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第四章 討伐依頼
第60話 依頼は達成しなければならない
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ヘスラーの匂いを辿り、後を追っていく。
村の方からは反対の、離れた方向へ向かっていたようだった。
鬱蒼とした森の中、一際大きな木の根元に出来た洞の中に、ヘスラーがいた。
すかさず“スキャン”でスキルを確認する。
火魔法Lv6,雷魔法Lv7、闇魔法Lv6と“黒い牙”というスキルを持っており、クロウリーと兄弟という事が窺い知ることが出来る。
ヘスラーも怪我をしているようで、地面に伏せたまま顔だけをこちらに向けた。
「クロウリー……。お前、傷は……」
「あぁ、このヒト族が治してくれた」
「そうか……」
ヘスラーはゆっくりと起き上がる。
ヘスラーの毛が逆立ち、身の回りに濃色の雷がバチバチと音を立てながら生じ始める。
大気が揺れ、全員が戦闘態勢に入る。
しかし、その前に確認しなければならない。
「ちょっと待て。お前は何で人を襲ったんだ?」
「……。貴様に話す必要はない」
「いや、ある。オレはお前が殺した夫婦と傷つけた女の子の家族から依頼をされてきた。お前を倒してほしいと」
ヘスラーの目が僅かに見開き、一瞬大気の揺らぎが弱まった。
「あのヒト族の……。フン、死にぞこないがいたのか。関係ない。いずれ皆殺しにしてやる」
「じゃあどうしてその後、村を襲いに行かなかった?」
「……」
「今回も傷を負ったとはいえ、その程度なら支障はないはずだ。なぜ村に行かない? むしろ村から離れて森の奥にやってきたのはなんでだ?」
「貴様には関係ない!」
エイミーちゃんとクロウリーの話を聞いて、何かおかしいと感じていた。
本当に人に憎しみを抱いているのであれば、直ぐに行動に移してもいいはずだった。
それなのに、クロウリーに止められていたとはいえ、エイミーちゃん達を襲った以外に犠牲者が出ていないのは、良いことなのだが少なすぎる。
聞いていた経過や内容、行動などから、ちょっと悪ぶった子供の様にしか感じられなかったのだ。
「お前、本当は殺すつもりはなかったし、後悔してるんじゃないのか?」
「なっ……」
身に纏っていた雷が消え、明らかに動揺が見えた。
「不安を誤魔化すために強がって悪態をついていただけなんだろ?」
「違うっ!」
「人を襲ったのも、ちょっと脅かすつもりが力加減を間違えてしまったんじゃないのか?」
「うるさいっ! ヒト族など皆殺しだっ!」
バチッっと激しい音が鳴り、濃色の雷がオレに向かってくるが、あえて避けない。
同じ魔法を身に纏うように広げ、魔法を受け流して左手に集めていく。
左手には濃色の雷の玉が出来上がり、それをそのまま打ち返してやっても良かったが、力の差を見せつけるために握りつぶして見せた。
「な、なんだとっ……!?」
驚愕の表情を浮かべるヘスラーだったが、隣でクロウリーも驚いていた。
それを無視してオレは続ける。
「クロウリーを襲ったのも、後に引けなくなってどうしたらいいか分からなくなったんだろ?」
恐らく故郷に帰れず、不自由な時間を過ごしていくうちに、不満が溜まっていたのだろう。
理不尽な状況に対する愚痴や強がりをクロウリーにこぼしている内に、段々とその気になって来て、自由に生活している現地の人々を妬ましく思ったのは事実なのだろう。
ただ、偶々出会ったエイミーちゃんたちに八つ当たりをしてしまった。
そして、思ったよりも人は弱く、命を奪ってしまった。
クロウリーに咎められても、今更引っ込みがつかなくなり、クロウリーにまで手を上げてしまったが、その後どうしたらいいかもわからなくなり、森の奥深くに逃げ込んだ。
「黙れっ!! だったらどうした!!」
「お前には同情する部分もあるよ。でも、オレは『魔物を倒して』という依頼を受けてきたからそれを果たさなきゃいけないんだ。だからごめんな。見逃すわけにはいかないんだ」
同情の余地はあるし、今話した感じだとこれ以上人を襲ったりすることはないと思うけど、依頼を受けた以上、それは果たさなければならない。
『任せてほしい』と皆に目配せをし、オレは剣を右手に持ちゆっくりとヘスラーに近づいていく。
ヘスラーはわずかに逡巡た後、咆哮を上げオレに飛び掛かってきた。
しかし、殺意や脅威は感じられず、見せかけだけの咆哮と攻撃だった。
飛び掛かったものの、返り討ちにあってしまったという形にし、自ら命で償おうとしているのだろう。
依頼を受けた以上、オレもヘスラーを殺すつもりだ。
オレを殺すためではなく、自らが死ぬための攻撃を躱しながら、その首に向かって剣を振るう。
毛、皮膚、肉、骨を切り裂き、ヘスラーの太い首を一瞬で刃が通り抜ける。
飛び掛かってきた勢いのまますれ違い、オレの後方でトスッと軽い音がした。
そのままヘスラーは動かなかった。
村の方からは反対の、離れた方向へ向かっていたようだった。
鬱蒼とした森の中、一際大きな木の根元に出来た洞の中に、ヘスラーがいた。
すかさず“スキャン”でスキルを確認する。
火魔法Lv6,雷魔法Lv7、闇魔法Lv6と“黒い牙”というスキルを持っており、クロウリーと兄弟という事が窺い知ることが出来る。
ヘスラーも怪我をしているようで、地面に伏せたまま顔だけをこちらに向けた。
「クロウリー……。お前、傷は……」
「あぁ、このヒト族が治してくれた」
「そうか……」
ヘスラーはゆっくりと起き上がる。
ヘスラーの毛が逆立ち、身の回りに濃色の雷がバチバチと音を立てながら生じ始める。
大気が揺れ、全員が戦闘態勢に入る。
しかし、その前に確認しなければならない。
「ちょっと待て。お前は何で人を襲ったんだ?」
「……。貴様に話す必要はない」
「いや、ある。オレはお前が殺した夫婦と傷つけた女の子の家族から依頼をされてきた。お前を倒してほしいと」
ヘスラーの目が僅かに見開き、一瞬大気の揺らぎが弱まった。
「あのヒト族の……。フン、死にぞこないがいたのか。関係ない。いずれ皆殺しにしてやる」
「じゃあどうしてその後、村を襲いに行かなかった?」
「……」
「今回も傷を負ったとはいえ、その程度なら支障はないはずだ。なぜ村に行かない? むしろ村から離れて森の奥にやってきたのはなんでだ?」
「貴様には関係ない!」
エイミーちゃんとクロウリーの話を聞いて、何かおかしいと感じていた。
本当に人に憎しみを抱いているのであれば、直ぐに行動に移してもいいはずだった。
それなのに、クロウリーに止められていたとはいえ、エイミーちゃん達を襲った以外に犠牲者が出ていないのは、良いことなのだが少なすぎる。
聞いていた経過や内容、行動などから、ちょっと悪ぶった子供の様にしか感じられなかったのだ。
「お前、本当は殺すつもりはなかったし、後悔してるんじゃないのか?」
「なっ……」
身に纏っていた雷が消え、明らかに動揺が見えた。
「不安を誤魔化すために強がって悪態をついていただけなんだろ?」
「違うっ!」
「人を襲ったのも、ちょっと脅かすつもりが力加減を間違えてしまったんじゃないのか?」
「うるさいっ! ヒト族など皆殺しだっ!」
バチッっと激しい音が鳴り、濃色の雷がオレに向かってくるが、あえて避けない。
同じ魔法を身に纏うように広げ、魔法を受け流して左手に集めていく。
左手には濃色の雷の玉が出来上がり、それをそのまま打ち返してやっても良かったが、力の差を見せつけるために握りつぶして見せた。
「な、なんだとっ……!?」
驚愕の表情を浮かべるヘスラーだったが、隣でクロウリーも驚いていた。
それを無視してオレは続ける。
「クロウリーを襲ったのも、後に引けなくなってどうしたらいいか分からなくなったんだろ?」
恐らく故郷に帰れず、不自由な時間を過ごしていくうちに、不満が溜まっていたのだろう。
理不尽な状況に対する愚痴や強がりをクロウリーにこぼしている内に、段々とその気になって来て、自由に生活している現地の人々を妬ましく思ったのは事実なのだろう。
ただ、偶々出会ったエイミーちゃんたちに八つ当たりをしてしまった。
そして、思ったよりも人は弱く、命を奪ってしまった。
クロウリーに咎められても、今更引っ込みがつかなくなり、クロウリーにまで手を上げてしまったが、その後どうしたらいいかもわからなくなり、森の奥深くに逃げ込んだ。
「黙れっ!! だったらどうした!!」
「お前には同情する部分もあるよ。でも、オレは『魔物を倒して』という依頼を受けてきたからそれを果たさなきゃいけないんだ。だからごめんな。見逃すわけにはいかないんだ」
同情の余地はあるし、今話した感じだとこれ以上人を襲ったりすることはないと思うけど、依頼を受けた以上、それは果たさなければならない。
『任せてほしい』と皆に目配せをし、オレは剣を右手に持ちゆっくりとヘスラーに近づいていく。
ヘスラーはわずかに逡巡た後、咆哮を上げオレに飛び掛かってきた。
しかし、殺意や脅威は感じられず、見せかけだけの咆哮と攻撃だった。
飛び掛かったものの、返り討ちにあってしまったという形にし、自ら命で償おうとしているのだろう。
依頼を受けた以上、オレもヘスラーを殺すつもりだ。
オレを殺すためではなく、自らが死ぬための攻撃を躱しながら、その首に向かって剣を振るう。
毛、皮膚、肉、骨を切り裂き、ヘスラーの太い首を一瞬で刃が通り抜ける。
飛び掛かってきた勢いのまますれ違い、オレの後方でトスッと軽い音がした。
そのままヘスラーは動かなかった。
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