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トレンダム辺境伯嫡男の婚姻は、前辺境伯夫妻が視察先で魔物に襲われ、怪我をしたことで、急がれた。前辺境伯夫妻が怪我から復帰するには時間がかかりそうであり、寝台から起き上がったとしても、以前と同じ様に辺境伯の仕事を熟すのは難しいと判断されたため、嫡男に爵位を譲ることにしたのだ。現在は、魔物被害の対策で余裕がない為、結婚式を執り行うのは、前辺境伯夫妻が歩けるようになってからとし、ルマルド侯爵家の次女と結婚した。
ルマルド侯爵家は、トレンダム辺境伯領とは、王都を挟んだ反対方向に領地を持つ。数年前から、婚約者がまだいない、評判の良い姉妹がいるとして、候補にあげていた家だった。多産の家系だと聞く。
辺境での嫁取りは、難しい。王都貴族とのやり取りを考えれば、家の格を落とすわけにはいかないので、平民や下位貴族ではダメだ。伯爵家よりは、侯爵家か公爵家の娘が良い。緊急時に当主の代わりに状況判断できる賢さと執務能力も必要だし、一族や領民に対する思い遣りがあり、出来れば多産な女性が好ましい。
由緒ある辺境伯といえど、辺境であることは否定できない。領都はそれなりに発展しているが、王都のそれと比べると華やかさにかける。辺境内や近隣の貴族との交流はあれど、毎週の豪華なパーティや華やかなお茶会などはないも同然だ。王都の流行りの情報も伝わるのが遅い。辺境伯家としては、いざというときのためにも、有力な貴族と縁を結んでおきたいが、王都で暮らすような貴族の子女は、辺境を嫌う。
ルマルド侯爵家の領地は、トレンダム辺境伯の領地程、王都から離れていないが、田舎といえば田舎な土地である。社交シーズンには王都に滞在しているが、侯爵家一家の住まいは領地の屋敷であり、王都にある屋敷から離れるのを嫌がり、パーティ三昧な家族がいるという噂も聞かない。程よく年頃の、評判の良い娘達がいる。
トレンダム辺境伯嫡男の婚約者候補は他にも数人いたが、まだギリギリ未成年であったり、他の家との婚約の話が持ち上がっていたりで、すぐに嫁いでもらえるのは、ルマルド侯爵家の次女シルビナだけとなった。どうやらルマルド侯爵家の他の姉妹は婚約が決まってしまったらしい。美しく賢いと評判だった長女以外の娘達の個別の情報はないが、妹達にも優秀な娘が多いと聞くので、シルビナだけでも残っていてくれたことに、トレンダム辺境伯は安堵した。
この時に、もう少しシルビナ個人のことも調べていればよかったが、元々候補者が多数いる条件の良い家だったことで、それを怠ってしまった。後の祭りである。
シルビナは、茶色の髪と目をした、平均程度の身長の、細身だが部分的にふくよかな女性だ。特別に不細工ではないが美女でもない。地味で目立たない、平凡なその顔だけ見れば、主張がなさそうで、大人しくみえる女性だが、気弱ではないらしい。両親に逆らわず、長女を立て、妹達を厳しく叱りつけることができる娘だと聞いた。領地にある女子学園での成績も悪くなかったらしい。
貴族の子女とて勉強だけしていれば良いわけではないので、家で家庭教師をつけて既に学園卒業レベルの学習を済ませている子女は、教師の出す課題に対する提出物をきちんと出せば卒業できる。シルビナは、サボらずに、すべての課題を提出し、優評価で卒業したと聞いた。秀評価の長女が有名だったが、妹も優秀と聞いていたので、評判通りだ。
とにかく、トレンダム辺境伯嫡男の結婚相手は決まった。
消去法ではあったが、それは相手も同じこと。他に条件が良い相手がいれば、仮病でも何でも使って、結婚を急ぐトレンダム辺境伯嫡男の候補から外されるようにしただろう。
20歳だという、ルマルド侯爵家の次女シルビナは、特に揉めることなく、トレンダム辺境伯嫡男のジークスに嫁いできた。ルマルド侯爵家との話し合いで、婚姻時には結婚式ができないことの承諾も得ている。あちらとしても、前辺境伯夫妻がある程度回復し、親族としての付き合いもできる様になってからの方が良いらしい。
22歳のジークスには年の離れた12歳の妹クラーラと9歳の弟トーマスがいる。一族としては、辺境伯を支えてくれる叔父夫妻達、父の弟カールとアーノルドの2人とその妻はいるが、弟妹はまだ幼く、2組の叔父夫妻は、戦士同士のカップルなので、辺境伯夫人の代理で仕事をこなせる人材ではない。今は、母の右腕だった侍女達と、執事長と家政婦長が手分けすればなんとかなってはいるが、各自の仕事もある中、母親が回復するまで続けるのは厳しい。
書類上の婚姻手続きを終え、ジークスの妻となったシルビナを、ジークスとその家族は歓迎した。のんびりしている時間はなかったが、この日だけは、簡単な祝いの席を儲け、弟妹と叔父夫妻を交え、夫婦としての初日を祝った。
残念ながら、療養中の両親は意識が回復したばかりだったので、参加はできず、挨拶は双方が落ち着いてきた後日に持ち越しすることにしたが、それなりに良い雰囲気で歓迎の宴を終えられたと、ジークスは思った。
弟妹はいるが、両親の状態を考えれば、子供は早く欲しい。
緊張しながらも初夜を迎えようとしたジークスに、シルビナは「生憎と、月のものが来てしまいました」と告げた。数日待てば良いのかと聞けば、まだもっと先だという。
辺境伯夫人としてこの領地になれ、仕事を覚えないといけない。今妊娠し、体調を崩すわけにはいかない。初夜で体調を崩す可能性もある。
だから、もう少しこちらの暮らしに慣れてからにしましょう。後継は欲しいでしょうけど、今産まなければ一族が絶えるわけではないのですから。
そう言われてしまえば、無理強いはできない。結婚したばかりなのに、即離婚はしたくないし、妊娠1ヶ月目ごろからの不調で動けなくなった侍女を見たことがあったので、慣れない場所で前任者である義母の助けもなく、辺境伯夫人として立ってくれる気があるのだから、有難いと思わねばと、受け入れることにした。
月のものという理由が嘘であることは、部屋を出た後に侍女に聞いて知ったが、無理強いする気にはなれなかった。
ただ、やる気があったとしても、すぐに辺境伯夫人の仕事を熟せるわけがない。教育係を母の右腕の侍女の1人と家政婦長に任せ、残りの侍女達と執事長には、教育中には熟せない仕事を引き続き頼むことにした。
12歳の妹クラーラと9歳の弟トーマスも、此度のことに危機感を持ったのか、できることは手伝うと言ってくれている。家政婦長は12歳のクラーラは、戦力になりそうだと歓迎していた。
9歳のやんちゃ坊主には、少し首を傾けた、にこやかな笑顔の老執事長が、それでは普段通りの勉強と鍛錬を済ませた上で、清潔にして、ご両親の見舞いと私への伝令をお願いしますね、と告げていた。彼には現在、恒例?の執務室への出入り禁止の刑が発動されているらしい。ちなみに、全身泥だらけで部屋に突入してはくらっている罰である。
初夜を終えてこそ、妻であり、その家の嫁と認められる。なのに、それを後回しにし、辺境伯家を支える為に働くと言う妻に、ジークスは好感を持った。好意までいかないのは、接する機会があまりにもないからだ。
初夜の晩に少し会話をしただけで、あとはなかなかタイミングが合わない。
魔物討伐から帰れば、もう疲れて寝ておられますと言われ、明日の夜にでも食事を一緒にと誘えば、やることがあって時間が取れないと断られた。
妻も大変なのだと、申し訳なく思い、せめてもと、領内で幸運のお守りとして大事にされている“赤玉”のブレスレットを贈った。
宝石など、この領地で身につける機会はあまりないだろうし、来年の社交シーズンにでも、王都の宝飾店に連れて行けば、好みのものを選べて嬉しいだろうと考えたからだ。
父が贈った“赤玉”を喜んで身につけている、母の姿が目に浮かぶ。母から自分と妹にもネックレスにしたものを贈られた。服の下で隠れているが2人ともいつも首から下げ、大事にしている。弟は、拳大の巨大なものを自分で探してきて、部屋に飾っているので、アクセサリーはいらないらしい。
妻のシルビナには、実家から連れてきた侍女がいない。独身時代から仕えてもらっている信用できる侍女達は既婚者で連れて来れず、他の姉妹を担当していた独身の侍女を連れてきてしまうと、実家に報告する予定のないことまで知らせてしまう可能性があるそうで、辺境伯家のことを考え、単身で嫁いできてくれたとか。
それを聞いて、感心した家政婦長が、ベテラン1人と若手の2人の侍女をシルビナにつけた。慣れない場所でのフォロー役と、自分の腹心に育てる侍女である。
結婚して2週間程経った頃、魔物の被害が重なり、国境付近にある拠点で部隊を待機させることになった。
叔父達には砦を回る任務に、叔母達には領内の治安を統括する任についてもらっている。
拠点に向かう部隊はジークスが率いていく。数週間は帰れぬだろう。
新婚の妻を屋敷に置き去りにすることに申し訳なさを感じるが、叔母達のように戦えぬシルビナを同伴させても危険な目に遭わすだけだ。足手纏いでもある。
それでも、少しでもジークスと共にいたいと願ってくれるなら……
無事に早く帰ってきてほしいと言ってくれるなら……
ルマルド侯爵家は、トレンダム辺境伯領とは、王都を挟んだ反対方向に領地を持つ。数年前から、婚約者がまだいない、評判の良い姉妹がいるとして、候補にあげていた家だった。多産の家系だと聞く。
辺境での嫁取りは、難しい。王都貴族とのやり取りを考えれば、家の格を落とすわけにはいかないので、平民や下位貴族ではダメだ。伯爵家よりは、侯爵家か公爵家の娘が良い。緊急時に当主の代わりに状況判断できる賢さと執務能力も必要だし、一族や領民に対する思い遣りがあり、出来れば多産な女性が好ましい。
由緒ある辺境伯といえど、辺境であることは否定できない。領都はそれなりに発展しているが、王都のそれと比べると華やかさにかける。辺境内や近隣の貴族との交流はあれど、毎週の豪華なパーティや華やかなお茶会などはないも同然だ。王都の流行りの情報も伝わるのが遅い。辺境伯家としては、いざというときのためにも、有力な貴族と縁を結んでおきたいが、王都で暮らすような貴族の子女は、辺境を嫌う。
ルマルド侯爵家の領地は、トレンダム辺境伯の領地程、王都から離れていないが、田舎といえば田舎な土地である。社交シーズンには王都に滞在しているが、侯爵家一家の住まいは領地の屋敷であり、王都にある屋敷から離れるのを嫌がり、パーティ三昧な家族がいるという噂も聞かない。程よく年頃の、評判の良い娘達がいる。
トレンダム辺境伯嫡男の婚約者候補は他にも数人いたが、まだギリギリ未成年であったり、他の家との婚約の話が持ち上がっていたりで、すぐに嫁いでもらえるのは、ルマルド侯爵家の次女シルビナだけとなった。どうやらルマルド侯爵家の他の姉妹は婚約が決まってしまったらしい。美しく賢いと評判だった長女以外の娘達の個別の情報はないが、妹達にも優秀な娘が多いと聞くので、シルビナだけでも残っていてくれたことに、トレンダム辺境伯は安堵した。
この時に、もう少しシルビナ個人のことも調べていればよかったが、元々候補者が多数いる条件の良い家だったことで、それを怠ってしまった。後の祭りである。
シルビナは、茶色の髪と目をした、平均程度の身長の、細身だが部分的にふくよかな女性だ。特別に不細工ではないが美女でもない。地味で目立たない、平凡なその顔だけ見れば、主張がなさそうで、大人しくみえる女性だが、気弱ではないらしい。両親に逆らわず、長女を立て、妹達を厳しく叱りつけることができる娘だと聞いた。領地にある女子学園での成績も悪くなかったらしい。
貴族の子女とて勉強だけしていれば良いわけではないので、家で家庭教師をつけて既に学園卒業レベルの学習を済ませている子女は、教師の出す課題に対する提出物をきちんと出せば卒業できる。シルビナは、サボらずに、すべての課題を提出し、優評価で卒業したと聞いた。秀評価の長女が有名だったが、妹も優秀と聞いていたので、評判通りだ。
とにかく、トレンダム辺境伯嫡男の結婚相手は決まった。
消去法ではあったが、それは相手も同じこと。他に条件が良い相手がいれば、仮病でも何でも使って、結婚を急ぐトレンダム辺境伯嫡男の候補から外されるようにしただろう。
20歳だという、ルマルド侯爵家の次女シルビナは、特に揉めることなく、トレンダム辺境伯嫡男のジークスに嫁いできた。ルマルド侯爵家との話し合いで、婚姻時には結婚式ができないことの承諾も得ている。あちらとしても、前辺境伯夫妻がある程度回復し、親族としての付き合いもできる様になってからの方が良いらしい。
22歳のジークスには年の離れた12歳の妹クラーラと9歳の弟トーマスがいる。一族としては、辺境伯を支えてくれる叔父夫妻達、父の弟カールとアーノルドの2人とその妻はいるが、弟妹はまだ幼く、2組の叔父夫妻は、戦士同士のカップルなので、辺境伯夫人の代理で仕事をこなせる人材ではない。今は、母の右腕だった侍女達と、執事長と家政婦長が手分けすればなんとかなってはいるが、各自の仕事もある中、母親が回復するまで続けるのは厳しい。
書類上の婚姻手続きを終え、ジークスの妻となったシルビナを、ジークスとその家族は歓迎した。のんびりしている時間はなかったが、この日だけは、簡単な祝いの席を儲け、弟妹と叔父夫妻を交え、夫婦としての初日を祝った。
残念ながら、療養中の両親は意識が回復したばかりだったので、参加はできず、挨拶は双方が落ち着いてきた後日に持ち越しすることにしたが、それなりに良い雰囲気で歓迎の宴を終えられたと、ジークスは思った。
弟妹はいるが、両親の状態を考えれば、子供は早く欲しい。
緊張しながらも初夜を迎えようとしたジークスに、シルビナは「生憎と、月のものが来てしまいました」と告げた。数日待てば良いのかと聞けば、まだもっと先だという。
辺境伯夫人としてこの領地になれ、仕事を覚えないといけない。今妊娠し、体調を崩すわけにはいかない。初夜で体調を崩す可能性もある。
だから、もう少しこちらの暮らしに慣れてからにしましょう。後継は欲しいでしょうけど、今産まなければ一族が絶えるわけではないのですから。
そう言われてしまえば、無理強いはできない。結婚したばかりなのに、即離婚はしたくないし、妊娠1ヶ月目ごろからの不調で動けなくなった侍女を見たことがあったので、慣れない場所で前任者である義母の助けもなく、辺境伯夫人として立ってくれる気があるのだから、有難いと思わねばと、受け入れることにした。
月のものという理由が嘘であることは、部屋を出た後に侍女に聞いて知ったが、無理強いする気にはなれなかった。
ただ、やる気があったとしても、すぐに辺境伯夫人の仕事を熟せるわけがない。教育係を母の右腕の侍女の1人と家政婦長に任せ、残りの侍女達と執事長には、教育中には熟せない仕事を引き続き頼むことにした。
12歳の妹クラーラと9歳の弟トーマスも、此度のことに危機感を持ったのか、できることは手伝うと言ってくれている。家政婦長は12歳のクラーラは、戦力になりそうだと歓迎していた。
9歳のやんちゃ坊主には、少し首を傾けた、にこやかな笑顔の老執事長が、それでは普段通りの勉強と鍛錬を済ませた上で、清潔にして、ご両親の見舞いと私への伝令をお願いしますね、と告げていた。彼には現在、恒例?の執務室への出入り禁止の刑が発動されているらしい。ちなみに、全身泥だらけで部屋に突入してはくらっている罰である。
初夜を終えてこそ、妻であり、その家の嫁と認められる。なのに、それを後回しにし、辺境伯家を支える為に働くと言う妻に、ジークスは好感を持った。好意までいかないのは、接する機会があまりにもないからだ。
初夜の晩に少し会話をしただけで、あとはなかなかタイミングが合わない。
魔物討伐から帰れば、もう疲れて寝ておられますと言われ、明日の夜にでも食事を一緒にと誘えば、やることがあって時間が取れないと断られた。
妻も大変なのだと、申し訳なく思い、せめてもと、領内で幸運のお守りとして大事にされている“赤玉”のブレスレットを贈った。
宝石など、この領地で身につける機会はあまりないだろうし、来年の社交シーズンにでも、王都の宝飾店に連れて行けば、好みのものを選べて嬉しいだろうと考えたからだ。
父が贈った“赤玉”を喜んで身につけている、母の姿が目に浮かぶ。母から自分と妹にもネックレスにしたものを贈られた。服の下で隠れているが2人ともいつも首から下げ、大事にしている。弟は、拳大の巨大なものを自分で探してきて、部屋に飾っているので、アクセサリーはいらないらしい。
妻のシルビナには、実家から連れてきた侍女がいない。独身時代から仕えてもらっている信用できる侍女達は既婚者で連れて来れず、他の姉妹を担当していた独身の侍女を連れてきてしまうと、実家に報告する予定のないことまで知らせてしまう可能性があるそうで、辺境伯家のことを考え、単身で嫁いできてくれたとか。
それを聞いて、感心した家政婦長が、ベテラン1人と若手の2人の侍女をシルビナにつけた。慣れない場所でのフォロー役と、自分の腹心に育てる侍女である。
結婚して2週間程経った頃、魔物の被害が重なり、国境付近にある拠点で部隊を待機させることになった。
叔父達には砦を回る任務に、叔母達には領内の治安を統括する任についてもらっている。
拠点に向かう部隊はジークスが率いていく。数週間は帰れぬだろう。
新婚の妻を屋敷に置き去りにすることに申し訳なさを感じるが、叔母達のように戦えぬシルビナを同伴させても危険な目に遭わすだけだ。足手纏いでもある。
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