さようしからばこれにてごめん 愚かな貴方達とは、もう会いたくありません!

白雪なこ

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「ご両親とは先週ここのカフェでお会い出来た時に、いつでも歓迎しますと言っていただいたしな。今日から世話になるとするかな。」
「うん。来て来て!」

 領土の形状により、移動が難しいこの国の常識では、わざわざ顔見せのためだけに、実家に帰る王立学園生はほどんどいない。卒業後の引っ越しも、入学時と同じく、ほぼ身一つで移動する。必要なものがあれば、移動先で調達は、旅人と同じだ。ただ、王都内に実家がある場合は、「家から出す子供」のための荷物を積んだ迎えの馬車が来て、予定している場所に送ってくれることもある。

 しかし、優秀なユーリが今日、学園を卒業したことを、親はまだ知らないのだから、ユーリも親も、今日この日に何の準備もできていなくても仕方がないことだ。

 ユーリの母親の住まいはそこまで遠方ではないが、馬に無理をさせる悪道は、馬車に乗る人間にも辛いものなので、手紙で済むなら手紙で済ませてしまった方が楽ではあった。ついでに、婚約者が貴族ではなくなったことにいち早く気づき、婚約破棄してやったことを報告し、流石ユーリだと、母や祖父母にも褒めてもらい、アンリタンの家への持参金を増やしてもらえれば尚良しである。

「私の荷物は実家に手紙を書いて送ってもらおう。」
「うん。それが良いよ!」
「うむ。私は、あそこで土産の菓子を買ってこよう。アンリタンはその間に、サインを済ませておいてくれるか?」
「うん、わかった!パパもママもお菓子が好きだから、沢山買ってきてね!」

 やっとユーリの身体から離れたアンリタンに、ずっと待ちぼうけだった婚姻課の責任者が、すかさず声をかける。

「では、お嬢さんは、ここにサインを」

「ハイハイ。ここに書くのね!えーと、えーとぉ!ちょっと待って、思い出すから!あ、あ、ア!ん、ん、ン!り、り、リ!よし!書けたわ!多分、ちゃんと書けてるはず!ねえ、お姉さん、ちゃんとアンリって書けてるでしょう?あれ?ユーリはクンまでつけていたから、私もタンをつけるべき?」
「お名前はアンリ様で、アンリタンは愛称と言うことであれば、タンは必要ありません」
「そっかあ、じゃあ、私はアンリであってます。ユーリは間違えたのかも?」
「はい、アンリと書かれています。間違えていても、文字は自動で訂正されますので問題ありません」

 アンリタンは、誤解しているが、ユーリの場合はユーリクンが正式な名前である。

(クンが愛称ではないことを、あのアンリタンって子は、多分生涯気づかないだろうな。通りすがりの王都中央役所戸籍管理課部長 L氏談)

「なあんだっ、間違えてもダイジョーブなんだ。緊張して損しちゃった!えーと、書けたら、こっちの箱にいれれば良いんでしょ?えい!!」

「………問題なく受理された様ですね。この度はご結婚おめでとうございます!」
「ありがとぉ!ねえ、私もうユーリの奥様なの!?やったぁ!」

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