義兄が溺愛してきます

ゆう

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条件

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朝、食卓に着く。
咲さんは寝付けなかったようで顔色があまり良くない。
父さんが口を開く。

「昨日の夜、咲さんと話し合った。昨日も言ったが付き合うのはいいとして、1つ条件がある。2人が成人するまでお互い手を出さないこと。それから、成績を落とさないこと」

「はい」
「……」

条件……。
成人するまでだから、あと4年か。
俺は恋が生きているだけでいいと思っていたから、両思いになり付き合えて、もう充分なくらないなんだけど。
触れ合いたい欲は勿論ある。
でも、それ以上に恋が大切で……生きていてくれればそれだけで今もいいと思っている。
恋が不服そうに尋ねる。

「義父さん、手を繋ぐのもダメなの」

「ああ」

「……わかった」

一応納得したみたいだ。
恋は俺に触れたいと思ってくれている事実が嬉しくて、頬を綻ばせる。

この話は以上で後は日常会話をして終わった。
やっぱりギクシャクはしていたけれど、普段通りに接してくれようとしてくれている姿勢が嬉しかった。
いや、父さんは変わったかな。
俺のことをよく聞いてくる様になった。
父さんなりに今までの分距離を縮めようとしてくれているのを感じた。

恋と登校している最中。
隣を歩いていた恋がため息をついた。

「はあ」

「どうしたの」

「どうもこうもないよ!付き合ったのに触れ合えないんだよ……、普通にきつい。それとも翔は平気なの」

「俺は……恋に好かれて、付き合っているだけで充分嬉しいよ」

「俺も嬉しい……けど!なんて言うのかな。好きだったら触れ合いたいと思うじゃん。翔も今はそれで充分かもだけど、絶対なるから!」

そうなのかな。
けど、条件は守らないと両親に示しがつかないし、触れ合うのは我慢するつもりだけど。
幼い頃からずっと片想いしていたから、それに比べれば4年待つ方が全然いい。

「……俺はどちらかと言うと、恋の成績の方が心配かな」

にっこりと告げる。
恋愛では馬鹿な俺だけれど、勉学では学年1位だ。

「ぐぬぬ」

反論の出来ない恋を見る。
可愛いな、もう。

「一緒に沢山、勉強しようね?」

恋の成績が落ちないように、今まで以上に勉強をして貰おう。
会話をしている内に学校へ着く。
過干渉だった頃の俺だったら、教室まで送っていただろう。
だけど、もうしない。
恋は俺が居なくても、生きていける。
俺も恋が居なくても、生きていける様にならなければ。
恋がいない世界なんていらない、と今でも思っている。
しかし、自立しなければ。
もし、恋がいなくなったとして俺は覚えていたいし、恋の本を出版したいくらいだ。
恋がいた証をこの世界に残したいから。

「帰りは生徒会あるから遅くなる」

「おっけー」

とだけ交わしそれぞれの教室へ行く。

そう、俺は恋がもしいなくなったとしても生きたいと思い始めている。
恋のことをずっと覚えながら。
まぁ、まず手に入れた恋をみすみす逃す真似はしないけど。
万が一の話。

ホームルームの前に、噂話が好きそうな数人に赤坂さんのことを説明した。
1晩考えたんだけど、俺が振られたというのは別の反感を買いそうだと思い、やめることにした。
いつも本を読んでいて詳しそうな赤坂さんにおすすめの本を教えて貰い買うのに暫く付き合って貰っていた、という事にした。
別に、付き合っている、と明言していなかった訳だし、多少不審がられるだろうけれど、時間が経てば興味が薄れていくはず。 
もう、赤坂さんに必要以上近づかないようにすればいい。
赤坂さんには迷惑はかけてしまったけれど、ずっと感謝している。






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