トレンダム辺境伯の結婚 妻は俺の妻じゃないようです。

白雪なこ

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 妊娠に気づく前のシルビナは、念願の社交シーズンでの自慢ができたかというと。
 辺境伯領から運んだ豪華なドレスや宝石が消えていたので、トレンダム辺境伯夫人として相応しい装いができず、貴族の令嬢に会えなかった。

 王子様に相談して、馬車を売り払った。御者には口止め料を支払ってクビにした。
 お金ができてよかったねと、優しい王子様が、そのお金で3週間、このかわいい宿に滞在できるように、手配してくれた。

 毎日、お部屋で楽しくおしゃべりした。シルビナの話に感心して、褒めてくれるから、気分が良い。
 誉め殺し最高。
 幸せすぎて、シルビナの平常心と思考能力は何度も行方不明になった。


 何日もしてから、このかわいい部屋に友人を呼んでも良いのでは?と言われたので着替えがないと告げれば、ひらひらしたかわいいドレスをプレゼントしてくれた。シルビナの好みにドンピシャな胸元が大きく開いた、ピンクのドレスだった。

 嬉しくて、この姿を見せびらかしたくて、毎日毎日手紙を書いたけれど、招待した友人は誰も来なかった。

 寂しい。つまらない。
 王子様は、寂しくないようにと、毎日遊びにきてくれた。
 誉め殺し最高。
 幸せすぎて、シルビナの平常心と思考能力はまた何度も行方不明になった。
 王子様と、一緒に食べたり飲んだり眠ったりした。

 なんだか何もかもがどうでも良くなってきたのだけれど、明日で宿を出ないと行けないと言われ、困ってしまった。
 王子様は仕事があるので立たねばならないと言っていたけれど、その前に、格安の宿を紹介してくれた。
 ここなら社交シーズンを終えてからも、しばらく滞在できる。

 素敵な恋をありがとう。バカンス~~と歌いながら、王子様は去っていった。


 宿に招待しても友人は来ないことを学んだ。
 そういえば、家に友人が遊びにきたことなどなかったと今更ながら気がついた。

 それなら、シルビナが友人の家に行こう。
 明日はドレスアップして、伯爵令嬢の家に行くのだ。

 そう考えていたのに、急激に体調が悪くなり、出掛けられなくなった。
 吐き気がする。

 吐いてばかりでは身体が持たないので、食べても、何回かに一回は吐いてしまう。
 こんなにげっそりした顔では誰にも会えない。

 困っているうちに、社交シーズンが終わってから随分と日が経っていた。
 伯爵令嬢達に、勝ちたかったのに、それどころじゃなかった。

 体調が少し回復した頃、部屋から出て病院に行った。
 顔が戻るまで外に出れなかったから、我慢していたのだ。

 平民の病院は安くて助かったが、診断結果は聞きたくなかった。

 どうしたら良いのかわからない。


 困っていたら、遠くに大きな背中が見えた。

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