか?」
「いえ、そこまでは確認出来ませんでした。魔物もスキルを使うかもって思ったのが部下を倒し終わった後だったので」
「全ての魔物が使えるのかどうかはわからないが、使えると思っておいた方が安全だろうな」

 次々とくる質問に対してオレやリッツィ王子が答えていく。
 次は自分たちが戦う可能性があるんだし、みんな真剣だ。

「魔物も魔法やスキルを使うとなると、やはり狩りで動物を相手にするのとは異なるな……。先ほど話していた『初めのうちはCランク以上で討伐』というのは実に妙案だ」

 E、Dランクのハンターを多数抱えるベイズさんも改めて納得のようだった。

「それに早期発見の重要性も確認できたでござるな。本日もヴィト殿が気付かなければ、王都にも魔物がやってきていたかもしれぬ。しかし、<ワームホール>が発生しても適切に対処できれば被害も起きないでござる」
「まさに。巡回部隊の重要性を我がクランの者たちにもしっかり伝えておこう」

 ベイズさんやディリムスさんも、もちろん他のみんなも今回の件で早期発見早期対応の重要性が身に染みて理解できたようだった。

「ところでヴィトさんはどうして<ワームホール>に気がつけたのですかな?」

 ベイズさんがオレに訪ねてきた。

「自分でもわからないのですが……。何か嫌な予感というか、不快な感覚がしたんです。部屋に誰もいないのに誰かいるような感覚みたいなことを皆さんも経験ありませんか? あれをもっと強くはっきりとした感じなんですよね」

 自身としても初めての経験なので上手く説明できないが、イメージとしてはそんな感じだった。

「なるほど。<ワームホール>の気配というものがあるのかもしれませんな。それを某たちも分かるようになれればいいのでござるが……」
「セラーナも感じていたという事は、結界魔法を使える人なら<ワームホール>の出現を探知できるのかもしれないですね。何となく結界がある時と同じような違和感がありますので」

 あの時すぐにセラーナに確認したのもその理由からだった。
 タックやグウェンさんは感じれなかったようだし、ススリーも結界魔法はまだ練習していないからか、嫌な感じはあったけど方向などはよくわからなかったようだった。

「結界魔法とはどういったものでござるか?」
「ええと、なんか封印したり閉じ込めたりとか色々するやつです」
「そんな魔法があるのですね。しかし、その魔法を使える者が発生を探知できる可能性があるというのであれば、ハンターギルドの登録者の中にいないか確認してみるべきですね」

 ざっくりとした説明だけど、何となく分かってもらえただろうか。
 まぁ後の事はインフェリテスさんが調べてみるみたいだし、お任せしておこう。

「やはり我々もスキルや魔法について知らないことも多い。情報交換や共有が出来る場所を設けた方がいいかもしれないな」
「殿下、私も賛成です。ギルドの方でスキルや魔法についても皆さんから意見や情報を集めていきます。それを講習会や講演会などで周知していけるように致しましょう」
「頼むぞインフェリテス。その際にはここにいる皆さんの力も貸して頂きたいと思います。よろしくお願いします」

 またリッツィ王子が頭を下げてきたので、オレたちも慌てて頭を下げた。
 その後もしばらく話し合い、結局会議が終わったのは夕方だった。
 殆どの人が王都外から来ているので、王都滞在用にくれた家に泊まるべく、案内役に連れられて部屋を出ていった。
 オレたちも案内してもらおうと思ったところ、リッツィ王子に話しかけられた。

「“ブルータクティクス”の皆、今日は本当に助かった。感謝する」
「いえ、たまたまですから! 気にしないでください!」

 またしても頭を下げてきたリッツィ王子と、慌てて頭を下げるオレたち。
 王族がそんな簡単に頭を下げちゃいけない気がするので、もう止めてほしい。

「しかし、君たちがいなければ<ワームホール>の発見が遅れ、この王都にも被害が出ていた可能性もある。君たちがいてくれて本当に良かった。これも神のご加護かもしないな」
「そうですね。運が良かったです」

 本当に神様が何かしたのかな?
 そういえば用があったら教会へと言われていたけど、結局一回も行っていなかったな。
 今度行っておかないと。

「ところで、君たちはお告げを神様から受けていないか?」
「えっ?」
「やはりそうだったみたいだな」

 少し微笑んで一人納得するリッツィ王子。
 驚いて固まった様子を見てバレたらしい。

「王国が調査した所、殆どは天使からのお告げだったが、中には神様からお告げを受けたという報告が何件かあったんだ。そしてその人たちは極めて高いLvのスキルを持っていた。君たちのように」
「他にもいたんですか? その人たちは今どこにいますか?」
「一方はメイベルという街に住む2人の姉妹だった。もう一方はプラントという青年で、王都に在住の様だった。しかし、ハンター登録の手続きに来たものの、結局手続きをせずに帰ってしまったみたいで、住居まではわかっていないのだ。現在知っている者がいないか探しているんだが、見つからずでね……」

 メイベルの街はセラーナの故郷であるロレンシアの方向だな。
 セラーナの里帰りついでに会いに行ってみてもいいかもしれない。
 プラントという人も王都にいるなら"スキャン”しながら歩いていれば見つかるかもしれないな。

「王都在住の人を王族が探しても見つからないって何かすごいですね。会って話を聞いてみたいなぁ。メイベルに住む姉妹を尋ねてみても良いでしょうか?」
「君たちが連絡を取ってくれるとありがたい。彼女らも青年もクランには入らなかったようで、なかなかこちらから働きかけるわけにもいかなくてね……。一応、必要であれば王国とギルドから紹介状を持たせるから、会いに行く際は言ってくれ。」
「あ、ありがとうございます。恐縮です……」


 どんな人たちかはわからないが、神様のお告げを受けた人なら仲間となる人なのかもしれない。
 姉妹と青年に会いに行ってみてもいいかもしれないな。
 いきなりいっても驚くかもしれないので、一応リッツィ王子とギルドから手紙を貰うのもいいかもしれない。
 でも言ってくれと言われても『今から行ってきますんで手紙書いて下さい』って頼むわけにいかないしなぁ。
 やはり後でみんなと相談しよう。

 初めての王城、初めての王子様、初めての〈ワームホール〉と魔物討伐など、初めて尽くしの1日が終わり、流石に疲れたオレたちは王城を後にして貰った家へと向かった。
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